気付かない
それでーーー
これはどんな状況だ?
鉄の棒を見て、彼女を見て地団駄を踏む亡霊達。
ただ別に危害を加えるつもりはない様だ。亡霊達は。
「はいはい。この鉄棒は俺が預かりますよっと」
「タスケテ」
「助けるから少し離れてくれ」
「ホントニ…?」
「ああ。あそこまで戻ってたら鉄の棒を刺してやるよ。この棒で最後だからな」
「ワカッタ…セナカニノル」
「なんで?えっ。重っ。重力が何倍よ?」
亡霊がマジで背中に乗ってきた。
俺の背中はおじいちゃんくらい曲がっているだろう。
「ワレハシンジナイ…」
「…え?」
驚いたのは俺ではなく彼女だった。
俺は驚くよりも先に痛みを感じた。
そして、気づけば天を舞い、天を仰いでいる。
「…な、なんだ?」
イケボが聞こえたと思えば、次の瞬間には腹部に衝撃。
腹殴られたのか。
俺はその勢いで後方に吹っ飛ばされ、地面に背中から落ちたのだ。
空の後に入った視界は俺を覗き込む毛深すぎる猿だった。
ご立腹の顔に血涙。
腹立たし過ぎて悲しいのかな?
「オマエガスクウナドシンジナイッ!!アリエナイッ!!」
猿は俺の上に馬乗りになり、幾度も拳を顔面に振るった。
いてっ。いてっ。いてっ。
最初の一撃にはびっくりしたが、二度三度と放つごとに威力は下がっていく。
こいつなんなんだ?霊か?それともこの間のオーラと同じか?
いや、だとしたらなんでこいつは、こんなにも鮮明に形があるんだ。
分からない事だらけだが取り敢えず分かるのはこいつが人間不信って事と、気性が荒いってことくらいか。
「何でそうなっちゃったんだろうなぁ…。あ!そこのギャルさん!さっさと行きな?」
「えっ、えっ?アタシ?」
「こんなところにギャルは君しか居ないだろ?」
取り敢えず弱くなったパンチを受け止め、ヨイショと猿を持ち上げ、何もなかったように彼女と会話を始める。
亡霊も猿も彼女にはもう興味なさそうだ。
「あ、あ…」
何か言いたそうだが帰りたそうでもあり、モジモジする彼女。
「言いたい事ありそう?言うだけただだぞ。言っとけ?」
「あ、あ。えっと…あざますっ!」
「はーい」
本当にそれだけで良かったのか。
分からない。
分からないけれど、胸の内なんて彼女しか知らんし、打ち明けるかどうか決めるのは彼女自身。
それでストレスとか言われてもって感じだけど。
まあそれはさておき、彼女は一礼して足早に去っていった。
「ハヤク…ハヤク…」
亡霊には急かされるしそんな時間もない。
「イカセナイ…」
背中を押して急かす亡霊とは違い、猿は通せん坊する様に俺の目の前に立ち塞がる。
「何でそこまで嫌なんだよ。土に棒ぶっさすの」
「欲深い人間が増える。増えればまた悲しむものがいる。苦しむものがいる。…土地など受け渡すのではなかった…!!」
※カタカナは読みづらいだろうから、都合よく変更しました。感謝せえ。
何が深い事情がありそうだな。
「なんか…あった…?」
「聞いてくれるのか!実はな…」
ちゃんと答えてくれるんかい。