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無騒の半音  作者: あっこひゃん
主旋律
32/89

第32騒 長い一日の、人質になった時。

カラト視点、簡単経緯。


 酒場についた。

    ↓

 それらしい男に鞄を渡した。

    ↓

 鞄を受け取った男が鞄を確認した。

    ↓

 中身を見た男が激情した。

    ↓

 なぜか、人質にされた。



 膝で、捻られた手ごと背中に押し付けられる。

 カウンターに乗っていない下半身は自由だ。

 上半身が妙な具合で捻れていなければ、抵抗できたかも知れない。

「動くな!」

 頭上から、鋭い制止の声。

 声と共に手が伸び、髪を鷲掴みにされた。

 根っこの皮膚が、抜かれる悲鳴を上げる。

 顔が上がる。首が反る。

 反った首に。

 ナイフが当てられた。 

(逃げるの無理)

 果物ナイフよりも尖っていて、細く鋭い刃先。

 うっかり動かすと、さっくり切れそうだ。

 目だけを動かして周りを見渡した。

(誰か、助けれてくれそうな人は………)

 俺がいるカウンターから、三メートルぐらい離れた先に、人垣ができていた。

 円状に輪をつくり、俺達を見ている。

 手の届く所に人がいない。ということは。

 助けてくれる人がいない。ということだ。

(………参った)

 荷物を受け取った男が警戒しているのは、アドルドのようだ。

 アドルドは人垣の一番前。正面にいる。

 すぐに動ける体勢だが、動くことを躊躇っている。

 アドルドが動くと、多分、ナイフが動く。

「近寄るな。こいつを殺すぞ」

 近寄るな。殺される。

(でも、なんでアドルド?)

 鞄を持って来たのは俺だ。

 書類を水浸しにしたのは、持ってきた人物だと思わないのだろうか。

(ぐぉ……内臓と関節が……)

 上に乗っている男が警戒を強めた。

 膝に、力が加わった。

 捻られている腕と、膝で押さえつけられている部分は、内臓も含め、当然、痛い。

 だがそれ以上に、捻りを加えられている体の部分が痛い。

 骨とか筋肉とか内臓とか。

 全部、ぜんぶ、捻られているのだ。

 その部分が、痙攣を起こすぐらい痛い。

「お前が、狩人と繋がっていることは知っている」

 男が喋る。

(男の話に集中しろ)

 痛みから意識を逸らすんだ。

(狩人。アドルドは猟師と知り合いなのか?)

「一般人を囮にしたようだが、生憎だな」

 うおぉ! 髪が抜ける!

 痛くない! 痛くないぞっ!?

「お前が鞄を換えた所を、部下が目撃してる。今頃お仲間は袋叩きにされているだろうさ」 

 アドルドが鞄を換えた? いつ?

 鞄は、俺がずっと持っていたのに。

 アドルドは表情を変えず。

 反撃する構えを、深くした。

「………この人数を相手にする気か?」

 男の、楽しそうな、好戦的な口調。

 十人ぐらいの足音が店の中で響いた。

 仲間だろうか?

(………それにしても………)

 耳、良くなったな、俺。

 毎日地面に倒れてへばっているから、最近、本当に、耳が良くなった。

 足音の聞き分けは、最近自慢の特技だ。

「そっちこそ良いのか。こんなところで密集して」

 アドルドが初めて答えた。

 好戦的な笑みを乗せて。

 店に、緊迫した空気が漂った。

「………………」

「………………」

 焦れるような、長い、一瞬。

 男のナイフが、少しずつ肌に喰いついている。

 思考が焦る。

(何か動きがあれば……)

 逃げる算段なんてものは無い。場が動く一瞬を狙うしかない。

 後方で、風がうねった。

 近くのどこかで何かが割れ。

 重石が、軽くなる。

(! いまだ!)

 体の下に敷いていた左手を引き抜く。

 首に当たっていたナイフを握った。

 とうに痺れが切れ、感覚がなくなっていたのが救いだ。

 捻られていた体を更に捻る。

 上にいる男の体勢を崩し、拘束を解く。

 勢いのまま、床下に転がり落ち。

 カウンターの下に身を滑らせ。

「伏せろ!!」

 言葉より早く、暴風が店を吹きぬけた。

 嵐のような音と共に、閉まっていた店のドアが吹き飛ぶ。

 兆階がどこかの壁に当たり、外れたドアが奥の壁に激突した。

 騒然となる店内で。

 ドスの効いた低い声が、良く響いた。

「全員、動くなよ」


 

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