表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

第20話 小さな活路

『ああああああああーッ!!!!!!』


僕は電車の壊した扉の部分から、外に向かって全速力で走った!!


そして外に出る瞬間…


前方へと思いっきり跳んだ!!


しかし…



ダンッ!!



僕は何故か、電車の中で着地した。


『何だコレッ!?』


外に出たはずなのに…

気が付くとまた電車の中に戻されている…


『ぅらあああああーッ!!!!!!』



ダンッ!!…



『…』



ガタンガタン!!



ガタンゴトン!!



虚しく電車の走る音だけが聞こえる…


何度やっても駄目だった…

全く外に出られる気配がない…

何だよこのシステム…馬鹿じゃないのッ!?


(アハハハ(笑))


顔のない女が笑った。


『笑ってる場合かよ…どうすんだコレッ!?』


(私は別に死んだって構わないし…つかコレ面白いわ(笑))


『面白くないぞッ!!!どうすんのコレッ!?』


(とりあえず降りられないなら…電車を止めた方がよくない?…このままじゃ互いに死ぬのを待つだけだしね)


顔のない女は言った。


ホンマや…全然気が付かなかった…


『ちょっと運転席行ってくる!!』


僕は顔のない女にそう言い…

運転席のある、最前車両へと向かった。


最前車両に向かう途中、車内の隅や出入口付近に、空き缶やビール瓶が置いてあるのに気が付いた。


汚ない電車だな…誰か酒でも飲んでたのか?…つかこの世界でも…酒とか売ってんのかな?…コンビニでもあるんだろうか…?


そんな事を思いながら、僕は最前車両の扉を開けた。


最前車両に着いた僕は、早速運転室のドアノブに手を掛けた…


すると…



ガチャ…



扉は難なく開いた。


お~すげ~…

初めて電車の運転するとこに入んな…


僕はちょっと感動した。


そして…


運転室に入った僕は、辺りを見回した。


運転室には沢山のボタンやらスイッチがあり、その隣にはデカいレバーのようなモノがある。正直どれをどういじれば電車が止まるのか、僕には全く分からなかった。


『マジ分かんねェ…これか?』


とりあえず、僕は目の前にあるボタンを押してみた。



カチッ…



『…』


何の反応もない…


『じゃあこれか?』



カチッ…



『…』


何の反応もない…


どれを押していいのか全然分からん…

もうイッソのこと全部押してやろうか…

僕は思った…


『そぃそぃそぃそい!!』


カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチッ…


僕はまるでパソコンのキーボードを押すかのように、運転室の至るところにあるボタンを押しまくった。


しかし…


『…』


何の反応もない…


嘘だろッ!?今のカチカチは全て無駄だったのか!?

全然止まる気配ねェ…このままじゃ死ぬ…

僕は焦った…


(多分アレだよ)


気が付くと、僕の後ろに顔のない女が立っていた。


(電車って別にボタン押して止まるわけじゃないッしょ…そのボタンの隣にあるレバーで操作してンじゃないの?)


顔のない女が言った。


『えっ?そーなのか…』


僕は早速、そのレバーを引いてみた。



ギィー…



『…』


何の反応もない…


今度は逆に、レバーを押してみた。



ギィー…



『…』


何の反応もない…


『止まんねェじゃねぇかッ!!』


僕はもうパニックだった。


(知らないよッ!この電車が悪いんだ!!)


顔のない女はそう言い返した。


たしかに…悪いのはこの電車だ…降りたいのに降りられない…止めたいのに止まらない…もうイライラすんな…


他に…何か方法はないだろうか?


この電車のどこから降りても…おそらくまた電車の中に引き戻されるだけだ…


だとすると…やはりこの電車止めるしかない…止めたら止めたでその後どうすんだって感じだが…まぁそれはその時考えよう…


とにかく…奈落と言われる場所に行くのだけは避けたい…そこに行ったら…もう戻って来れないみたいだしな…


運転席の操縦がきかないとすると…この電車を止める方法は1つ…


脱線だ…


かなり危険だが…

それ以外に思い付かなかった…


(それ無理じゃね?そんな事したら死ぬって)


『でも…それ以外に思い付かない…君は何か考えがあンのかよ?』


(う~ん…ないな)


『じゃあやっぱ脱線だ…この電車を脱線させるしかない』


(でもどうやンの?)


顔のない女が僕に聞いた。


『前にニュースで見たことがあるんだ…線路のレールの上に直接…石コロを1つ置くだけでも…電車は十分脱線する可能性がある…らしい』


(そんなヤワなもんなの?)


