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孤城のアトリエ  作者: 伊織
第一章:始まりの魔女
9/109

第八話:有名人


この作品を読んでいただきありがとうございます。

10万字を越え、記念にご要望のあったキャラクターの自己紹介も兼ねた番外編を書くことを予定しています。今の所、他サイトで奏人の名前は上がっております。

ぜひ、活動報告や作品感想にてキャラクターをリクエストいただけると嬉しいです!

最新話まで読んでいないという方でも大丈夫です!!感想とか書くの面倒だなって思うかもしれませんが、寛大な心でよろしくお願いします!!



「魔女様……おはようございます……」


 すぐ横で寝ていた奏人が大きなあくびをしながら体を起こす。少女は1時間前からすでに目を覚ましており、やっと起きたかと少し呆れを込めて「おはよ」と軽く返した。まだ午前7時の出来事である。


「魔女、狩り?」


 少女の手元にあるスマートフォンに視線を向ける。熱心に見ていた動画のタイトルに『魔女狩り』と書かれており、思わず質問が漏れた。


「昨日話したでしょ。反魔女感情を持つ人たちがやったんだよ」


 少女は画面を見つめたまま、淡々と答える。

 反魔女を掲げる人間は魔女狩りやテロ行為を行うことがある。奏人はその話を思い出し、「あぁ」と頷いて手を打った。


「この魔女、見たことない?」

 少女はスマホの画面を奏人に向ける。そこに映っていたのは黒いドレスを纏った若い魔女の姿だ。しかし、奏人は少女以外の魔女を見たことがないので、首をかしげるばかりだった。


「魔女には2通りいるんだよ。息を潜めて天命を執行する者と、魔女という地位を活かして顔を売る者。芸能界や政治に多いね。でも、魔女を売りにするってことは、こうして狙われるリスクも高い」


「この魔女、確か今話題の新人女優じゃなかった?」


 少女がぽつりと言う。しかし奏人にとって、つい一昨日までスラムでゴキブリを追いかけ回していた生活に“新人女優”など無縁だった。少女も芸能界に興味があるわけではなく、教徒の噂話で耳にしただけ。そもそもスマートフォンを手に入れる(パクった)まで動画すら見たことがなかったのだから、二人とも詳しくはない。


「魔女様、昨日騒ぎになってましたけど……魔女様も有名人なんですか?」


 奏人は昨日の店員や教徒たちの反応を思い出しながら尋ねた。


「私を信仰するのは国内最大の宗教団体、フクロウっていうんだって。教徒の人口が桁違いに多いから、顔は割れてるらしい」


 どこか他人事のような口調に、奏人は違和感を覚える。だが昨日の二の舞にならないよう、質問を飲み込み配慮した。少女も浮かない顔をしており、その判断は正しかったようだ。


「……買い物行こうか」


 気持ちを切り替えるようにそう言えば、少女は立ち上がり服を着替える。軽くストレッチをしてから、昨日と同じように窓から降り、コッソリと裏門から屋敷を抜け出した。



***


「なんだか……」



 少女の後ろを歩く奏人。昨日モックに向かった大通りを通り過ぎ、左に曲がった先にあったのは高級そうな店だった。重厚な扉と華やかな看板に、奏人は思わず立ち止まる。入るのを躊躇するほどの威圧感。だが、少女はためらいなく中へ入っていった。


「魔女様!!よくぞいらっしゃいました!!」


 入店すると同時に、絵に描いたようにペコペコと頭を下げる店員が迎える。


「そこからそこまで。似合いそうなの全部」


 少女は店内に並ぶ服を端から端まで指さす。店員は目を輝かせて「かしこまりました!」と返事し、奏人を試着室へ連れて行った。サイズの合う服を次々と着せられ、奏人はヘトヘトになった。


「それ、似合ってるね」


 紺色のシャツを着て試着室から出ると、少女がふわりと微笑んで近づく。奏人は服の手触りや漂う香水の香りから、高額なものだと察し、内心怯えていた。


「こちら、お品物になります。量が多いので後日お届けいたしましょうか?」


 店員は山積みの手提げ袋を見ながら提案する。明らかに二人で持ちきれない量に、奏人は頭を抱えた。そのとき——


「それには及ばない。我々が魔女様のお荷物をお運びします」


 いつの間にか店内に現れた数人の教徒が、深々と頭を下げていた。


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