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無騒の半音  作者: あっこひゃん
主旋律
19/89

第19騒 特別扱いされた日

おまたせしました。これからスピードアップして投稿していきます。


PS:床で寝ると宣言したアドルドは、トイレに行くリラに何度も踏まれたので、ベッドに移りました。

 熱が出た日に休んで、次の日も休んだ。

 訓練に復帰したのは三日後。

 しかし、たんこぶが治るまで、別訓練となった。

 皆が重い荷物を背負って、障害物を避けている。

 俺はそれを見学しつつ、腹筋とか腕立て伏せとかやらされている。

 隣には教官。

「しっかりやれ。まだ四十一だ」

 厳つい視線は、前方の軍団に向いたまま。

 人にあるまじき横の目で、数を正確に数えられていた。

(普通の訓練の方がましだった!)

 一番苦しい形に整えられ、形を崩せば数に数えらない。

 筋肉不足の俺には拷問だ。

(くそっ) 

 見て分かるぐらい震えている腕を、少しずつ曲げる。

 本当は顎を地面に付けないといけないのだ。

(これ以上曲げたら支えられない)

 曲げて地面と仲良くするか。

 そ知らぬ顔でもう一回数を稼ぐか。

(よし。戻そう)

 腕と背中に力を込め。

 潰れた。

「あと五十九回だからな」

「………」

 もう一度形を作る。

 腕で体を支えて、足を伸ばして。

 持ち上がっているお尻を引っ込めて、背中から足まで一直線に。

 出来ない。

 腕が限界。もう無理。駄目。イヤ。

「先に腹筋を終わらせてもいいぞ」

 休むという単語は、教官の頭に存在しないらしい。

(このまま腕立て伏せをするよりはましか)

 背中の筋肉が引き攣っているが、腹筋はまだ出来た。

「少尉から、お前は走って倒れるとよく頭を打つから、走らせるなと言われた」

「………」

「これを機会に、棒きれみたいなお前の体に、筋肉の厚みを足そうと決まった」

「………」

「お前のために、特別に、特別な訓練表も作った。喜べ“特別”だぞ」

「………」

「後で同室の奴に渡す。確実に、きちんとこなせ」

「………」

「返答はどうした?」

「了解しました」

 優しいエフミト少尉の言葉が、優しくない教官によって歪められた。

「そうか。ところで、腹筋が止まってるぞ。残りはどうした?」

「ぷぎぃあぁ!!」

 腹が!腹が!!腹がー!! 

 足をどけて!教官!!足を腹からどけてー!!

「あぁ、良い悲鳴だ」

 真顔で言うなー!!

 


 ――ひどい目にあった  



「災難だったな、カラト」

 優しく肩を叩いてくれたのは、アドルドだった。

 半ばお湯に沈んでいた頭を、同室の暖かい言葉で持ち上げる。 

「ひどい目にあった」

 他の教官からも“特別”扱いを受けた。

 特別なんていらない。普通が良い。

「仕方ない。倒れて頭を打ったらまた悪化する恐れがあるし。お前は確実に倒れる」 

 反論したいが、反論出来ない。

「カラト。お前、誰かに襲われたとかないわけ?」

 離れた所で浸かっていた一人が、問いかけてきた。

「ない。と思う」

 そういえば、同じことを教官にも聞かれたな。

「思うってなんだよ」

「人には襲われてない」

 そう。人には襲われてない。

「あぁ……そういえば、猫のひっかき傷があったな」

 包帯を取り変えてくれていたアドルドが、意地悪く呟いた。

「猫に襲われた?カラトらしくて笑えもしねーなー」  

 俺らしいってどーゆーことだ?!

「よっと」

 一気に近づいて来た筋肉質な体。

 こいつも良い体付きをしている。

 こんな体だったらあんな訓練なんて軽いだろう。

(羨ましい……)

 こっちは一日で体重が激減したような気分なのに。

 おまけに数をこなせなかったから、明日分に追加するとか言われた。

 明日が嫌だ。

 憂鬱過ぎて、また顔がお湯に沈みかける。

 半分まで沈んだ時に、太い腕が伸びて、前髪を持ち上げられた。

 俺の目が細くなる。

 睨むわけではないが、急に視界が明るくなったので眩しい。

「コレ、関係なかったのか?」

 人の顔を指して、アドルドに聞く。

「全く無関係らしい」

「やー。それもそれで気になるな。お宅ら大変だね」

 手が離れて、視界がいつもの状態に戻る。

 相手は「お先に」とお湯からを上がってしまった。

(よく分からない)

 目つきが悪いと散々言われて、小さい時から前髪を伸ばしている。

 誰に聞いても、極悪だから隠しとけと言われた。

 軍では切れと言われるだろうと思っていたが、それも無かった。

 むしろ、面倒だから切るなと言われた。

 ………………。

「………アドルド」 

「なんだ、カラト?」

 分かりきっていたが、少しだけ期待して、アドルドに聞く。

「俺の目付きって、そんなに悪いか?」

「………………」

 黙り込まれてしまった。

  

「カラト兄ちゃん。教官から自主訓練表あずかっとるよー」

「!? !? !?」

「中身はなんだ?………ほうほう」

「!? !? !?」

「逃げるな。やるぞ」

「!! !!」

「カラト兄ちゃん、体も硬いけんな」

「二人いるからいけるだろ。リラ、お前、右側担当な」

「了~解」

「!! !! !!」

「「せーの」」

「!! !! !! !!」

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