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第10話 目的地

もしこの中に黒幕がいるとしたら…


やはり一番怪しいのはマサヤさんか…


マサヤさんには妙な冷静さがある…いつから ここにいるのかは知らないが…この世界に慣れすぎている感じだ…それは犯人だから…か?


いや…でもマサヤさんは僕らが《当たり》じゃないかと一度疑った…犯人なら疑う必要はない。


だが…それは自分が犯人だと疑われない為の演技だという可能性だって十分にある…


だけど そうひねくれた考えをすると きりがないな…


…もしマサヤさんが犯人だとしたら目的は何だ?


………


正直さっき会ったばかりの人の考えている事なんて…僕には分からない…


…僕らを殺す事が目的だとしたら…多分とっくに殺されているはずだろう…


それともマサヤさんは 僕らが困惑するこの状況を楽しんでいるのか?…だとしたら趣味の悪い愉快犯だな…そんな変態じゃないだろ…?…


サオリさんやチヒロちゃんは…マサヤさんの事をとても信頼している感じがする。


僕は まだマサヤさんの事をほとんど知らないから…そう疑ってしまうだけなのかもしれない。


やはりマサヤさんは黒幕ではないのだろうか?…



…僕が思う一番怖いパターンは…僕以外が全員グルだというパターンだ…さすがにそれはないだろうが…もしそうだとしたら…僕はアホみたいに犯人について行ってることになるな…


…まぁ少なくともツバサは犯人ではないだろう…あの行動や言動が全て演技だとは僕には思えない…アレが演技だとしたら かなりの演技派だ…俳優になれる…ドラマとかにも出ちゃうんじゃないか…?…


ならサオリさん達はどうだろう?…サオリさんも正直犯人だとは思えない…トンネル中であの怪力男に僕らが襲われた時…サオリさんの体は恐怖で震えていた…それはチヒロちゃんも同じだ。


黒幕だとしたら そんなに怯える事はないだろう…それが演技だとしたら もともこもないが…


一つ気掛かりなのは…サオリさんの能力がまだ分かっていない事だ…マサヤさんの能力も分かっていない…分からないからこそ 余計に怪しく感じてしまう…


…もし僕が黒幕と同じ能力を使えたら…何をするだろう…?


誰かを自分の夢の中に連れて来る事ができて…その連れてきた人を超能力者にしたてあげるのか…


………


超能力者にしたてあげたところでどうするんだ?…意味分からん…目的が見えないわ…


やっぱり犯人なんていない…?…そもそも これは夢じゃない…?…現実…?


頭がコンガラがってきた…


もう少し何か真相に近づくまでは…深く考えるのはやめよう…


ここで僕が考えて真相を導きだしたとしても…それは全て僕の推測に過ぎない…何の証拠もないんだ…余計に混乱するだけかもしれないな…


………


気が付くと みんなが僕の随分先を歩いていた…


あれ…?…置いてかれた…?…


…怪我人を置いて行くとは…アイツらの血は何色だ?…僕は心の中で嘆いた。


すると ツバサが鼻をほじりながら こちらを振り返った…僕が声をかけようとしたら…半笑いで また前を向いた…


あの野郎…


チヒロちゃんは何度もこちらを振り返り、クスクスと笑っているようだった。


…何だ…?…


とりあえず片足でピョンピョン跳びはねながら みんなを追いかけた。


跳びはねている最中…何度か すごい高さまで跳び上がりそうになった…手加減して跳ばなくては…普通の人間が跳ぶ高さで 僕は跳ぶことができないようだ…


なんかショックだった…自分が自分ではなくなってしまったような感覚…変な感じだ…


この体は本当に僕なのか?…今 鏡で顔を見たら 全然知らない人になってたりして…そんな訳の分からない事を ふと頭の中で思った…


まぁ自分の声を聞くかぎり、いつもの僕の声だと思う。やはりこれは僕の体なのだろう。


そんな事を考えているうちに、やっとみんなに追い付いた…


が…その瞬間…


みんながこちらを振り返り、僕を見て笑った。


………


どうやら…みんなは わざと僕を置いて行ったらしい…


あまりにも長いこと 僕が上の空 状態だった為に…みんな面白がって僕を置いて行ったみたいだ。


笑いのネタにされた…て事か…


まぁ…あんなところで マジになって考え事をしていた僕が悪い…たしかに おかしいのは僕の方だな…


変な奴だと思われただろうか…?


