一幕
ユーリット・ファベル(17)
・身長157cm
・体重46(鎧抜きで)
・容姿
白髪に紫色の瞳で、少し猫っぽい
・血の祝福
《術士の系譜》と《騎士の家門》
・師の相伝
いろいろ
・資格称号
魔法騎士
・二つ名
《黒剣のユーリット》
備考
小さな頃から祖父に鍛え上げられたせいか超人離れした体力と身体能力を持つ。
素直で真面目な性格なので、ギルドのメンツから色々な技能を教えて貰い微最強。
物静かで争い事を嫌うが、容赦はしない。
ユーリットは魔法騎士と呼ばれる称号資格がある。
魔法騎士とはそのまんま魔法が使える騎士のことで、攻撃にも防御にも特化した称号資格であるが、なりたいと思ってなれるものではない。
魔法騎士になるためには二つの血の祝福が必要になる。血の祝福とは、神々から祝福された人間の家系で、産まれた時から資格を持つことを血の祝福と言う。
ユーリットの母のエリーゼは魔術師だったので《術士の系譜》と言う血の祝福がある。つまり、魔術師の血筋なため、ユーリットも魔術が使える。ユーリットの父、ユリアスも《騎士の家門》という武術が特化した祝福を持つ。
つまり両親の祝福を両方受け継いだので、ユーリットは魔法と剣術を得意とする騎士の称号を得ることが出来たのだ。
血の祝福はこの世界の人間が誰でも持つが、《騎士の家門》や《王権の王冠》などの祝福は数はあまり多くはない。
血の祝福とは逆に、師から弟子への技術の継承をすることで、資格を得られる事ができる。これを師の相伝と言い、こちらは血の祝福とは違って数多く存在する。
ファベル家は代々《騎士の家門》の血統で、歴戦の勇士が多くユーリットの祖父エドワードは将軍職についた程の傑物だった。
父は軍職にあるものの完全な裏方で、軍部の補給物質の運搬を指揮している。
兄達もみな騎士団に就職したが、まだまだ新人なので下っぱ騎士といったところだ。
多分、純粋な武術の腕ならユーリットの方がはるかに強いのだが、五年間家に帰っていないユーリットはそれを知らない。
ママレカ公国の南西の港町エレナダを出発して三日後、ユーリットは故郷のバーデンファベルに到着した。
屋敷はバーデンファベルの街の北側にあるため、街の外壁の南門から入らなければならない。
ユーリットは南門を通過すると、フードで目立つ頭部を隠し、慣れ親しんだ中央通りを馬の手綱を引きながら、ゆっくりと歩く。
五年も経つと街の様子もだいぶかわり、以前より賑やかな活気を取り戻したバーデンファベルの街を見ながら、ユーリットは微かに口元を緩めた。
『ユーリット、ここがお前の故郷か?』
「…うん。ヴァルは初めてだっけ」
『お前と出会った魔謀の森は反対方向だかんな。お前の仕事は殆ど南と西側が多かったし…こっちはあんま来てねぇな』
黒剣の相棒に「そう」と返すと、ユーリットは街の北の高台にある屋敷に視線を向ける
バーデンファベル北舘。ファベル家に代々受け継がれてきた歴史あるその屋敷は、街を見下ろす様に建てられていた。
『…ボロいな』
「うん、ボロいね」
正直な感想を言う、相棒にユーリットは苦笑した。
数々の依頼をこなし、父がこさえた借金を全て返しきった彼女からすれば、ボロい舘を見ると辛い返済をした五年間の出来事を思い出すのだろうか、ユーリットの声は微かに震え、瞳は潤んでいる。
ただひとつ守りきったボロい舘が、やけに小さく見えてユーリットは、涙をそっと拭った。
「ユーリットぉおぉ!」
扉を開くと、涙を垂れ流し、こちらに突進してきた父親を避けると、出迎えた懐かしい面々に挨拶をする。
「おかえりなさい。ユーリ」
「ただいま帰りました、母様」
「おかえりユーリ。」
「久しぶりだな」
「お久しぶりです、ロベルト兄上とルイス兄上」
ユーリットの顔にそっくりな母と、背が高くなった長兄のロベルトと、次兄のルイスにきちんと挨拶をする。
「ただいま父上。」
「ゆ、ユーリット…。」
ユーリットは、一応父に挨拶を言うと、フードがついた外套を脱ぐ。すると腰に帯びた漆黒の剣の姿が表れ、家族の視線はその剣へと向けられる。
