神様、拗ねています。
朝。
目が覚めると、見慣れない天井が目に入った。
昨日から使い始めたばかりの――旧校舎の保健室だ。
「おは…よ…!」
ピグが元気よく起き上がる。
言葉もかなり流暢になってきて、ますます可愛いが増している。
「おはよう」
頭を撫でると、ピグは満足そうに「ぶも」と笑った。
昨日の夜のことを思い出す。
突然流れた、あの放送。
『明日は、忘れていた事を思い出すでしょう』
放送室から突然流れた、わけの分からない声。
鏡少年が窓に反射し映る。
「先生」
「やっぱ気になるよな」
「ええ。なにかの予言でしょうか…」
「カイダン、トイレ、ホウソウ。
ガッコウ ノ ナナフシギ、ソロイハジメマシタネ。」
確かに。
花子さん。
増える階段。
鏡少年。
人体模型。
二宮金次郎。
そして――昨日の放送。
「……」
俺はふと気付く。
「あれ?」
鏡少年がこちらを見る。
「どうしました?」
「そういえば」
「神様、最近静かじゃない?」
その瞬間。
『……ようやく思い出しました?』
部屋全体に、聞き慣れた声が響いた。
「いるな?」
『……いますけど』
鏡の少年がくすっと笑う。
「不機嫌ですね」
『不機嫌じゃない!』
完全に不機嫌だ。
俺はベッドの上であぐらをかく。
「で?」
「昨日の放送、お前?」
少し間。
そして神様が言う。
『……違います』
「違うのか」
『でも、』
声がちょっと拗ねた感じになる。
『最近さ』
『七不思議ばっかりじゃん』
『金次郎!鏡!人体模型!花子!』
『私の出番ないじゃん!』
やっぱりそれか。
鏡少年が肩をすくめる。
「神様、嫉妬ですか」
『嫉妬じゃない!』
ピグが近寄ってくる。
「か……み…しゃん…!」
『!』
ピグはにこっと笑った。
「だいじ!」
『……』
少し沈黙。
『誠だけずるい!私もピグをこの手で抱きしめたい!』
突然のわがまま神様に、鏡の少年が言う。
「鏡越しにしか会えないのは僕も同じです。」
「にい……にッ…!」
「え!今!先生!今!にいにって言いました!?」
『ずるい!ピグもう一度"かみさま"言ってごらん?』
すっかり機嫌は治り、騒がしくなる。
俺はため息をつく。
「単純だな」
『単純じゃない!』
そして神様が続けた。
『でも昨日の放送』
『あれは本当に私じゃない』
鏡少年が目を細める。
「つまり」
「この校舎に、もう一つ」
「ナナフシギ、デスネ。」
俺は旧校舎の天井を見上げた。
「……なるほど」
「ここ、本当に学校だな」
どうやらこの拠点。
まだまだ面白いことが起きそうだ。




