警視庁陥落 3
驚く芳乃と和樹に淡島春姫はゆっくりと立ち上がり
「この警視庁には外部へ逃げるための隠し通路がある。何人かはその通路の出入口を知っている。それとは別に……その通路の一部からお巡りさんシステムへ繋がるダンジョンの入口がある……中二病の父が作ったダンジョンだ」
と大きく息を吐き出した。
「だが、警察内部にも裏切り者がいる。そいつを中に入れると反対に東日本を取られることになる。もう巻き返しはできない」
芳乃は笑むと
「つまり、そのダンジョンを本物の警察官だけで攻略しろと」
と告げた。
和己はフゥと息を吐き出し
「淡島さんよ、あんたトンデモナイ奴にトンデモナイこと言ったな」
とアハハと笑った。
「どうする? 亜久里」
芳乃は目を輝かせると
「それ俺に聞く? マジ血が騒ぐ。警察官になってあの世界とはおさらばしたけどさぁ、やべぇほどヤル気出た」
と言い、春姫に手を差し出した。
「やってやろうじゃねぇか。東日本を救うお巡りさんシステムのダンジョンへ連れて行ってくれ」
春姫は目を見開くと
「え? 長考なしなしの即決? もしかしたら命の遣り取りがあるかもしれないんだぞ? 遭難して終わりって言うのも」
とぼやいた。
父親はある意味においてクレイジーだった。
だからこそそういうモノを作ったのだ。
春姫は目をギラギラらんらんさせている芳乃と不敵に笑う和己を前に
「一応言っておくが、俺の父もクレイジーだったからどんな難解なダンジョンかは知らないからな」
と告げた。
「全くクレイジーだな」
芳乃は笑むと
「それこそ望むところだ」
と答えた。
和己もまた芳乃を見ると頷いて
「よっしゃ! じゃあ、行こうか。一発逆転のダンジョンへ」
と足を踏み出した。
視線の先には天井から壁を伝い一階へと行く手を阻むように炎が腕を伸ばしていた。