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正妃派と側妃派

「殿下、ゲール家がスタリトレーガル側についたり、縁を結んだりすることはないでしょう」


「なんでそう思うの?」


 お茶を飲みながらミミは父が教えてくれないゲール家の秘密について触れた。



「クロイスはスタリトレーガルの側妃派に拉致されたことがあるのです」


「え?」


 予想外の内容だった。



「わたくしが4才の時、ママはスタリトレーガルに帰りましたよね? あれは、次男が攫われたからなのです」


「それは…… 見つかってよかった、な。でもなんで側妃派がゲール家の次男を攫ったんだ? 婚約を解消した腹いせ?」


 ミミは正妃の娘で、ちょうど娘のマーガレットを生んだばかりのゲール夫人がミミの乳母になった。


 それでゲール家は正妃派だと思われていたが、乳母の娘マーガレットは、側妃の第1子と婚約した。


 政治学の講師の話によると、ゲール家は正妃派と側妃派のバランスをとるためにそのようにしたのだろうと言っていた。


 乳母は娘マーガレットを側妃の息子の嫁に出し、正妃の娘ミランダミラン姫はゲール家の嫁候補として、乳母として自分で育てる、みたいな。


 しかし、祖父の軍行の後、スタリトレーガルの状況は一転した。


 側妃派の爆撃で、王は死亡し、正妃の娘は捕虜として帝国に捕らえられた。

 そして乳母は、自分の娘と側妃の王子の婚約を一方的に解消した。



「腹いせというよりは、マーガレットとの婚約を継続させるためのようです」


「婚家だぞ? 次男を攫って脅すようなやり方で、末永く付き合えるわけないだろう? おかしいんじゃないか?」


「自国の王を爆撃するような人々ですから、わたくしに理解できるとも、理解しようとも思えません」


 王は先に生まれた側妃の息子たちではなく、後に生まれた正妃の娘、つまりミミを第1継承者に据えたまま動かさなかったから、わが子を王にしたい側妃派は強硬手段に出たのだろう。


 スタリトレーガル王は、ミミにとっては父親だ。

 幼い頃に帝国に連れてこられたから、ミリも覚えていないかもしれないが、それでも側妃派は親の仇というわけだ。



「なるほど、乳母が娘をスタリトレーガル王家に嫁がせるぐらいなら離反すると言っているのも納得だな」


「それ以上の話は、陛下の信頼を得て、陛下の口から聞いてください。わたくしでは伝え方を間違えてしまいそうです」


 ミミと側妃の息子との婚約はありえない。

 僕にはその情報だけで十分だと思った。


 だから、それ以上の情報を父上に聞きに行くことはなかった。


 こういうところが「バカ」だったんだな。



「ねぇ。腹ごなしに散歩する?」


「ええ。寒いですから、外套をお召しになって」


「うん。着せてくれる?」


「ふふ。甘えんぼさんですね」


 僕たちは王宮の裏庭を散歩した。


 ミミが歩き回れるのは、王族の居住区とこの小さな裏庭だけだ。


 もう少し広くしたいが、使用人を増やすと、情報漏洩のリスクが高まる。


 そう自分に言い訳して、ミミをいつまでも手元に閉じ込めておきたい自分を見て見ぬふりをした。



 ***



「雪が降りそうですね?」


「ああ、もう3月だというのに冷えるな」


「少し座りたいですけど、お尻が冷えそうだからやめておきましょうか」


「ん? 僕のお膝の上に座ればお尻が冷えなくて済むよ?」


「ふっ」


 僕は本気だったのに軽くあしらわれてしまった。


 ミミはこういうのをいなすのがうまい。


 もどかしいが、僕ももう少しミミと外の空気を満喫したかったので、厚手のブランケットを持ってきてもらって、それを敷いてベンチで語らうことにした。


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