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九幕

 

連続投稿失礼します。ウェディングです。


多分誤字脱字だらけなので後日なおします

 

麗らかな良きその日、その日のベルーシ大聖堂は華やかな空気を纏っていた。

やがてこの大聖堂では領主の息子が花嫁を迎える尊き儀式が行われ、大聖堂の鐘と共に参列者達の祝の声が響き渡るのだろう。


「お前、どっちに賭けた?」


「ゴリラか、猪かだろ?もちろん猪に決まってんだろ。」


「俺はゴリラ。」


「いやあ、どんなたくましい嫁御が来るのか楽しみだなぁ。俺、200賭けてんだよ」


いささか神聖な大聖堂には似つかわしくない会話が、新郎側と新婦側の後方で座るアルファン達の部下達から、囁かれ。それぞれ賭け符を片手に、花嫁の登場に心を躍らせている。


「…しかし、竜をたやすく殺す令嬢が嫁とは。アルファン殿はつくづく不憫ですな。これでは心休まらぬだろう」


「然り、あのエマニス夫人の誘惑を退けるほどの生真面目な方なのに。」



と、同情を寄せる同僚の騎士や貴族達。しかし、その手にはしっかり賭け符を手に握りしめて、にやにやした表情で互いに目配せして、新婦側の新婦の家族席へと視線を向けている。


その席では号泣している花嫁の父と、其れを宥める子息の姿が合った。父の伯爵は凡庸で特別美形ではない。、花嫁の兄であろう息子も父似だ。生憎、母親の姿がないせいか容姿がどちら似なのか、量れないのが痛いが、余計にこの賭けに面白みが増し、皆、期待感するように今か今かと新郎新婦の登場を待ちかまえていた。


「…殿下。ここは家族席です。貴賓席はあちらですぞ?」


「堅いこと言うなよローランド。僕はアルファン共にお前の妻の乳を吸った仲だぞ?兄弟も同じなのに

寂しいことを言うな。」


「…言い方を変えてください。破廉恥です」



隣に座るエルンストに、ローランドの光り輝く頭には青筋がくっきりと浮かび上がっていた。

ローランド・ヴィ・ギャレット。別名・鋼拳のローランド。現エルンスト王国軍務大臣でり バルジⅥ世の親友。そして、悩める子育て父仲間であった。


バルジⅥ世は軽すぎて何を考えいるかわからない奇人変人の息子に悩み、ローランドは若いくせに頭が堅すぎて、未亡人に押し倒されただけで気絶するほど純情すぎる息子に悩んでいた。


「楽しみだなぁ。どんなこが来るんだろうね。」


「・・・ご存じでしょう?賭の胴元なのですから、当然自分に不利益な事をあなたがするはずない。事前に嫁の情報をあなたなら握っておられるはずだ。」


「まぁね。情報操作は結構たいへんだったけど。」


「なぜ、そのやる気を政務で見せてくださらなんだ。」


「はは、痛いところをつくね。」


痛いと言いつつ、飄々とするエルンストにローランドは眉を寄せて、手元に目線を向けた。

それは、どこか寂しげで諦めたような父の表情をしていた。


「陛下も殿下も酷なことをなさる。妻なくした私において、息子はかけがえのないただ1人の家族だと言うのに、このような形で、お飾りの嫁を息子に嫁がせるとは…。」


「何を言っているんだい?決めたのはあくまでもお前と親父殿だよ。」


猫の目のようにクスクスと笑うエルンストに、ローランドはエルンストを一瞥するとステンドガラスを見上げた。荘厳な聖剣を携えた月桂樹の冠を頭に載せる戦神の姿は太陽光を浴びて色鮮やかに輝いており、幻想的だった。丁度、ローランドの頭に赤いガラスの部分の光が当たっているせいか、ローランドの頭部は赤らんで見えた。


「…一年前。ママレカとの婚儀が議題に上がったとき、あなたはママレカの大使、エンリッヒ卿と鷹狩りに出かけられましたな。」


「ああ、たまたまだよ。彼は鷹狩りの名手でね。」


「その次の月には冒険者ギルドを視察されてました。」


「それは、公務だよ。」


「そして、その翌月に国王陛下にママレカ公国令嬢の査定調査書があなたの子飼いの文官から提出されました。これはどういう事でしょうか?」


「ふふ、それはその文官が親父殿より、アリエル姫の女官候補を調べろと命令されていたからだろ?」



「ええ、確かに陛下はその文官に命じていますが…。わずか三ヶ月弱で調べ上げられるほどママレカ公国の貴族の数は少なくないのですが?」


「それは、文官が優秀だったからだろう。さすが僕の側近だよね。仕事が速い。」



「・・・そういう事にしておきます。それと、殿下」


「まだ、なにかあんの?」


「儲かられたのなら、我がギャレット家に半分の取り分があると存じます。もし、渡さなければうちの嫁をおもしろ半分に賭け事の対象にして笑いものにしたと、世間に公表しますので悪しからず。」


