土地にも思うところがあるんだと
どうやら彼は土地の権化らしい。
は?
もう少し付け加えると、あの神社を管理している土地の権利者らしい。
俺が土地神みたいなもん?って聞いたらまあまあまあまあ、と渋々そんな感じです、と答えたから、そんな感じの存在らしい。
元々そこは人の住まう土地ではなかった様だ。神聖な場所として、新鮮な空気。淀むことのないそれこそ聖地と呼ばれる自然の住まう場所だったそうな。
しかし、一人の若者が踏み入ったことで状況は変わった。
助けを求めたのだと言う。村から追い出されどうしてもいく場所がないからと。
あの時の土地神は優しかったと自画自賛しながら、受け入れることにした様だ。
最初はそれにすこぶる感謝し、土地や自然をとても大切に丁寧に扱った。
あの者は純粋で清らかだったと言う。
しかしそんな平和な毎日に釘を刺した者たちがいた。
彼を追い出した村人だった。
その村人達は断りも入れず、ずけずけと土地に入り、彼を褒めた。
その場所を見つけた事、そして、私達を招き入れた事。
否、全く招き入れるつもりはなかった。なんせ勝手に入ってきたから。
仕方ない。まあ、彼の知り合いだし。
寛容だった私が馬鹿だったと土地神は後から語った。
ここは私の支配にある。彼は感謝し、私はその喜びを糧に土地も食糧も全てを与えていた。
しかし奴らは願うばかりだ。自分達は何もせず、私の土地を、食料を寝床を欲するばかり。
感謝もなければいつしか当然の事の様になった。
土地神は呆れて彼以外にはモノを与えることはしなくなった。
そしたら彼らはイライラを募らせ、苦しむ様になった。
あるのが当たり前だった、何もせずとも生活できるのが当たり前だった。その当たり前がなくなったからだ。
そして、彼をストレスの捌け口にした。
土地神は彼を守るために彼を連れ去った。そして、その場から一度離れた。
すると彼らは土地神を石に見立てて祈った。
縛りつけたのだ。
思いは重く、彼らの願いという名の願望は土地神を石の上に紐づけた。
それはそれは苦しかった。毎日の様に縋り、何もせず頭を垂れて、欲を出す。
反応がなければ、苦しみ、悲しみ…。
ずっとずっとずっと願い続ける。
ふざけるなという話だ。
土地神は我慢した。我慢すれば施しが無ければ彼らは自分の足で立ち上がる時が来るだろうと思ったからだ。
しかし、見込みが甘かった。
現代ですら石に縋る様にずっとその様な歴史が繰り返されている。
先祖が可能性を見出した様に、また願う。
そして今パワースポットと言われる様になった。石に願えば物が叶う。
もう一度言う。
「ふざけるなっ!更になぁ!パワースポットとして力が貰えるなんて気づいたのはあの女がここに鉄の棒をブッ刺してからだ!」
あの女とは一さんのことか。
プンスカ怒る土地神の意見もわかった。
でも縋る亡霊達はあの棒を望んでる。
「なあ」
「何だ?」
「この亡霊ってさぁ、ずっと石に願い続けてた奴?」
「違う!あいつらはまだ石の近くで願い続けてるだろ。たわけ」
「じゃあこいつらは何なの?」
「自然。土地。私を形成する一部達。はたまた、迷い込んだ霊。土地に由来する霊。縁のある霊。それこそ感謝してくれた青年だ」
「ふぅん。じゃあ土地には迷惑かけてないんだ」
「寧ろ、居てくれるからこそ私がいるというもの!」
「そいつらは棒に縋ってる…。棒の力を必要としてるんじゃないの?だったらやっぱ棒を刺したほうが」
「そしたら人間がまた増えるだろう!パワーが増したとかほざいてよぉ!全く、大変なんだよ!こっちも!感情を生身で受け取るってのはさぁ!」
「真中、お察しします。でも、感謝する人も少なからずいるだろ?」
「まあな…」
「よし!じゃあ刺してくる!」
「いかせん!」
「何でだよっ!」
「人間が嫌いだからだっ!」
「分からずやっ!こうなったら強行突破だ!」
「いかせん!」
俺が土地神の逆手を取り逃げようとすれば瞬間移動の様にすぐ目の前に現れる。
また逆手を取れば目の前、目の前…目の前ッ!
「ハエかっ!」
「何という愚劣なツッコミ!酷い!」
殴ってこないのは良いけど…これじゃ元に戻れないぞ。どーする…。
あっ。そうだ。思い出した。