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中編2

「ええい! シシラ・アリゲイタ!」


「学園長、お待ちを!」


「どういうことかご説明いただきたい!」



学園長がシシラに向かって走り出そうとしたが、王太子ユームの側近がそれを阻んだ。



「そこをどけ! あの娘の魔法を止めねばならんのだ!」


「何故です?」


「何故って、このままでは、その……」


「何か都合が悪いことでも? この後の続きを知っているでしょうからね?」


「う……それは……!」


「学園長! 王太子である私にも説明してくれ!」



学園長が無理矢理でも二人を退けて進もうと思った直後、未だに混乱する王太子が説明を求めてくる。ちょうどその時に、映像から新たな爆弾発言が飛んだ。



『貴様の両親の公爵夫妻も容認していることだろう! 親の意向すら無視するというのか!?』


『そう言われましても……』


『妹君、聖女アビスの分まで課題をなし、試験結果も貴様が完璧に仕上げる! それが私と貴様の両親で決めたこと! もう忘れたとは本当に無能だな!』


「「「「「なんだってーッッ!!??」」」」」



殆どの生徒と教師が学園長と聖女アビスに目線を移した。その目は疑惑に満ちて、中には怒りを顔に見せる者もいるしまつ。すでに映像が事実だと確信している考え方をしているものも多い。



「どういうことなんだアビス! 君の両親は何を考えているんだ!?」


「ゆ、ユーム様、落ち着いてよ!」


「何を言ってるんだ! 映像で学園長が、」



疑惑の目を向けられる学園長とアビスは慌てふためいていた。どう対応すればいいか分からず、オロオロしている。何も知らなかった王太子にすら疑われてしまっているのだから。



『アビス嬢は聖女とはいえ学力がない! それを隠すためにも貴様には聖女の分まで課題をクリアし、試験結果を完璧に誤魔化さなければならないくらい分かるだろ!』



「学園長も何をしているんだ!? シシラのもとへ行く前に説明しろ! これは不正そのものではないのか!?」


「で、殿下……」



『すでに貴様の両親からたんまり賄賂をもらっているんだ! アビス嬢の成績が落ちてると言われてはうるさいんだぞ! どうしてくれるんだ!』



「はぁっ!? 賄賂だって!?」


「こ、これは、その……!」



学園長もアビスもシシラを止めたいと思うが、混乱する王太子に問い詰められ、その側近二人に行く手を阻まれてしまう。すぐにでもシシラを止めたいのに止めることはできない。



『もし王家にこれまでの試験結果の取替の事がバレたらどうするのだ!? ただでさえアビス嬢と堂々と浮気する王太子が在籍中だというのに!』



「シシラ、君は……」


「シュバリア様、ご安心ください。今日ここで学園長とアビスを暴きます。シュバリア様にご迷惑をかけないをかけたくありませんから」


「まさか、俺の立場を守るためにこの魔法を?」


「私が追放されるのは歓迎できますが、私を庇ってシュバリア様まで道連れにするわけにはいきません」


「追放されるのは歓迎だって? 君はそこまで……それなら……」


「シュバリア様?」



シュバリアはシシラの『追放は歓迎』という言葉を聞いて考え込む。シシラとよく話しているため彼女が不遇な扱いを受けていることは分かっていた。だからこそ、彼女が本気で家や祖国に未練がなければ……シュバリアはとある提案を持ちかけるつもりだった。そして、今がその時だ。



「シシラ、この件が終わった後でいいんだ」


「え?」


「もし君が本気で家や祖国に未練がなければ……」


「シシラ・アリゲイタぁ!」


シュバリアが大事なことを伝えようとしたところで、現実の学園長が迫ってきていた。



「! あの学園長、遂に来たか」


「思ったよりも来るのが遅かったみたいですね」



学園長の顔は怒りに満ちていた。シシラへの怒りと映像による自分の立場の危機感と羞恥によるものだろう。だからこそ、すでになりふり構わないようだった。学園長はシシラに向かって魔法の杖を向けた。



「【ストーン】!」


「「っ!?」」



学園長の持つ杖から石礫が形成されてシシラに向けて放たれた。シュバリアは、とっさにシシラを庇うように身構えた。ただ、シシラの方は学園長の行動を読んでいたようで、魔法の障壁を形成した。



「【ウォール】」


「光の壁だと!?」



シシラの形成した光魔法の障壁は石礫を通さない。当たってもヒビも入らないほど頑丈なものだった。それでいて金色に光り輝いて美しい壁。周囲の生徒たちはそう思った。



「シシラ……助かったよ、ありがとう。すごい魔法だな」


「いえいえ、大したものではありません。シュバリア様こそ庇ってくださってありがとうございます」



大したものではないと言うシシラだったが、光の障壁からは強いオーラを感じさせるし、学園長の放った石礫は見た目よりも威力はあるはずだったのだから防げたシシラの魔法はすごいはずなのだ。



「ば、馬鹿な……私の魔法を防いだだと!? いや、それよりもシシラ・アリゲイタよ! 今すぐに映像を消せ! さもなくば、」


「学園長。私、シシラ・アリゲイタは学園からの追放処分を受け入れ今すぐ去ります。映像に関しては私が『部屋から出るシーン』で終わりますのでご安心ください」


「……な、何!?」


「シシラ……」



シシラの言い分を今までろくに聞いてこなかった学園長でも嫌でも耳に入ったシシラの言葉はあまりにも許せないものだった。追放処分を受け入れるのはいいが、忌まわしい映像はもう少し続くというのだから。今すぐに止めて映像は嘘だと釈明するならまだしも、今いなくなるのは学園長にとって不都合極まりない。



「ふざけるな! こんなことをしておいて逃がすと思うか! シシラ・アリゲイタよ! 学園追放のことだって許してやっても、」


「そんなことよりもガニバケ学園長。今のはどういうつもりだ?」



学園長がシシラに『学園追放を取り消す』と口にする直前、シュバリアが怒りを滲ませながら声を掛ける。



「さきの魔法は教師が生徒にぶつけていいものではない。下手をすれば大怪我していたかもしれないのに、学園長ともあろうものが何を考えているんだ!」


「し、仕方あるまい! シシラ・アリゲイタにはあの映像を止めてもらわなくてはならないんだ! こんな蛮行を続けさせるわけにはいかん!」


「蛮行というのはいきなり魔法をぶつけることではないのか!」


「うるさい! シシラ・アリゲイタは聖女の姉なんだ! あれくらい防いだではないか!」



シュバリアと学園長が言い争いを始めていると、聖女のアビスと王太子ユームが側近とともにシシラのもとに走ってきた。


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