お巡りさんダンジョン二階層 5
芳乃は笑むと
「だが、上田さんへの信頼度は3番目だ。俺のことを俺が言う前に知っていた。波瀬達も情報として『亜久里芳乃』がダンジョンマスターのモグリだと知っていたと思うが『俺』を知っていたわけではなさそうだった。偽名を信じたからな」
と告げた。
「だが上田さんはこの反乱がおきる前からどちらの俺も知っていた。だから警察官上田愛であることを疑ってはいない」
……だから上田さんがいう岡崎信二を注視する……
愛は安堵の笑みを浮かべると頭を深く下げた。
「ありがとうございます」
和己も笑って
「ま、上田さんが波瀬達の仲間なら最初の時点で俺たちの偽名を指摘しているな」
と言い
「とにかく、岡崎要注意だな」
と告げた。
芳乃は頷いて足を踏み出した。
待機していた春姫たちは全員が互いに顔を見合わせて沈黙を守っていた。
岡崎信二は息を吐き出すと
「実は」
と唇を開いた。
「正直に言って俺は上倉さん達の言っていることを直ぐには信じられません。その疑ってすらいます」
春姫はチラリと彼を見た。
ある意味、それはこの状況下では当然の反応だろう。
上倉順一も杉村翔もそれはよく理解していたので、あえて反論はしなかった。
岡崎信二は少し考えながら
「それ以上に上田さんが直ぐにお二人のことを信じて賛同したことに疑念を抱いています」
と告げた。
「彼女は俺の良く知っている彼女じゃない」
……もしかしたら彼女は偽者かもしれない……
「お二人と仲間かどうかは分からないですが、彼女が偽者で俺たちを油断させて……」
それには春姫も上倉順一も杉村翔も顔を見合わせるしかなかった。三人ともがそれほど彼女を知っているわけではなかったからである。
岡崎信二は息を吐き出すと
「一応、上田さんには注意した方が良いかもしれない」
と告げた。
芳乃たちが戻ると春姫たちは合流し誰もが言葉を発しない不可思議な沈黙の中で足を進めた。
真っ直ぐの道から急角度に左へと曲がりかけて芳乃は手を出して
「ここのフロアボスだ」
と告げた。
和己は思わず銃を取り出し
「マジか、早くねぇ?」
と告げた。
芳乃は苦く笑って
「普通はな。でも」
と顎を動かした。
それに全員がそっと視線を前に向けると扉があった。




