警視庁陥落 2
芳乃は短い浮遊感の直後に警視庁のビルの方へ拳銃が端についた吊り紐を投げ入れた。90%失敗するだろう方法である。
だがどちらにしても『死』は確実なのだ。
だったら少しでも抗いたかった。
が、ちょうど投げた銃が下の階を攻撃していたドローンに引っ掛かった。
「げっ! ありえねぇ」
ドローンがガッと態勢を崩すのが見えた。
が、瞬間に強い力で振り子のように窓に突っ込んでいく自分の姿がガラスに映った。
ジェットコースター以上の体感スピードで突っ込んでいく。
これもまた怖い!
「げぇえぇ!! 運が良かったのか悪かったのか!!」
……わからねぇ!! ……
身体を守るために腕を前に構えてガラスへと突っ込み、ちょうど蹲る警察官と銃を構えながら近付く兵士の間に飛び込んだ。
「くそが!! てめーをスピード止めにしてやるぜ!」
勢いのまま兵士の脇腹を思いっくそ蹴り込み吹っ飛ばした。
運が良かったのだろう。
壁に激突と言う悲劇は回避できた。
「確かに滑り止めになった」
瞬間には声が響いた。
「亜久里ぃ!! 避けろぉ!!」
芳乃は自らが弾き飛ばした窓の空間に飛び込んできた影を避けた。ビビュンッと勢いよく影が手前から背後へと流れ、心で両手を合わせた。
合掌!
先ほどの倒れた兵士を再び滑り止めにして南部和己も生還したのである。しかも背後の窓の下でドローンが爆発する音が響いた。結局のところ態勢が保てず墜落したのだろう。
一石二鳥であった。が、時間はない。
恐らくこの状況を見た兵士が下からやってくるのは時間の問題である。
こちらは少数。向こうは自衛隊と対岸の兵士の連合軍。多勢に無勢。
芳乃は考えながら小さく息を吐き出した。
起き上がって直ぐに窓際に立ち一瞥して戻ってきた和己も
「ドローンには感謝するが、直ぐに兵士が上がってくるな。どっちにしろ助からねぇか」
と小さくぼやいた。
眼下では兵士がうようよしている。それにこの階はまだ無事だが火に飲まれるのも時間の問題だ。
芳乃は倒れていた警察の制服を着た男性を肩に担ぎ
「取り合えず、逃げられる間は逃げよう。まあ行き付く先は見えてるけどな」
と和己に呼びかけた。
それでも抗ってやる。そう言うことだ。
だが、男性は唇を開くと
「一発逆転の方法がある……中二病の俺の父の代から作り続けていた『お巡りさんシステム』それを起動させれば関東一帯のライフラインを制圧できる」
と告げた。
……。
……。
和己がそれに目を見開き
「ん? なんだ? そのおっそろしいSFゲームチックな設定は」
と思わず声を零した。
というか、それを実現化できるところが恐ろしい。と芳乃は心で呟いた。
男性は息を吐き出すと
「俺は淡島春姫、警視庁サイバー警察局の技術部部長だ」
と告げた。