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世界最恐ダンジョンマスターは警察ダンジョンを攻略してお巡りさんをゲットします  作者: 如月いさみ


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お巡りさんダンジョン一階層 6

 遠野順一は冷静に

「エンブレム、と言う訳ではないみたいだな」

 と呟いた。


 杉村翔も扉の中央で横並びになっている6つのダイヤルを見て

「あれを回して何かに合わせるしか考えられないな」

 と告げた。


 芳乃は春姫に目を向けた。もちろん、芳乃だけでなく和己も愛も全員が同時に彼を見た。

 このダンジョンで一番詳しいのは彼なのだ。


 無意識に答えは? であった。が、春姫は静かにそしてこれ以上はないくらいにっこりと笑みを浮かべると

「言っておくけど、俺が分かっているのは入口ぐらいだからね」

 と告げた。

「全部を知っていたら今頃クリアしているから」


 いや、確かに! と芳乃は納得すると息を吐き出した。

「つまり、暗号の場所を見逃したって事か」


 愛は顔を顰めると

「え! 戻るんですか!? 戻るのも難しいのでは……」

 と呟いた。


 同じ角でも向かう方向が変われば景色が変わる上に、これまでどの道を選択しどの道を放置してきたかと考えるともっと時間がかかるだろう。


 更には倒したロボットの相手もまたする必要があるのだ。

 だが戻らなければ恐らく答えは分からないだろう。


 見過ごしという完璧なミスである。


 全員が顔を見合わせて苦い表情を浮かべた瞬間に芳乃は笑みを浮かべると

「問題ない。俺が暗号の手掛かりを手に入れてくる。場所は大体わかっている」

 というと

「皆はここで待機して今の内に水分補給と食事をしておいてくれ」

 と踵を返した。


「和己、行くぞ」


 和己は笑むと

「了解」

 と答え足を踏み出した。


 岡崎信二は驚きながら二人を見送った。

 

 愛も驚いて見送ったもののにっこり笑うと

「じゃあ、水分補給して食事をしましょ」

 と座った。


 遠野順一は彼女を一瞥したがフッと笑むと

「……信じる、か」

 と同じ様にペットボトルの水を飲み始めた。


 杉村翔は愛を見ると

「んー、上田さんと亜久里さんには何か秘密の関係が?」

 と目を細めて興味深そうに聞き、ペットボトルの水を飲んだ。


 春姫は彼女が警察とは別のところで芳乃と関係を持っていることを知っていたので敢えて沈黙を守った。


『亜久里警部補についての理由はお恥ずかしながら……その言えないんですけどぉ』

 彼女は偽名を見抜きそう言ったのだ。


 愛は全員の視線が集まる中で業と知らない振りをして食事を続けた。


 高校の頃だ。

 ネットゲームに嵌っていた。特にVRダンジョンゲームに嵌って家に帰ると父親が誕生日プレゼントで買ってくれたVRゴーグルをつけて遊んでいた。


 ダンジョンゲームは色々あった。

 海底お宝ダンジョン。

 遺跡ダンジョン。

 空の国のダンジョンもあった。


「その中で何時も同じ名前の人が出てきていたのよね。『モグリ』というアカウントネーム」


 VRダンジョン界隈はそれなりにゲーム人口もいたけれど大体上位に君臨する人は同じだった。

 モグリはその中でも『最恐のダンジョンマスター』と言われるほどのSSS級プレイヤーだった。


 誰でも慣れがある。

 同じ系統のゲームをすればレベルの上げ方や操作の仕方が勘で分かる。ダンジョンゲームでも敵のいる場所や伏兵の場所なども数を熟せばそれなりに分かってくるのだ。


「彼の場合は一度通ったダンジョンを全て掌握して自在に動き回れることなのよね」


 愛は心で呟いた。

 モグリというダンジョンマスターの凄いところは数を熟して勘所を捉えている上にどんな複雑なダンジョンもそれこそ百階層の塔型ダンジョンも一度通り抜ければ全てを覚えてしまっていることなのだ。


 モグリの頭の中には一度抜けたダンジョンの図面がほぼ正確に描かれているということである。

 だからこそダンジョン作成者から『最恐のダンジョンマスター』と言われていたのである。


「きっと暗号のある場所も見当がついているんだわ」


 自分では無理だと愛はフゥと息を吐き出した。

 少し時間が過ぎ去り、誰もが一息ついた頃に芳乃と和己が息を切らせながら姿を見せた。


 和己は笑いながら

「先の警察官と指示役が復活する前に戻ってきたぜ」

 と告げた。


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