『僕もよく分かんないけど…たしかニュースでは…カラスがレールの上に石コロを置いて…そんで何か事故に繋がった的なアレだった気がする…』


(わぁスゲー曖昧)


『まぁ僕は毎日ニュースを見てるようで見てないからな』


(結構いい加減なんだね…)


『そうだな…とにかくやってみよう…さっき僕は車内の隅に空き缶やビール瓶が置いてあるのを見た…そいつを石コロの変わりにしよう』


(なんか全く上手くいく気がしないんだけど…)


『僕もだ…正直失敗する気がしてならない…でも何もやらないよりかはマシだ…とりあえず…君は車内にある空き缶やビール瓶を集めて…ここに持って来てくれ…その間に僕は運転室の窓を割る』


(…分かった)


顔のない女は、素直にうなずいてくれた。


そして…


顔のない女が運転室から出て行こうとした時、僕はふと、この女にまだ名前を聞いてない事を思い出した。


すると…


(深幸だよ)


と突然顔のない女が、僕の頭の中で言った。


『ミユキ…それが君の名前か…良い名前だな…それっぽい』


と僕は言ったが…


ミユキは向こうの車両へと、そそクサと行ってしまった…


なかなか素早いな…まぁそれはいい…


僕は振り返り、電車の前面の窓ガラスを見た。


窓には血のようなモノで《おいでおいで(笑)》と書かれているのが、逆さ文字になって見える。


この電車が奈落に向かっているのだとすると…


これは《地獄においで》という意味で書かれているのか…?


う~ん…そういや…


僕はある事を思い出した。



三途の川…


僕の聞いた都市伝説では…三途の川の向こう岸に…自分の慣れ親しい人達が並んで立っていて…その人達がこっちに《おいでおいで》と手招きをするらしい…

それにしたがって川を渡り…向こう岸に行ってしまうと…もう戻っては来れない…死ぬんだ…


この電車の前面に書かれている《おいでおいで(笑)》は、そういう意味なんじゃないか?


つまり…僕は今三途の川を渡っている最中なんだ…


まぁ…


都市伝説通りの川じゃなく…モロ電車だけど…


………


まぁどちらにしろ…僕らこの電車から脱出しなくてはならないんだ…


『よし…』



ダァンッ!!!!



僕は思いっきり運転室の窓を蹴った!!


だが…


『あれ…?』


微かにひびが入っただけで…窓ガラスは割れなかった…


まぁそりゃそーか…


電車の前面ガラスが…そんな簡単に割れるはずがない…

きっとすごい分厚い防弾ガラスでできてんだ…


こんなん割れんのかよ…?


………


『ああああああーッ!!!!割れろ割れろ割れろッ!!!』



ダァンッ!!!ダァンッ!!!ダァンッ!!!



僕は何度も運転室の窓を蹴った!!



しかし…



ひびの数が増えただけで…全く割れる気配がない…


まずいな…


爆弾でもあれば何とかなりそうだが…ンなもんねーしな…


(持ってきたぞ!)


『えっ!?』


振り返ると、ミユキが空き缶とビール瓶を抱えて持っていた。


一瞬爆弾を持って来てくれたのかと…期待してしまった…


『悪い…そこ置いといてくれ…』


僕がそう言うと、ミユキは空き缶とビール瓶を床に置いた。


う~ん…


『キミ爆弾とか持ってないか?』


(持ってない!)


ミユキは即答だった。


まぁそうだよな…持ってるはずがない…


(割れないんかい…)


『うん…これじゃあ線路に空き缶を投げることすら出来ないな…』


(ハハ…やっぱ無理なんだって(笑))


『…』


あ~てか…一応試しておくか…


僕はミユキが持ってきてくれた空き缶を手に取り、車内の窓を開け、そこから空き缶を外へと投げてみた。


カランからん!!…


空き缶は地面を転がり、僕の視界からあっという間に消えていった。


やはり空き缶やビール瓶とかなら、電車の外へ出ても、中に引き戻される事はないみたいだ。


この空き缶やビール瓶を、いい感じに線路のレールの上に乗っけられればいいんだけど…


窓に向かって空き缶を投げても、線路の先に空き缶を乗っけんのは無理だろう…


じゃあどうすりゃいい…

車内で今走っている線路の先が見える位置…運転室以外にどッかあるか?


………


『あッ!!』


僕は気が付いた。


カーブだカーブ…電車が急カーブを曲がる時、後ろの車両の窓から斜め前方を覗けば、線路の先を見ることができるんじゃないだろうか!?


線路の先が見えた時、車内から空き缶やビール瓶を線路に向かって投げまくる!!


そんでもッて…レールの上に空き缶やビール瓶が上手いこと乗っかッて…


電車は脱線ッ!!みたいな…


(無理無理…そんな上手いこといく訳ないじゃん(笑))


ミユキは、僕を馬鹿にしたように笑った。


『馬鹿な考えだッてのは分かってるけど…やるだけやってみようぜ』


僕はミユキに言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