家候補、一晩で生えました。
宿に戻った頃には、もうすっかり日が傾いていた。
ピグは俺の腕の中で、うとうとと船を漕いでいる。
「ぶ……」
「はいはい、もうすぐ飯だぞ」
小さく頭を撫でると、ピグは安心したように俺の胸に顔を埋めた。
鏡の少年がくすりと笑う。
「先生、完全に親ですね」
「元教師だ」
「それは関係あります?」
……ないかもしれない。
とりあえずその日は宿で休み、翌日。
俺たちはギルドへ向かっていた。
目的は二つ。
昨日依頼した魔物の解体の様子を確認すること。
そして――
家の相談だ。
ギルドの奥の部屋で、ギルアが腕を組んで待っていた。
「ちょうどいい。お前に頼みたいことがある」
「嫌な予感しかしないです」
俺が言うと、ギルアは小さく鼻を鳴らした。
「昨日な……街の外れに妙なもんが現れた」
「妙なもん?」
「家だ。」
「……は?」
思わず聞き返す。
鏡少年も首を傾げた。
「家が現れるって、どういう意味です?」
「そのままだ。ついこの前までは何もなかった場所に、突然建ってた」
「生えたんですか?」
「知らん」
そんな話あるか。
だがギルアの顔は冗談ではなさそうだった。
「中を調べてきてくれ」
「嫌なやつじゃん」
「報酬はある」
ギルアは指を二本立てる。
「成功したら――Cランクに上げてやる。」
「マジすか。」
一本指を折り、ニヤリと口角をあげる。
「家賃は__要らない。」
俺は即答した。
「内見します」
鏡少年が小声で言う。
「先生、即決ですね」
「ランクと家賃は大事だ」
案内されたのは街の外れ。
林の手前に、それはあった。
――二階建ての建物。
だが、普通の家ではない。
「……学校?」
思わず呟く。
どこからどう見ても、
古い木造建ての校舎だった。
ギルアが腕を組んだまま言う。
「どうだ」
「中を調べろって話ですよね」
「そうだ」
玄関の扉を開ける。
ギィ……
少し古びた音が響いた。
中に入ると、すぐに分かった。
完全に学校だ。
右側には教室が二つ。
保健室と、空き教室。
左側にも二つ。
空き教室と、音楽室。
奥にはトイレがあり、その横に階段がある。
鏡の少年が周囲を見回す。
「特に危険な気配はありませんね」
人体模型も答える。
「イジョウ、アリマセン。」
ピグがきょろきょろと辺りを見る。
「ぶも?」
「探検だな」
階段を上がる。
二階には三つの部屋があった。
手前に、やたら広い部屋。
「職員室だな……」
その奥に校長室。
そして一番奥に、
放送室。
俺はしばらく校舎を見回した。
特に異常はない。
ギルアが聞く。
「どうだ」
俺は答えた。
「住めそうだな」
広さは十分。
部屋も多い。
何より――
七不思議にぴったりすぎる。
「ここに住む」
ギルアが肩をすくめる。
「頼んだぞ。」
「ええ、おまかせください。」
俺が力強く答えると、横のピクが胸をドン、と叩いた。




