【番外編】二人の転生者、後編
「わたくしはDLCは知らないけれど、お爺様が連れてきたのはマーガレットだったの。ミランダミランとゲール家の『つなぎ』のイベントなのかしらね? ゲール夫人が本物のミランダミランはこの子ですって連れてきたんだけど、おばあさまが受け入れ拒否したの」
「ん? どうして?」
「黒髪で赤目の魔族だったからよ。エーガイア帝国は、スタリトレーガル王の子が魔族とのハーフだとは知らないことにします。こっちの子をミランダミラン姫としてお預かりしますって」
「魔族とのハーフだったら、ダメなの? 自分でいい子に育てればいいじゃない? それに作中では確かに王都にいたと思うけど」
わたくしの推測では、ゲーム中でも、現実でも、おばあさまは初手、ゲール夫人の申し出を断ったのだと思います。
違いが出たのは、ゲール夫人の滞在中で、牢に入れられていたか、神殿に受け渡されたミランダミラン姫とは違い、マーガレットは、わたくしや弟と共に育てられました。
その上、わたくしたちが溺愛していたことで、次男が攫われた時、マーガレットを帝室に預けていた方が安全だと判断してくれたのではないでしょうか?
祖父や父は知りませんが、祖母や母はゲール夫人が捕虜の母親だということを察していましたから。
「魔族は神殿に引き渡さないといけないからよ。ミランダミランを受け入れても留め置けないなら、いないのと同じじゃない? スタリトレーガル側が『この子がミランダミラン姫』ですって言った子を大事に育てた方がマシだわ。『騙した』よりも『騙された』の方が世論が味方につきやすいから」
「なるほど…… 魔族は神殿に引き渡さないといけないって、何?」
「異端審問官。会ったことないの?」
ここからが聖女を取り込む正念場ですわ。
「え? 何? そんなのあるの?」
「この世界には数百年に一度、聖女と魔女が現れるって話、神殿で教わった?」
「うん。魔女っていうか、悪役令嬢のことかなって思って、最初の地方巡業でメラニー・ドリグラーに会いに行ったんだけど、転生者じゃないみたいだった」
「危なかったわ。あなたが神殿に悪役令嬢はメラニーだと言っていたら、彼女、きっと処刑されていたわ」
最初は聖女と敵対する人物を捕まえて処刑していたのかもしれませんが、聖女がいない時にも魔女狩りは続き、今では神殿が政敵を排除するために都合の良い名目となっています。
「処刑? それはないでしょ、神殿だよ? 信じられない」
「神殿に都合が悪い聖女も排除された形跡があるの。だからわたくし、あなたのことを心配しているのよ」
「ウソ!」
「あと1時間あるから、王族の資料室で歴代の記録を見せてあげるわ。興味ある?」
「ある!!」
***
「これが神殿が公式に処刑した魔女と魔女の仲間のリストよ。これがわたくしのお爺様のお兄様なの」
「え? 皇族も処刑されるの?」
「その当時は小国の王子だったのよ。大々的に神殿批判をしたら、こうなるの。こっちの冊子の付箋のついている部分が『堕ちた聖女』よ」
お爺様のお兄さんも神殿の餌食となりました。
お爺様は次男でのんびり育てられたので、おバカです。
おバカだからこそ、シンプルに怒り狂って、西方のジリルカンと結託して打倒神殿を掲げたのです。
「え? 第18巻? そんなに処刑された人がいるの?」
「ええ。やりたい放題よ。心配になるでしょう? だから、あなたが望むなら、ウチで保護するわ。あ、ウチって、バライカのことよ。ドラゴン信仰が強くて、ガチコイ教は入ってこれないから、身分を変えて市井にまぎれれば安全だと思うわ」
同じ転生者の聖女を保護したいという気持ちももちろんあります。
でも、実際は、これも神殿の力を削ぐための政略でもあります。
神殿が強いのは本物の『聖女』の存在があるからです。
聖女が帝国側に転じれば、神殿は『神』という後ろ盾をなくし、大打撃を受けるでしょう。
わたくし、転生者というより、この世界の住人なのです。
「うん。頼む。お願いします」
「パーティーはどうする?」
「怖くなったから、出たくない」
ミッション、成功。
でしょうか?




