第1話 走れ!!
登場人物
風吾 (フーゴ) 21才
この物語の主人公。神奈川在住の大学3年生。決して馬鹿ではないが、頭も決して良いとは言えない微妙なIQの持ち主。そろそろ就活をはじめなきゃいけないことに絶望している。体格は中肉中背で、身長は180cmあり、高校時代は陸上の選手だった。
昨日見た夢の事だ……いや…正確には夢ではなかったのかもしれない。
僕は道路の真ん中あたりで、1人ぽつんと突っ立っていた。
夜の道路にはチラホラと車が走っていたが、僕の姿は見えていないようで、体スレスレのところを走り抜けてくる。
だが不思議と怖くはなかった、これが夢なんだということに、頭の片隅で薄々気付いていたからだ。
僕は平然と道路の真ん中を歩いて行った…ただひたすらに歩き続けた。
ふと遠くの方に目をやると、何か白い物体がスーッと道路を横切って行くのが見えた。
それは人のように見えたが、僕は気にすることなく歩き続ける。
しばらくすると、十字路の交差点に出た。交差点の真ん中に誰かがいる。
目を凝らして見ると、それは白い服を着た女の人のようだった。
何かぶつぶつとしゃべっている…だが僕にはそれを聞き取ることができなかった。
次の瞬間!!
その女はすごいスピードで僕目掛けて走ってきた。
その速さは尋常じゃない、車よりも速く、どんどん僕へと迫ってくる。とにかくアレは人が出せるスピードじゃない。
僕は必死になって逃げた、これが夢だということも忘れて…
僕は怖かった、泣きそうになった、あの女に捕まったら僕は終わりだ、そう思ったからだ。
ひたすらに走った、だがあんなに速い女に走って逃げ切れるはずがない。僕は思い切って走りながら後ろを振り返った。
するとこともあろうに、女は僕の随分後ろを走って追いかけてくる…どういう事だろう?…すぐにその理由は分かった。
僕はその女よりも速いスピードで走っている…時速80キロぐらいだろうか?…なぜこんなに速く走れているのかは分からない。
とにかくこんだけ速く走れれば、あの女から逃げ切れる、そう思い顔を前に向けると、目の前に車がこっち向かって突っ込んでくる。
引かれるッ!!
そう思った僕はとっさになって上へと跳び上がった。
すると足から地面が面白いほど離れていく…
『ぅえぇえぇーッ!?』
僕は10メートル近い高さまで跳んでいた。
あり得ないほどのジャンプ力だ…自分でも驚いた…なぜあんなに速く走れたり、こんなに高く跳ぶことができるのだろう?僕は人間じゃなくなってしまったのか!?
そんなことを考えているうちに、僕は何事もなかったかのように地面に着地した。
今はそんなこと考えてる場合じゃない、あの女から逃げ切ることが先決だ。
僕はすごい速さで走った、走り続けた。いつの間にか恐怖心などなくなっていた。
何も怖いものなどない
僕に追いつける奴なんていやしない
僕は風だ!!
そう頭の中で呪文のように何度も呟いた。
そのおかげで自分が追われている事など、ほとんど忘れていた。
ただひたすらに走るのみ…それだけだ