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神託の聖女

「オサリバン先生、お邪魔いたします」


「ミミ様は、2回目ですね」


 王都に戻った僕は、宮殿にいる間、ミミをそばにおいて離さなくなった。


 学園から戻ると、サッと身繕いして、ミミを迎えに行き、皇族教育の間も、帝王学教育の間も、ずっと横に置いている。


 国家機密も何もあったもんじゃないから、大反対されるかと思いきや、先生の方が慣れたもんだった。


 どうやら姉も同じことをしていたらしい。



「カレナ様なんて、ミミ様をお膝に乗せて可愛がるのに夢中で、ミミ様のほうが真面目にお聞きくださったんですよ」


「何っ? 僕はまだまだだったようだね。お膝の上においで、ミミ」


「......」


 ミミは、ジト目を返しただけで僕の膝の上にくることはなかった。  

 

 それでも、退室はせず、少し離れたところでキルティングに勤しんでいたから、まあ、よしとした。



 王都の令嬢たちの間では、ハンカチに刺繍をさして、想い人に渡すのが流行っていた。

 僕もたくさん貰った。


 おかしな薬液が染み込んでいることもあるから、近衛に受け取らせて、処分してもらっている。


 本当は受け取り拒否したいところだが、皇族は人気商売なので、にこやかに受け取るようにと母から言われている。


 ミミが刺繍を刺してくれたら、喜んで使うんだけど、ミミはそういう匂わせのリスクが取れる立場ではない。


 その代わりに春・秋の肌寒い時に暖かく過ごせるように制服の内側に着るスリーピースベストの背中部分に極薄の綿を入れて、キルティングをしてくれる。


 針を持てるようになってから寒がりの姉さまのために作り始めたもので、既にかなりの腕前だ。


 僕は毎年大きくなるから毎年一着作ってくれる。


 冬用には毛糸でベストを編んでくれる。


 これも毎年一着で、どんどん大きくなる自分が少し申し訳なく思う。


 あっという間に1年が過ぎ、この上なく満足度の高い暮らしに慢心し始めたある日、学園で気にかかる質問を受けた。



「ねえねえ、イライジャ殿下ぁ。スタリトレーガルからの捕虜は、カレナ姫と一緒にバライカにいるの?」


「スタリトレーガル? 確かに姉上はバライカに嫁いだけど......」


 不意打ちに毛が逆立ったように感じるほど驚いたが、冷静を装って答えを避けた。



「神託では捕虜が助け出されて、追いかけたカレナ姫が返り討ちにあって死んじゃう頃合いなんだよね……」


「姉上が? 意味がわからないよ?」


 ミミが攫われて追いかけたのであれば、分からなくもない。


 この聖女は幼い頃に神託を授かって、これまでいくつかの災害や疫病を予知した実績がある。


 そして、その功績で神殿から聖女の称号を受けた貴人だ。


 神託に関して、ウソはついていないだろう。


 ミミが逃げるとは、聞き捨てならない。

 詳しく聞かなければ……

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