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19/21

家候補、一晩で生えました。

宿に戻った頃には、もうすっかり日が傾いていた。


 ピグは俺の腕の中で、うとうとと船を漕いでいる。


「ぶ……」


「はいはい、もうすぐ飯だぞ」


 小さく頭を撫でると、ピグは安心したように俺の胸に顔を埋めた。


 鏡の少年がくすりと笑う。


「先生、完全に親ですね」


「元教師だ」


「それは関係あります?」


 ……ないかもしれない。


 とりあえずその日は宿で休み、翌日。


 俺たちはギルドへ向かっていた。


 目的は二つ。


 昨日依頼した魔物の解体の様子を確認すること。


 そして――


 家の相談だ。


 ギルドの奥の部屋で、ギルアが腕を組んで待っていた。


「ちょうどいい。お前に頼みたいことがある」


「嫌な予感しかしないです」


 俺が言うと、ギルアは小さく鼻を鳴らした。


「昨日な……街の外れに妙なもんが現れた」


「妙なもん?」


「家だ。」


「……は?」


 思わず聞き返す。


 鏡少年も首を傾げた。


「家が現れるって、どういう意味です?」


「そのままだ。ついこの前までは何もなかった場所に、突然建ってた」


「生えたんですか?」


「知らん」


 そんな話あるか。


 だがギルアの顔は冗談ではなさそうだった。


「中を調べてきてくれ」


「嫌なやつじゃん」


「報酬はある」


 ギルアは指を二本立てる。


「成功したら――Cランクに上げてやる。」


「マジすか。」


一本指を折り、ニヤリと口角をあげる。


「家賃は__要らない。」


 俺は即答した。


「内見します」


 鏡少年が小声で言う。


「先生、即決ですね」


「ランクと家賃は大事だ」


 案内されたのは街の外れ。


 林の手前に、それはあった。


 ――二階建ての建物。


 だが、普通の家ではない。


「……学校?」


 思わず呟く。


 どこからどう見ても、


 古い木造建ての校舎だった。


 ギルアが腕を組んだまま言う。


「どうだ」


「中を調べろって話ですよね」


「そうだ」


 玄関の扉を開ける。


 ギィ……


 少し古びた音が響いた。


 中に入ると、すぐに分かった。


 完全に学校だ。


 右側には教室が二つ。


 保健室と、空き教室。


 左側にも二つ。


 空き教室と、音楽室。


 奥にはトイレがあり、その横に階段がある。


 鏡の少年が周囲を見回す。


「特に危険な気配はありませんね」


人体模型も答える。


「イジョウ、アリマセン。」


 ピグがきょろきょろと辺りを見る。


「ぶも?」


「探検だな」


 階段を上がる。


 二階には三つの部屋があった。


 手前に、やたら広い部屋。


「職員室だな……」


 その奥に校長室。


 そして一番奥に、


 放送室。


 俺はしばらく校舎を見回した。


 特に異常はない。


 ギルアが聞く。


「どうだ」


 俺は答えた。


「住めそうだな」


 広さは十分。


 部屋も多い。


 何より――


 七不思議にぴったりすぎる。


「ここに住む」


 ギルアが肩をすくめる。


「頼んだぞ。」


「ええ、おまかせください。」


俺が力強く答えると、横のピクが胸をドン、と叩いた。

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