お巡りさんダンジョン一階層 3
全員が答えを探そうと考えかけた瞬間に芳乃はあっさり
「とりあえず、一つずつ潰していくか」
と言い
「先ずは右からだな」
と右の道を進んだ。
岡崎信二は驚きながら
「え!? ええ??」
と他の面々を見た。
「い、良いんですか?」
愛は笑顔で
「亜久里刑事がそう言っているのなら良いと思うわ」
とさっぱりとした表情で足を進めた。
遠野順一もまた
「正解がわからないからな」
と続いた。
杉村翔に至っては
「はーい」
と進んだ。
和己も春姫も黙って殿を務めた。
進むごとにその足元が光る仕掛けになっており、真っ暗で何も見えないという状態でない。それは救いであった。
芳乃は足を止めると右手を横の伸ばして全員を制止した。
「敵だ」
闇の中からナイフを持った男が走って襲い掛かってきたのである。全員が銃を手にした。が、芳乃は警棒を手にすると
「撃つな!!」
と叫び男に向かって足を踏み出した。
和己は銃を撃てるように構えながらもジッと芳乃の行動を見た。「撃つな!」と言われても万一の危機の時には遠慮なくぶっ放す。
そう考えながらもその瞬間が来るまではピクリとも動かず芳乃の動きを見つめた。
「撃つな!」といった理由は存在する。そう判断したからである。
男から繰り出されたナイフの切っ先は芳乃の胸元へ走った。が、 芳乃は咄嗟にそれを避けると警棒を手首に叩き落とした。
「げっ!!」
手首に警棒が当たった瞬間に強い反動の衝撃が走り、警棒の方が反動で弾かれた。
ロボットである。
ただ、当たり判定があるのか。ロボットの手からナイフが弾かれて横手へと吹っ飛んだ。
かなりリアルである。
しかも、ロボットは急いでナイフを拾いに足を踏み出したのだ。
芳乃は舌打ちすると
「マジかよ!」
と呟き、ロボットが手にする前に足でナイフを蹴った。
「南部!!」
和己は声に弾かれると銃を腰のホルダーに直して警棒を手に素早く前へ行くとナイフを拾い
「くっそ高性能なロボットだな」
とナイフを奪われたと認識したロボットが殴り掛かってくるのを警棒で腕を叩いて避けると
「亜久里、このモブモンスターどうすんだ?」
と叫んだ。
ロボットは和己が避けたために壁をゴッと殴り、そこの壁がボコッと拳の形になった。
……。
……。
「おいおいおい、こりゃ当たったら骨折もんだぜ。ったく、鋼鉄の手で殴るなら威力は手加減しろ!」
マジやべぇ、と和己はぼやいた。
それに芳乃は
「全くだ」
と応えながらロボットが腕を引くのを見て咄嗟に掴むと懐に素早く入って背負い投げをかました。
男が背中から落ちると同時に芳乃が上から抑え込み
「強盗容疑で逮捕する」
と告げた。
瞬間に男はぴたりと動きを止めた。
天井から
「強盗の確保を確認しました」
と流れた。
「3分後のリスポーンまで行動を停止に入ります」
芳乃は苦く笑って
「3分でリスポーンかよ。先へ急ごう」
と動かなくなった男を放して立ち上がり先へと向かった。
が、10歩ほど行くと行き止まりになっており、全員が慌てて元来た分岐へと戻った。
背後から男が襲ってくる様子はなく先の分岐に戻り誰もが息を吐き出した。
芳乃は急にアハハと笑うと
「全く、経験値が増えない以外は正にゲームダンジョン仕様にしているんだな。しかもナイフで刺すとか鋼鉄パンチとか身体的ダメージがデカいときてる」
とぼやいた。




