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ミミの失踪

 高等部の学園生活も終わりに差しかかった頃、ミミの乳母とその夫の訃報が届いた。


 スタリトレーガルは、内戦15年目に入り、正妃、側妃の両陣営が手段を選ばなくなっていた。


 敗戦調停中に側妃派が王と王女もろとも帝国軍の居留地を爆撃した後、王は見つかっていない。


 王女については、帝国側から生存通知を出して、戦争捕虜になっている。


 にもかかわらず、側室の長男が王位を継いだ。



 これが内戦のきっかけだった。


 王位継承順位第1位の姫が捕虜として帝国に差し出されたのに、代わりの王なんて認められないという考えの貴族と、帝国の属国化を望む穏健派が正妃派についた。


 敗戦調停の続きを正当な形で完了すれば、姫はいずれ、地方総括になれる可能性が高いのだ。


 ミミの乳母の家は、正妃派だった。



 一方、主権を帝国に渡したくない貴族は側室派となった。



 揉めに揉めて、スタリトレーガルから帝国へ最初の使者が送られてきたのは、ミミが来てから5年後だった。


 第2王子を送るから、地方領主の教育を施して、他の国と同じく地方自治権を認めてくれという内容だった。


 その5年間で側室派が2つに割れて、側室派の中の穏健派閥が最大勢力になっていたのだ。



 ただし、国としてまとまった意見ではないことが見え見えだったから、帝国はこれを無視した。


 その後、第1王子が暗殺され、第2王子が王位に就いた。


 第2王子を地方領主にしようとした第3派閥にとって、これは大きな裏切りだった。


 第3派閥は正妃派に流れた。


 側妃派は数が増えた正妃派の力を削ぐため、正妃派の筆頭だった乳母の夫が暗殺され、事態は混迷を極めている。


 正直に言うと、他国の政争なんて心底どうでもいいと思っていたが、ミミが相当憔悴していたので心が痛くなった。



「姉さまもわたくしも心を尽くして亡命するように何度もお手紙を出しましたが、残念ながらご決断いただけませんでした」


 神託で死ぬことがわかっていたのに死を回避しようとしないなんて、理解できない。




「息子と娘は逃げ延びたのだろう? 助けることができた人もいるじゃないか」


 そんなの励ましにならないとも思ったが、僕にできるのは、ミミの側でよしよししてあげる事ぐらいだった。


 乳母の息子と娘は、カルーリア領主の元に身を寄せたと聞く。


 娘は生まれつき身体が弱いらしく、乳母と一緒にミミに会いに来たことがない。


 無事に国境を越えられて良かった。



 **



「イライジャ殿下、ジェームズ・カルーリアが学園を休んでる理由、知ってる?」


「なぜ僕が知っていると思うんだい?」


 聖女がわざわざ僕のところまで来て、カルーリアの名前を出した時、嫌な予感がして、急いで人払いをした。



「ミランダミラン救出の際、カリオス・ゲールの手引きをしたのが、カルーリアだからだよ」


「え?」


 僕は大急ぎで宮殿に帰った。




「ミミ、ミミは?」


「カリナ様の遣いと共にお庭に出られました」


 大急ぎで探したが、ミミは何処にもいなかった。


 遣いの特徴は過去に姉を訪ねてきた黄緑色の髪の美男子とミミと同じミルクティー色の髪に水色の瞳だったとのこと。


 それは、ミミの息子とジェームズ・カルーリアなんじゃないか!?


 僕の鬼の形相に近衛たちが真っ青になって、両親への報告に走った。


 ミミ、どうして?


 僕と一緒にいたいと言うのは、ウソだったの?


 乳母の息子について行ったの?


 もしくは巧みに誘い出された?


 カルーリアは、反逆したのか?


 僕は錯乱状態で神殿まで馬を走らせた。


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