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無騒の半音  作者: あっこひゃん
副旋律
49/89

第8.3騒 とある訓練の日のスケジュール

一年間の基本日程です。


 見習いの、新兵ですらない仮隊員の訓練は朝から始まる。


 ――06:00 起床。

 06:00に“必ず”起きる。

 早くても遅くてもいけない。早く起きて洗面に行こうものなら罰則だ。

 皆は寝返りを打ちつつ、動作開始を意味する鐘の音を待つ。

 鐘が鳴ると、女子寮では洗面所が戦場と化す。

「はやくどきなさいよ! 手間がかかっても同じ顔にしかならないんだから!」


「ほんま、早起きは辛いわぁ…」

「六時まで寝れるなんて幸せ…」

「毎日同じ時間に起きるのは新鮮だな」


 ――06:30 自室前にて点呼。

 今日の体調と、身だしなみの点検を行う。

 一日の中で一番、罰則の腕立て伏せが多く行われる。

 念には念を入れても、姑並みの細かすぎる点検に、いつも誰かが餌食となる。

「靴紐が長かっただけなのに! あいつの前髪、いつか切ってやる!」


「前髪、切った方が良いか?」

『絶対切るな』 

 

 ――06:50 掃除。

 トイレ、共同浴室、廊下など、毎月分担が変わる。

 自分たちの部屋とベッドも掃除。

 ベッドの布団も指定された通りに畳む。折り目の方向も、置く位置も決まっている。

「掃除なんて召使いにさせれば良いものを……便器を汚した奴は誰だ、白状しろ」


「………」

「主婦がおる。とぅとぅ自作の掃除道具使いだしたで」

「こいつがいる限り、掃除は完璧だな」 


 ――07:30 朝の体操。

 野外演習場に集合。体操をして、3キロ走る。

 この間に指導教官は掃除を点検。出来ていなければ終了後に罰則のち、再掃除。

 但し、布団だけは言われない。出来ていないと廊下に放り出される為、晒し者になる。地味に傷つく罰則。

「うわーこいつ布団出されてるぜー。踏んじゃえ、踏んじゃえ」


「気色悪いぐらい、ここの部屋はいつも綺麗だな」

「男の部屋じゃねーな」

 

 ――08:00 朝食。

 再掃除、訓練が終わった者から朝食。

 いつ作られたか不明な固くて黒いパンと、味と具のないスープが定番。これに一切れのチーズと肉が付く。

 別名、囚人食。パンとスープは食べ放題。

 稀にサンドイッチになると、狂喜乱舞。

「こんな……チーズとハムとサラダを挟んだだけのものに、こんなに感動するなんて……」


「兄ちゃん、またお代わりしてはるし……」

「なんでこの朝飯で満足する?」

「いつもと同じ」

 

 ――09:00 座学。

 朝一番は座学。能力別になっている。

 文字が読めない(スパルタ指導)組、一般(広く浅く習得)組、一般教養(専門知識を習得)組、士官学校卒業(特別コース)組。

 文字が読めない(スパルタ指導)組からは、いつも怒声と罵声が飛ぶ。

 「昨日もやっただろ? こんな簡単なことも出来ないなんて、お前達の脳ミソは鳥以下だな」


(鶏は頭良い…)

(馬鹿っ! 余計なこと言うな!)  


 ――10:30 集団座学。

 全員で屋内演習場に集まっての座学。

 軍隊規律、縄の結び方、兵法、応急処置など、実技が入る座学。


 軍隊規律の中の、“整列・礼”は、入隊して直ぐに行わる、永遠に続く地獄の訓練である。

 全員揃うまで、永遠に行われる。入隊したての新人を締める役目を持っている為、一番厳しい。

 毎年、二週間ほど続く。出来るまでやらせる。この期間に限り、最長16:00まで訓練が続く。

 昼は食べれない。だいたい初日は歩くだけで終わる。最後は号泣となる恒例の行事。

「正面に向かって! 礼!!」


『………………』


 ――12:00 昼食。

 朝よりましな、パンとスープに、麺類とサラダ、果物が付く。

 どれかに肉や魚が具材として入るが、偶に奇想天外な味の仕上がりを見せる。

 一日の内で一番油断出来ない食事。パンとスープは食べ放題。

 稀に果物が菓子になると、裏取引が行われる。

 食べ終わると休憩。(部屋での飲食は厳禁。水のみ可)