「これが、噂の黒剣か。成る程確かに真っ黒だな。」
『…ユーリット、誰だこいつは』
「…っ!?」
「しゃ、喋った…?」
いきなり剣から若い男の声が聞こえ、二人の兄はギョッとして、ユーリットの腰の剣を仰視する。
母のエリーゼは魔術師なためかその剣の正体が分かったようで、立派に独り立ちした娘に寂しげな笑顔を向けると、そっと抱き寄せた。
「ユーリット、貴女…魔剣の主になったのね?」
「…はい」
「「「魔剣!?」」」
復活した父親と二人の兄がハモる中、当の本人はゲラゲラと笑い声をあげている。
『やっべーマジでハモったし、流石親子!間抜け面もそっくり!!』
「…喋れると言うことは名のある魔剣とお見受け致します。私はユーリットの母、エリーゼと申します。よろしければお名前を伺っても?」
『俺の主の母なら礼儀は無用だ。俺はヴァルフリート。転換のヴァルフリートだ。宜しくなおふくろさん』
「ユーリット…お前、《トルギストフの聖魔十剣》だと知ってて契約したのか?」
「ううん…森で拾ったら契約してくれって言われたから契約した。」
トルギストフの聖魔十剣とは、鍛治の神と呼ばれた鍛治師トルギストフ・ハーブェイが鍛えた十本の剣で、各々意思をもち、主を自ら選ぶという。
十本のうち五本は魔剣、もう半分は聖剣と呼ばれている。
聖剣と魔剣…どう違うかと言うと、剣に宿っている魂が違うのだ。聖剣は聖霊の魂がやどり、魔剣には太古の魔族の魂が宿っていると言う。
一本ではあまりにも強力すぎるため、トルギストフは魔剣と聖剣を夫婦剣として互いに封じあえるように二本一対に造ったと言われているが、今では殆どはちりじりになり、何処にあるかも不明なためそれが真実かどうかは解らない。
まさか身内がその十本の中の一本の主になっているとは、露知らず、エリーゼ以外の三人は顔色を蒼白にさせていた。
「あれはあれか?…親父の呪いか何かか?私の可愛いいユーリットが魔剣の主とか、マジ泣きそう。私がちゃんとしてればユーリットは今頃立派なレディに…」
「いやいや父上、さすがに剣術馬鹿なお祖父様でも予想外だったと思うよ。てか、ユーリットは立派なレディだからね」
「…ルイス。父上の妄言に付き合うな。魔剣殿、私はロベルト・ファベル。ユーリットの一番上の兄です。以後お見知りおきを。」
「あ、俺は次兄のルイスです。よろしくね」
『おう、よろしく』
二人の挨拶に朗らかに返す陽気な魔剣に、二人は笑みを溢す。
控え目で大人しい性格の妹にはある意味ぴったりな剣かもしれない。魔剣なのにどこか人間臭くて、明るい性格は実に親しみやすかった。
「ユーリット、今日は疲れただろう。呼び戻した理由は明日説明するから、今日は自分の部屋で休むといい。魔剣殿も手狭な屋敷ですがごゆるりとしてください」
「はい。」
『ぶっちゃけユーリットの腰にぶら下がってただけだから…疲れては居ないんだが…ありがたく休ませて貰うぜ』
現実に帰ってきた父親にようやくまともな返事を返すと、ユーリットは一礼すると、自室へと向かった。部屋は綺麗に掃除されており、五年間と変わらぬ模様にユーリットは安堵した。
父のユリアスは乙女趣味で、ユーリットにアマアマなレースやピンクのものを着せたがる。毎回ユーリットが嫌がるので諦めていたが、五年間部屋は無事だった様だ。模様替えされていたら、迷わずエレナダに帰っていただろう。
ユーリットは甲冑を脱ぎ、騎士服のまま部屋の長椅子に横たわると瞼を閉じる。
「ヴァル、夕食になったら…起こして。」
『へいへい。』
「……絶対だよ?」
『へいへい』
いまいちやる気のかけた返事にユーリットは気にも止めずゆっくりと目を閉じた。
父親の借金はおよそ日本円で3000万ぐらいです。
ですがギルドの仕事で高額なものを六回か七回うければ返せる額です。
ヒロインは11歳からギルドで働いてますので、小さな仕事から大きな仕事まで満遍なく五年間受けてたら借金は余裕で返せるんです。
この世界では多分冒険者が一番手っ取り早く稼げる仕事です