ガルド
レイは瓦礫の上に座り込み、
視界の端でガルドの姿をとらえた。
傷だらけの体、泥と血で汚れた鎧。
それでも、ガルドは立っていた。
レイは思わず息を吐く。
「ガルド…無事だったのか……」
声にならない声が、胸の奥から漏れた。
手を握る力も戻らないまま、心だけが反応した。
「……俺は…もう、何も…」
ガルドは静かに、答えた。
「まだ、できることはある。立ち上がれ、レイ」
レイは俯いたまま、唇を噛みしめた。
震える声が、瓦礫の隙間に落ちる。
「……俺は……人を、殺させた……」
思い出されるのは、仲間の背中。
刃が振るわれ、悲鳴が上がり、
それでも止めなかった…
――止められなかった自分。
「俺が……間違ってた……」
「守るためだって……そう言い聞かせて……」
拳が、砕けた石を掴む。
血が滲んでも、力を抜けなかった。
「……あの人たちが死んだのは…俺のせいだ……」
「俺が諦めさせて…逃がしていれば…
生きていたかもしれない」
ガルドはすぐには答えなかった。
ただ、傷だらけのまま一歩近づき、低く言う。
「……その重さを、感じているなら」
「お前は、まだ終わっていない…」
瓦礫の上で、レイの体は重く、動かない。
呼吸は荒く、手も足も力が抜けきっていた。
「……動けないか」
ガルドは呟くように言った。
その声に怒りも嘆きもなく、
ただ現実を受け止める冷静さがあった。
「……俺は……もう……」
言葉は続かず、レイは俯いたまま震えている。
ガルドは一歩前に出ると、
素早く背中に手を回した。
レイは一瞬、反射的に抵抗しようとしたが、
力が入りはしなかった。
瓦礫の上で、ただぐったりと
任せるしかない自分を知る。
ガルドはレイを背負い、慎重に一歩一歩歩き出す。
瓦礫がきしみ、足元が崩れるたびに、
ガルドの肩に体重がずしりと伝わる。
「……俺は……何も……」
レイの声はかすれ、絶望でいっぱいだった。
「生きている限り、まだできることはある」
ガルドの声は重く、そして確かだった。
瓦礫の荒野を抜け、薄暗い避難所の入り口が見えてきた。
救われた者たちのざわめきが聞こえる。
そこへ向かうガルドの背中は揺るがない。
そして、レイを背負ったまま、歩み続けた。