「…僕はお前のそう言うところが嫌いだ。」


「奇遇ですな。私もです。」



父と乳兄弟が殺伐としたやりとりをしている頃、花婿は金刺繍が施された白い礼服を身に纏い。深呼吸をしていた。


「アルファン。お時間です。お迎えあがりました」


「はい。マザリウス妃殿下、本日はよろしくお願います。」


「こちらこそ。」


アルファンを呼びに来た中年の婦人はにこやかに微笑むと、アルファンの前を歩き始める。


式場にいくさいに、異性の仲人が先導し大聖堂へと入る。新郎は新婦より早く祭壇で、跪き神事の洗礼を受ける。その後に新婦と異性の仲人のが入場する。この場合、ユーリットは仲人夫婦の夫のほうつまり、バルジⅥ世の王弟の大公にエスコートされて式場に入るのだ。


アルファンが式場に入場すると、アルファンのキリリとした姿にため息を零す者や、涙をすするご令嬢の姿もある。部下達は妙にそわそわしており、しきりに後ろの扉にめを向けていた。

アルファンは祭壇につくと膝を折り、すでに準備を整えていた司祭に頭を垂れる。


「我らが神アガウスよ彼を清め、彼に強き心の祝福があらんことを。」


司祭は杯に入った白ワインをアルファンの頭に水滴をはじくようにかけると、杯を助祭の修道士に預け、チリーンと鈴を成らす。鈴の音が三回響くと、大聖堂の表の扉が開き、初老の男性と共に花嫁が入場した。


「え…。」


「は?」


花嫁の姿をみた参列者達は皆目を丸くさせて、大公に手を引かれて歩む花嫁の姿に呆然と口を開ける。

ざわつく会場にアルファンは、振り向きたいのをこらえて、花嫁を待つ。涼やかな鈴蘭の香りと柔らかな絹のすれる音が聞こえ、隣に花嫁の気配を感じ、アルファンはドクリと心臓を波立たせた。


花嫁にも先ほどアルファンにしたように同じ祝福をすると、二人は立ち上がり向き合い、ようやく対面した。


「それでは誓いをここに、新郎、アルファン・ヴィ・ギャレットは目前の花嫁と共に、雨の日も風の日も、幾多の試練が起ころうともその人生の道を歩み、花嫁を守り抜くと誓いますか?誓うのならば、沈黙を持って答えよ。」


「・・・・・・・・。」


アルファンは呆然と目を見開き、言葉を失ったままその花嫁を見下ろす。

そう見下ろしていたのだ。


自分に嫁いできた花嫁はとても小柄で華奢で、強い日差しに溶けてしまいそうな儚い少女だった。


フンワリしたドレスが余計に彼女の華奢な体の輪郭を明確にし、頭部に覆われた半透明のベールから除くほっそりしたうなじに、アップにされた真っ白の髪が少女の美しさを際だたせている。


ブーケを持った折れてしまいそうな腕を見る限り、どうやって竜を殺したのか疑いたくなってくる。


「っ…。」



「同じく新婦ユーリットファベル、貴女はいかなる日にも夫を支え、苦難を共に歩み花婿を傍らにあると誓いますか?誓うのならば、沈黙をもって答えよ。」



「……。」



「では、誓いの口づけを。」(っ…いかん!何をぼうとしてるんだ俺は!)


その言葉にアルファンはハッとして、花嫁のベールに手をかける。おそるおそるベールを上げて、その花嫁の容貌を見た瞬間、アルファンは一歩後退するのを堪え、思考を停止させた。






そこには紫水晶の瞳が美しい、雪の妖精がいた。






「……。」


「……。」


「……。」


「……?」



ユーリットはいつまでも身をかがめてこないアルファンを見上げると、彼は石のように表情を固め、微動だにしない。不思議に思っていると、新郎の席から、笑うのを必死で堪える青年の姿が見えて眉間に皺を寄せた。なんて不謹慎な人なのだろうと。


(どうしよう。このままじゃ結婚式が終わらないし・・・)


ちらりと司祭を見たが、司祭も困惑した表情だ。


数十秒待っても動かない夫に視線を戻すと、仕方なく、背伸びして硬直する夫の薄い唇に自分から唇を重ねた。

 新郎が思考停止したので、ユーリットからの誓いのキスでした。


次回はユーリット視線を重視したいと思います。


大変長らくお待たせいたしました。


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