お巡りさんダンジョン一階層 8
しかし、扉の隙間が広がりゆっくりと開いた。
全員が恐る恐る抜けると壁に埋め込まれていたデジタル時計とその下に水の入ったペットボトルが7個取り出し口に転がっていた。
芳乃はそれを見ると
「まるで自販機だ」
と思いながら時間を見ると
「……やっぱりダンジョンの中は時間の感覚が無くなるんだな」
と呟いた。
闇と同じ光景。敵は出てくるが日の陰りや気温の変化など時刻を感じさせるものがないとどれほどの時間が経ったか分からなくなる。
恐ろしいことである。
芳乃は冷静に全員を見ると
「ここで睡眠をとろう」
と告げた。
全員が驚いた。
芳乃は彼らを見ると
「警視庁が砲撃を受けたのは午前10時だった。そしてこの時計の時間は午前1時。つまり俺たちは15時間地下に籠っていたことになる」
と告げた。
「その間に口にしたのはこのペットボトルの水と乾パン。そして身体を休めることなく歩き続けたことになる。休眠は必要だ」
春姫は頷いて
「確かにそうだね。恐らく長い時間の緊張感で疲労を感じていないだけで身体にはかなり負担をかけている。休もう」
と告げた。
愛は俯き
「でも」
と告げた。
岡崎信二は愛の肩に手をかけると
「上田さん、休息は必要だと俺は思うよ」
と告げた。
愛は咄嗟に肩を動かして避けるとハッとして岡崎信二を見た。
芳乃は息を吐き出すと
「寝ろ。行きたい奴は一人で行け」
明日の7時に水と乾パンを食ったら出発する。と言い切るとゴロンと寝転んで目を閉じた。
和己も壁に凭れると腕を組んで目を閉じた。
遠野順一は既に寝ており、杉村翔が遠野順一の頭に太ももを貸しながら座りながら眠っていた。
春姫もそっと目を閉じた。
愛も俯くと身体を抱えるように目を閉じた。
岡崎信二も腕を組むと目を閉じた。
地下で眠る芳乃たちと同じように地上の人々も夜間も回る兵士たちに怯えながら身体を震わせていた。




