幼名、ミミ
僕はその子のことを妹だと思っていた。
幼名ミミ。
ミルクティー色のウェーブがかった柔らかな髪に涼し気な水色の瞳の最高に愛らしい子だ。
8才年上の姉が猛烈に可愛がっていて、僕より1つ年下だ。
姉がお嫁に行くまで姉の隣の部屋で暮らしていた。
ミミは、僕が物心ついた時には既に僕たち皇族と共に暮らしていた。
食事も僕たちと一緒に食べるほど家族に溶け込んでいたんだから自分の妹だと勘違いしてもおかしくないだろう?
姉は学園から帰ると僕たちのところにすっ飛んできて、僕にハグして額にチュッと挨拶したあとは、ミミを抱っこして、ほっぺにチュッチュしながら、自室へ連れ帰った。
それも毎日だ。
姉は学園に友達がいないのじゃないかと心配したりもした。
ミミも「姉さまのお迎え」が来たら、僕のほっぺにチュッとお別れの挨拶をして姉さまに向かって両手を挙げて、抱っこされたがった。
僕と遊び続けたいとごねたことはなかったと思う。
「一人ぼっちにしてごめんね」
ミミはしばしのお別れにも、そんな言葉を添えることがあった。
幼い頃から僕を仲間外れにしてしまうことに気を配ることのできる優しい子だった。
僕が最初におかしいと感じたのは、ミミが帝立学園の初等科に入学しなかった時だった。