表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: 斎木リコ
5/7

一緒に筋トレ

お題「筋肉」

 同居の相棒、サッドの最近の趣味は筋トレだ。それも本格的なものではなく、動画サイトにアップされているお手軽なやつ。


 隙間時間に、好きな時にやれるのがいいんだって。あんなに筋肉ダルマ……失礼、引き締まった体なのに、まだ鍛えるんだ。


「いつ何時、危険な事が起こるかわからないからね。常に備えておかないと」


 この平和呆け日本にいて、早々危険な事はないと思うんだけどなあ。


 まあ、深夜に散歩をしていたら、全裸のイケメン拾っちゃう事は、あったけど。


 しかもそのイケメン、異世界で邪神を倒した重要人物だっていうから驚きだ。色々信じがたい事もあったけど、まあ信じる以外にない事もあったから。


 そのサッド、今では我が家で一緒に生活してる。神様の特典か何かで、ばっちり戸籍もあるっていうね。


 しかも、彼名義の銀行口座まであったよ。そこに入ってる金額見たら……多分、一生であんなにゼロが並んだ通帳、見る機会はもうないと思う。


 これも、神様の特典……というか、詫びだってさ。何せ自分が管理している世界の邪神を倒して世界を救ってもらったのに、人間の裏切りでサッドは死ぬ羽目になったんだ。


 いや、実際には死ぬ直前に神様によって日本に飛ばされたんだけど。


 彼が全裸だった理由は、その時装備していたものは全て、神様由来のものだったからだろうって話。下着も神様由来なのか……何か凄い。


 そんな彼、サッドは今では町内の便利屋になっている。この辺りもお年寄りが増えたから、細々した事に人手が欲しいらしい。


 チェーンの便利屋はあるんだけど、うちのサッドの方が仕事が丁寧だっていって、ご指名してくれるんだ。


 まあ、大半はじいちゃんばあちゃんの茶飲み話のお供だけど。


「この間は、シショーに褒められたんだ」

「そうか、良かったね」


 サッドが「シショー」と呼んでいるのは、引退した大工のはるあきさん。春なんだか秋なんだかはっきりしねえ名前だよな、と自分で笑い話にしている人。


 彼の所で、鉋がけを習っているらしい。うちのまな板を甦らせる為に。


「もうじき、シショーのところで綺麗に生まれ変わらせるよ」

「楽しみに待ってる」


 まな板は、木に限るからな。それも包丁の後とかが黒ずんで怖いから、まな板の上から百均のプラスチックまな板を置いて使ってる。


 サッドが鉋を掛けてくれれば、また安心して使えるってものだ。




 夕飯が終わり、後片付けを二人でした後、リビングの大きなテレビで動画を見る。サッドがはまっている、ちょい筋トレだ。


 最初にストレッチをして、各部署を伸ばす。それから腹筋だったり太股だったりの筋トレをする。


 また動画配信者の喋りが軽妙で、見ているだけでも楽しいものだ。


「れいも一緒にどうだ?」

「俺はいいや」


 運動不足解消も兼ねて、深夜の散歩をしていたんだけどね。今は毎朝サッドに起こされて、早朝散歩をしている。


 おかげでご近所さんとも大分打ち解けたよ。引っ越しの挨拶をして以来、ろくに外に出ない生活していたもんなあ。


「ほら、これなら簡単だから、れいも出来るよ」

「いや、だから――」

「一緒にやったら、楽しいと思うんだ」


 ……最近、サッドは悪い癖を覚えた。こうして心細そうな様子を見せると、俺が折れるって思ってる。


 でも、俺だって毎回毎回折れる訳じゃないんだぞ? たまにはびしっとだな。



 結果、腹筋が筋肉痛になりました……痛い……


「筋肉は、使わないと萎えるんだ。これからは、少しずつやっていこう」


 イケメンの爽やかな笑顔で言われても、痛いものは痛いんだよ……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