光の維持
「……レイ、 中央の館に行くぞ!」
ガルドが唐突に声をかける。
「え、何で?」
少し驚きながら振り返るレイ。
「長に会いに行くんだ。一人じゃつまらんだろ」
ガルドは笑いながら肩をすくめる。
「…わかったよ」
レイは少し考え、頷いた。
二人は畑を抜け、訓練場の横を通り過ぎる。
剣を振るう音、矢が放たれる鋭い音。
遠くからでも緊張感が伝わってくる。
レイは視線を訓練場に向け、
少しだけ羨ましさを覚えた。
「戦士になればいいじゃないか」
小声でガルドが尋ねる。
「……興味ない」
レイは短く答え、再び前を向く。
二人は館へと続く石畳を進む。朝日の光が屋根に
反射し、館全体を柔らかく照らしていた。
扉を押し開けると、中には〈残光〉の長が
静かに座っていた。
「ガルド、来たか。レイも一緒とは珍しいな。」
長は軽く微笑むと、二人を座らせる。
「最近、バリアが不安定になっている。
感情の積み重ねが弱くなっているのかもしれん……」
「…不安定?」
レイは眉をひそめ、少し前のめりになる。
「不安定だって!?」
ガルドは思わず声を荒らげ、
椅子に体を預けたまま肩を揺らす。
「……落ち着け、ガルド」
レイは窓の外を見つめ、淡々と呟く。
「落ち着けって言われてもだな!バリアが不安定って、
俺たちの日常が簡単に消えかねないってことだぞ!?
理解してるのか!!?」
ガルドの声は館中に響き、
拳を軽く握ってさらに焦りを見せる。
長は静かに微笑み、声を荒らげるガルドを
落ち着かせるように言った。
「焦るな、ガルド。まずは見て、感じることだ」
「でも……どうすりゃいいんだよ!」
ガルドの声はまだ荒く、拳を軽く握ったままだ。
長は静かに微笑み、二人に向かって言った。
「焦るな、ガルド。まずは、住民の心を一つにすることだ」
「え、心を一つに?」
ガルドは眉を寄せる。
「人々の小さな喜び、笑顔、希望――
それらが積み重なることで、バリアは安定する」
長はそう告げると、少し間を置き、
にっこりと笑った。
「今日祭りを開くんだ。笑い、喜び、誇り…
ありとあらゆる正の感情を積み重ねる。」
「ま…祭り…?」
ガルドは目を丸くし、少し戸惑いながらも、
楽しそうに息を吐いた。
館の外では、笑い声や拍手の音が小さく響き始める。
子どもたちが駆け回り、野菜を運ぶ手伝いに夢中になる。
若者たちは剣を置き、歌い、踊り、競技に熱中する。
その喜びが、確かに空気を満たしていくのを、
レイもガルドも感じ取った。
「ほら、少しずつだ」
長の声は静かだが、力強く響いた。
「人々の心が重なり合う。バリアは必ず、
また安定するはずだ。」
夕日が拠点を柔らかく照らし、笑い声と歓声の中で、〈残光〉のバリアは静かに、しかし確かに輝きを取り戻し始めた。
ガルドは息をつき、目を丸くして天井を見上げる。
「…すげえ、こんなことで守られてるのかよ……」
レイはそれを横目に見ながら、静かに頷いた。
「日常が、力になる――そういうことか」