「これやるよ。その変わり、今度デートしよーよ」


「!!!!」

「えっ? 兄ちゃん、はじめて菓子食べたん?!」

「………これも食うか?」


 ――13:30 集団実習。

 全員で屋外演習場に集まっての実習。

 武器の使い方、手入れ、乗馬、火器の取り扱いなど、危険な実習が多い。

「一歩間違えると大怪我をするからな。慎重にいけよ」


「目立って手際が良いのがいるな」

「ありゃあ、相当、いじってるぜ。小さいのに大したもんだ」

 

 ――15:00 訓練。

 軽く五キロ走った後、剣、棒、弓、鞭、魔法、体術など、ありとあらゆる戦闘訓練を行う。

 偶に二十キロ走らされたり、山の中に連れて行かれたりする。

 最後は三キロ走って終了。


 山へは半年過ぎた頃に連れ出される。恒例行事の一つ。

 3日ほど、ナイフ一つで山中に放置される。部屋単位で行われ、秘密裏に一回目の適正審査を受ける。

「おい、息をしろ! 誰かエフミト少尉を呼んで来い!!」


「訓練で死ぬな! 世間体が悪くなるだろ!?」

「死んだか?」「死んだ」「死んだな」

「クソがっ」

 

 ――17:00 特別座学。

 文字が読めない(スパルタ指導)組は年間を通して必須。宿題も出る、課題もある。

 一般(広く浅く習得)組は、半年ほど。課題あり。

 一般教養(専門知識を習得)組、士官学校卒業(特別コース)組は、課題のみ。

 課題は全員共通。赤点で補習となる。

 別途で4回ほど妙な問題が出題される。

 回答によって配置先が変わるらしい。掘り出し者を見つける問題であるようだ。

「体は動かんでも頭は動くだろ! その頭に叩き込め!!」


「あっはっはっはっ! この回答サイコー!!」

「…やりますね」

「ひー! ひー! お腹が痛いっす!!」


 ――18:00 夕食。

 固いが白いパンとスープ、メイン料理ともう一品に、サラダと果物がつく。

 残っている場合、全て一回分ずつ、お変わり出来る。

 不味いので、お変わりをする者は極少数。

 食堂は19:30まで。閉まる直前に来ると、食堂のおばちゃん達に目の敵にされる。

 一人だけ、例外的におめこぼしされている者がいるようだ…。

「よう、今日もお代わりか?」


「あの子、最近時間内にこれるようになったわね……」

「頑張ってたもんね……」

「駄目ね。年がいくと涙脆くなって……」

 

 ――19:00 風呂。

 19:00から21:00の間。自由に入れる。

 人数が多いので、常に満席状態。

 この時間帯だけ、女子寮に見張りと見回りが付く。

「男の浪漫が……」


「ちょっと、もう少しゆっくり浸かりなよ。はい。いーち…」

「うるさい!」


 ――22:00 就寝。

 一斉に灯りを消される。起きているのを見つかると罰則。

 22:30頃に見回りが入る。

(で、誰が一番気になってるの? 白状しなさいよ)


「………………」

「うん。胸は動いとる」

「寝つきと寝相が異常に良いと、死んでないか不安になるな」


 彼らは一年を寮で過ごした後、正式な軍人になる。

 この共同生活は同期の結束を強め、今後の横への繋がりとなるのだ。

 ちなみに、この時期の結婚・恋人成立率は異常に高い。

 同期同士はもちろんだが、美味しい飯に飢えている男相手に、料理で胃袋と愛を掴む女性が増える為である。


最近、共同生活を嫌がる人が増えましたね。

生活の多様化なのか、他人を嫌っているのか、干渉されたくないのか、ぼっち上等なのか。合わない人も確かにいますが、同室は本当に永遠の友達です。

なにせ、思考と行動パターンがすべて把握されますからね。


カタッ(メガネを置く音)

相手「もう寝るの?」

自分「なんで!?(図星)」

相手「そろそろ、そんな時間(12時前)」


(テスト期間中)

自分「………今、勉強してないっしょ。ゲームしてる?」

相手「えっ?!なんで?」

自分「さっきから全く動いた気配がない。マンガならめくる音がするはず」

相手「勉強かも知れないじゃん」

自分「ない。だってさっき、ペン転がした」


お互い背中合わせで、間に棚があった上の会話です。振り返っても見えないのに、何をしてるのかバレバレ(笑)

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