絶望の魔帝
崩れたバリアの破片が朝の光にちらちらと輝く。
でも、その光は長くは続かなかった。
風がざわつき、空気が急に重くなる。
胸の奥までひんやりする違和感に、
レイは立ち止まった。
「……なんだ、これ……?」
思わず小さく呟く。
視線を上げると、〈残光〉の上空に、
漆黒の影がゆっくりと降りてきていた。
戦士たちが慌てて集まり、剣を握る手も震えている。
戦士たちが互いに顔を見合わせ、
恐怖で言葉を失う中、館の長が静かに口を開いた。
「……あれは、絶望の魔帝だ」
長の声は低く、重みがあった。
――絶望の魔帝。
瞳に映るものすべてを拒絶する冷たさ。
その存在が、光を飲み込み、空気をねじ曲げる。
「なんだよ、悪い夢なら覚めてくれ…!」
レイは訓練場へ駆け出していた。
「――魔徒だ……!」
長が小さく呟く。
黒い霧のような存在、絶望の魔徒たち。
彼らは地面を這うように拠点内に広がり、
触れたものの希望を淡く霧散させる。
人々の笑顔がわずかに揺らぎ、
息を呑む音が小道に響いた。
「こんな…奴らが……!」
戦士たちは剣を振るうも、魔徒は
姿を揺らしながら避ける。
まるで手も足も出ない。
――戦士たちの焦燥はさらに膨れ上がった。
そして、漆黒の気配が一点に集中する。
巨大な魔力をまとった影――絶望の魔将。
その姿は魔帝の威圧感を写し取ったかのようで、
戦士たちの心に重くのしかかる。
「……く、くそったれ!」
誰も声を出せず、ただその圧倒的な存在に
目を奪われる。
レイの胸の奥にも、凍りつくような
恐怖が蠢いていた。
絶望の魔将は、魔帝の両隣に居座って、
戦士たちを睨む。
その瞬間、空気がさらに重くねじれ、
地面がかすかに震えた。
――絶望が、確かに〈残光〉を覆い始めた。




