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警視庁陥落 7

 え? 何故?? と芳乃は考えたものの少し考えて彼女の手を掴んだ。

「ここは危険かもしれないから、もう少し先で話をしよう」

 そう言って一つ前の分岐へと更に戻った。


 そして、春姫を見た。

「淡島さん、俺らこっち選んだんですけどこっちは行き止まりですか?」

 

 春姫は驚きつつ

「あ、ああ。そうだよ」

 と答えた。

「亜久里さんは方向感覚が良いね」

 そう告げた。


 行きと戻り。特にこんな薄暗く同じような閉じた空間の道だと方向感覚を失うことが多い。迷路の中でスタートに戻りかけて再び迷う。そう言うことだ。


 つまり通り過ぎた分岐が分からなくなる。同時に先ほど何処から分岐に突入したか分からなくなる。

 だが、それをきっちり分かっている。


 つまり視覚だけにとらわれない特殊な第7感覚を持っているのかもしれない。

 春姫は芳乃についてそう判断した。


 芳乃は分岐を先ほど選んだ方向とは別の道へ少し進み、屈んで分岐を見つめた。

「俺の考えが正しければ」


 そう言い自分たちが先ほど選んだ方とは反対側の通路から3名ほどの兵士が姿を見せて折り返した。

 つまり波瀬浩司達のメンバーを背後から攻め入る形である。


 愛は思わず腰を浮かせて

「あぶな」

 と言いかけた。

 が、それを芳乃が彼女の口を塞いで

「しっ」

 と黙らせた。


 暫くして兵士たちが元来た道を戻っていくのが見えた。

 芳乃はそっと背後をつけて次の分岐を来た道とは違う方へと向かって行くのを見て目を細めた。


 芳乃は兵士たちが完全に見えなくなると先ほどの分岐へ戻り

「思っていた通りだ」

 と呟いた。

「先ほどの兵からの追跡は……茶番だ。兵士は警視庁の地下からじゃなくて恐らく他の出口か若しくは波瀬という警視が誘導している出口から入って迂回して出口へと急がせている」


 それに愛は驚いて声を零した。

「それって、どういうことなんですか!?」


 春姫が息を吐き出し

「君は捜査支援センター……情報解析やITに特化した業務だよね」

 と告げた。


 愛は頷いた。

「ええ、岡崎君もそうね。彼の場合は文章鑑定とかが専門なの」


 芳乃は少し考えながら

「そう言えば下層階に捜査支援センターや科捜研とかが集中していたな」

 と呟いた。


 春姫はチラリと愛を見て

「警務部や総務、それにサイバー関連もな」

 と答えた。

「あそこに集っていたのは」


 愛がハッとすると

「IT関連や特殊技能持ち」

 と告げた。


 そして芳乃を見ると

「もしそうなら、亜久里警部補が誰かが兵士と落ち合ったって言うお話は嘘ですね?」

 と告げた。


 芳乃は驚いて

「ん? 何でそう思ったんだ?」

 と聞いた。


 愛は春姫を見ると

「私、淡島警視と亜久里警部補のこと知ってます。亜久里警部補についてはお恥ずかしながら……その理由は言えないんですけどぉ」

 亜久里警部補は特殊技能持ちですよ、と告げた。


 芳乃は彼女の顔を近付けると

「えー? 俺は持ってねぇよ。パソコンは唯のエンドユーザーだからな」

 と言いかけて

「ま、俺を知っている上田さんの尋問は後回しにして」

 と携帯を手にして

「南部から連絡だ。次の分岐で出口みたいだ」


 ……誰があちら側の人間か……


 春姫は芳乃と愛を見ると

「大体の想定は出来ているけど」

 と告げた。

「波瀬と江崎と仲間だと俺は考えている」


 芳乃は腕を組むと

「確かにその三人の内の江崎と仲間はどちらも地域と交通だからな。他はほぼほぼ法務部やSSBC、科捜研とか警察とは別の特殊技能持ちの人間みたいだからな」

 と告げた。

「だが、だったら江崎と仲間もそう言えば良かったんじゃないのか? 俺はそう言われたら分からないし」


 それに愛が

「きっとバレるからだと思います。私が亜久里警部補を知っていた理由は警察の人事以外の個人的理由ですけど、それが無ければきっと知らなかったと思います。でもSSBCの人間は解りますよ」

 と告げた。


 つまり、同じ部署内の人間だと『こんな人間いなかった』と言うことが分かるということなのだろう。

 

 芳乃は口元を歪めると

「技術職の人間で利用価値のある人間だけを選別して捕獲しようと思っていたんだろう。恐らく警察内部の内通者が波瀬浩司か」

 と呟いた。


 春姫は首を振ると

「違うと思う。彼が本物の人事課なら俺と亜久里警部補と南部警部補は分ったと思う」

 と告げた。

「もしかしたら、本物の波瀬浩司は既に亡くなっている可能性がある」


 芳乃も愛も同時に足元からひんやりとした空気が立ち昇るのを感じた。だが、このままと言う訳にはいかない。


 大切な仲間が身体を張って虎穴に入っているのだ。助けなければならない。


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