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孤城のアトリエ  作者: 伊織
第一章:始まりの魔女
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第十七話:知り合い

面白いと思っていただければ、ブクマなど何かしらアクションいただけるとモチベになります。キャラなどについての質問は常に受け付け中なので、ネタバレにならない範囲で「前書き・後書き」の方で書かせていただきます。



 直哉はどこか敬虔そうな雰囲気を纏い、まるで創造神に祈る修道士のように見えた。しかし、「等しく人殺し」などという言葉を口にする彼を見て、奏人は心の奥でざわりとしたものを感じた。

(本当にこの人は敬虔な魔女なんでしょうか?それとも――)

 スラムで生きてきた奏人には、直哉の価値観が一番しっくり来る気がした。


 ひよりは直哉の言葉を理解しているのか、それとも理解したくないのか、何も言い返さず俯いたままだった。


「俺と直哉は家同士が知り合いだった訳だが、お前らはどこで知り合ったんだ?」


 何か、何か話題を変えなければ。ひよりが今にも泣きそうで、奏人は焦りながらも言葉が出てこなかった。しかし先に菜摘が口を開く。


「え、だから俺の妹…」


「開闢の魔女から逃げ出した先で、坊さんの家の人に保護されたの」


 淡々と遮るひよりに、菜摘と奏人は同時に心の中で呟いた。

(…やっぱり妹って嘘じゃん)


「もう妹で良くない?お風呂も一緒に入った仲だよね?」


 直哉の軽い口調に、場の空気が一気に凍りついた。

 奏人も菜摘も、完全に引き気味の表情で固まる。

 (この話題…やっぱり違ったかもしれないです)

 奏人は頭を抱えそうになった。


「ロリコンだよ。使用人の人にすごい止められてた」


「当時、坊さん24歳で私がまだ6歳のとき」


 その言葉に、二人は頭の中が真っ白になった。6歳児と24歳の他人が風呂に…その衝撃で思考が停止する。


「えっ、というか、魔女様って今何歳ですか?」


 なんとか口を動かした奏人の第一声は、場違いなほど素直だった。


「今、15か16くらい」


「16歳だね」


 ひよりが曖昧に呟くのを、直哉がすかさず訂正する。

 (なるほど…幼いのも無理はないんですね)

 奏人は納得した。


「僕のほうが2つか3つ上ですね」


 十和子が19歳で、自分はその一つ下だったはずだ、とぼんやり呟く奏人。


「いいね羨ましい。俺らもう30代後半が見え始めてるオッサンだからね…菜摘今いくつだっけ?」


「オッサンはお前だけだ。俺は24」


「わお、ピッタリ10歳差」


 直哉が軽く笑うが、その場にいる全員が微妙な空気を感じ取っていた。


「警察、呼びましょうか…」


「これは警察沙汰だろ。いくら癒しの魔女でも許されん」


 菜摘と奏人がスマホに手を伸ばすが、直哉は慌てずに言い放つ。


「考え直せ。俺が捕まったら第一正教会が止まるぞ?いいのか!?何千、何万もの人間の命が脅かされるんだ。困るからね!?」


 その開き直りに二人はスマホをそっと置いた。

(人質の数が多すぎる…)


「それで、なんで奏人は坊さんと…菜摘さん?を連れてきたの」


 ひよりが本題を急かすように言う。

(そうだ、なんて話そう…)


「公園でデスゲームしてたから俺が連れてきた」


 すると直哉の突飛な言葉に、ひよりの目がきらりと光った。


「デスゲームとは?」


 聞き慣れない単語に興味津々なひより。キラキラとした瞳で菜摘と奏人を見つめる。

 (やっぱりこの人は16歳だ…)

二人は心の中で溜息をつく。


「えっと。殺s…」


「喧嘩だ。今ヤンキーもののアニメとか流行ってるしな」


 奏人が正直に言いかけた瞬間、菜摘が冷静に言葉を被せる。

 (この人、さらっと嘘つきますね…)

奏人は目を泳がせた。


「いいな。喧嘩」


「私もやってみたい」


 ひよりの無邪気な発言に、場の男性陣は顔をほころばせた。

(さすが年頃…キラキラしてる)

 もちろん「喧嘩」という物騒な単語を除けば、だが。


「ひなちーと俺なら五分じゃない?」


 直哉が空気を読まずに話題を広げる。奏人と菜摘は無言で「やめろ」と視線を送ったが、効果はない。


「塩屋さん羨ましいです…僕も魔法が使えればなぁ〜。魔女様は魔女ですし、魔女同士じゃないと喧嘩も相手にならないですよね〜」


 奏人がブスッとした顔で呟く。


「直哉、お前誰にも勝てないだろ。奏人っていったか。魔女だからって全員が全員強いわけじゃない。このヤブ医者は治癒力に魔法を全振りしてるから身体能力は並以下だぞ」

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