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無騒の半音  作者: あっこひゃん
主旋律
14/89

第14騒 荷物を運ぶ日の、誘拐された時。

カラトはとても真面目です。抜けてますが。

 何にでも、始まりは、ある。

 最中にはそうとは知れないが、後で考えると、始まりは確かにあった。

 人生が線だとするなら、きっとそれは細かい断線の集まり。

 線にもならない点の集まり。

 いずれそれは、自身も考え付かない、個性的な線を描くのだろう。

 

 

 人に体当たりされ、吹っ飛ばされた。

 数えるのは放棄していたが、痛いものは痛い。

 今日一番の痛みと反動に、踏ん張りが効かなかった。

 腹が減っていたのも要因の一つだ。 

 表通りの中央まで飛ばされ、目の前にあったのは走る馬の足。

 瞬間の英断。

 思いっきり転がって向かいの道へ。

 馬から逃れ、生ゴミの山に突っ込んで無傷だったのは奇跡だ。

 すごいぞ。俺。

 しかし、ゴミを漁っていた二羽の鳥に、敵の認定を受けた。

 空中からの鋭い攻撃に耐えながら、やつらから身を隠す。

 でかいゴミ箱万歳。

 頭から二本、細い血が髪と絡まり頬に流れていた。

 箱を持っている為に防げなかった攻撃だ。

 これだけで済んだのは、御の字だろう。

 まあ、頭上にばかり意識を向けて、疎かになった足で猫の尻尾を踏み付たのは失敗だった。

 全力で踏みつけた。

 言い訳だが、悪気は全く無い。

 せっかく鳥から逃げたのに、今度は猫に追い掛け回される羽目に。

 ついてない。俺。

 背後から噛み千切られそうな勢いで追いかけられる。

 途中、偶然、蹴り上げた石が猫の鼻っつらを直撃。撃退。

 更にもう一つ。

 喧嘩中の犬に命中。

 この展開、もう嫌。

 人相の悪い犬達の乱闘に巻き込まれた。

 犬畜生と本気で喧嘩。

 殴って蹴られ、蹴って噛まれて、噛んで噛まれて。

 分かり合った。俺達38匹。

 生物の垣根を越えて一致団結した。

 次に待っていたのは、飼い犬軍団と野良軍団の激しい戦い。

 戦いの中、野良軍団の下っ端だった俺は怪我を負ってしまった。

 一部の友のお蔭で戦線離脱を許可され、全力逃走。

 仲間の安否を気に掛け、後ろを振り返った所で柱にぶつかる。


 白か黒か。

 視界が一瞬、染まる。


 頭に衝撃を受けて目を開くと、逆さに写った酒場があった。

 一連の騒動で当初の目的を忘れていたが、思い出した。

(………そうだった、酒場を探していたんだった)

 どこから変わった?

 思い出せない。

 何はともあれ。酒場だ。

 目的地かどうかはさておき、さっそく入ってみよう。

 腕に抱え込んだ木箱の感触に安堵しつつ、上半身を起こす。

 何となく体が痛いが、どこが痛いのか最早分からない。

 服についた生ゴミの匂いで、鼻は愚か思考まで鈍ってしまったようだ。

「大丈夫っすか?」

 不意に差し出された大きな手に、体が反射的に引いた。

「大丈夫です……」

 人が居た。

 いつから見られていたのか。

 確実に、柱にぶつかった所は見られているだろう。

(うわ!恥ずかしい!)

 固そうな手を素直に取れず、慌てて立ち上がる。

 急激に動いたせいか、目眩がした。

「危ないっす!」

 傾いた体の腕を掴まれ、なんとか地面へ逆戻りせずに済む。

(前にも似たようなことが、合った気がする)

 気がする。ではなく、アドルドと初めて会った時とそっくりである。

「ありがとうございます」

 礼を言いながら、相手の顔を確認した。

 頬骨が浮いて角ばった顔、完璧に禿げた頭。

 細い眉、糸のような目。

 無意識に、一歩下がってしまった。

 特徴的だが、悪い人相では無い。

 でも、なぜか、近づきたくない。

 服装だろうか?

 膝から下を豪快に切ったズボン。二の腕が剥き出しの、ポケットだらけ上着。

 それだけだ。

 下には何も着ていない。盛り上がっている胸板が見える。

 見れば見るほど筋肉質な体だ。

 全身が、軍人みたいに引き締まっている。

 かなりの大柄で、アドルドよりも立派な体格だ。

 真横にいると、圧迫感というか、緊張感が半端無い。

(だからか?)

 良く分からない。

 けれど、思うところはある。

「………あの」

「なんすか?」

 言い出すまでとぼける態度に、喉が変に鳴った。

「うでを、はなしてください」

「………」

(あぁ!怖い!!)

 なぜだろう。軽い雰囲気なのに!

 陽気といえそうな雰囲気なのに!

 なぜだろう。全身に鳥肌が立って来た!!

(逃げなきゃ!!)

 逃走を決意した。

 だが、察知したかのように、もう一つの腕が蛇のように伸びてきた。

 捕縛。首を太い腕で固定される。

「ぐぇ!」

「助けてもらったお礼っすかー?当然のことをしただけっすよー。え?それでもお礼がしたい?仕方ないっすねーじゃあ、ちょっと付き合ってもらって良いっすか?」

(そんなこと誰も言ってない!!)

 腕で喉が押され、声が出ない。息が苦しい。

 木箱をもったまま。抵抗らしい抵抗も出来ず、連れ去られた。


カラトはとても真面目です。天然ですが。

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