………


まぁ…みんなが笑ってくれたから 良しとしよう。


僕は前向きに考えた。


『お前足折れてるんだってな…?』


不意にマサヤさんが僕に言った。


何でマサヤさんが知ってんだよ…ツバサが言ったのか?


『はい…一応…』


僕はぎこちない返事をした。


すると マサヤさんが僕の方に背を向けてしゃがみ込んだ…


おぶってくれるということだろうか…?


『乗れ…』


と マサヤさんが言った。


ああ…やっぱり おぶってくれる感じだ…


『大丈夫です…片足でも歩けますから…』


と 僕は遠慮した…が…


『無理しない方がいいよ…』


と サオリさんが僕に おぶってもらうよう言い…


…なんだか断ることのできない雰囲気になった…結局 僕はマサヤさんにおぶってもらう事にした…


僕はマサヤさんの背中に乗り、マサヤさんは僕をヒョイと簡単に持ち上げ、そのまま歩き出した。


この人の体…雑誌の記者にしては結構 筋肉質だな…何かスポーツでもやっているんだろうか…?


マサヤさんなら超能力など使わなくても 十分強そうだ…この男は恐ろしい男だ…僕は勝手にそう思った…


『さっき長いことボーッとしてたみたいだけど、何か考え事してたの?』


サオリさんが僕に聞いた。


『そうですね…』


と 僕は言った。


『何を考えてた?』


マサヤさんが食い付いてきた。


『別にたいした事じゃないですよ…』


と 僕は言ったが…


『聞かせろ…』


マサヤさんが振り返り僕の顔をじーっと見て言った。


何なんだよ この人…なに食い付いてきてんだよ…


別に僕が何を考えていようが どうでもいいじゃないか…


マサヤさんは僕の事をまだ見ている…


ぅう…何か言わなくちゃいけない雰囲気だ…でも正直に この中に黒幕がいるかも…と考えていたとは言いづらいし…みんなの混乱を招くだけだろう…なら仕方がない…


『いや…昨日犬にエサあげたかな?…て思って…』


僕は しょうもない嘘をついてしまった…そもそも僕 犬なんて飼ってないし…


でも黒幕の事について話すわけにもいかないだろ…


『飼っている犬の犬種は何だ?…』


マサヤさんは真顔で僕に聞いた。


なかなか食い付いてくるな この人…どうでもいいだろ…犬好きなのかよ?…猫って言えばよかったな…


『チワワです…』


とりあえず 僕は知っている犬の種類を言った。


『えっ!?チワワ飼ってるんですか?』


チヒロちゃんも食い付いてきた…


飼ってねぇよ…嘘だよ…


と僕は正直に言いたかった…


が…言えなかった…


『…まぁ…ね…』


僕はまた嘘をついた…


『その犬は今何歳なの?』


サオリさんが聞いてきた…


みんな食い付いてくるな…本当に興味あんのかよ?…ツバサだけは興味なさげだが…チワワとか言わなきゃよかったよ…


『3才…ですかね…』


僕は適当に答えた。


『やっぱカワイイッ?』


サオリさんがさらに僕に聞いてくる。


めんどくせぇな…嘘なんかつかなきゃよかった…


『まぁ…カワイイですよ…』


と 僕は返事を返した。


でも こんなに食い付いてきてくれるのは…親交を深めようとしてくれている証拠だ…仲間として認められた…僕はそう良いように考えることにした…


『つか その犬の名前は?』


いきなりツバサが話しに入ってきた…


…名前…?……とっさに良い名前が思い付かない…


………


『そういえば今僕らってどこに向かってるんですか?』


僕は思いっきり話しをそらした…


『ほ~』


と ツバサが僕を見て小さくうなずいた…気がする…


『もう着くぞ…見ろ…』


マサヤさんは左斜めの方向を見て言った。


そちらの方を見てみると…そこには林に囲まれた 薄汚れた四角い大きな建物がいくつも並んで建っている…


それは住宅の中で普通に目にするものだった…



…アレは…団地…?

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