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不解

冬間近!恐怖と寒さで氷付け!激怖!心霊スポット、心霊映像大放出スペシャル!


完全に季節違いの心霊番組にクラスの陽キャ集団がご執心。


「ここってさぁ。俺んちから徒歩5分にあるのよ。今日の夜行かね?」


「「ウェーイ」」


イケメンの発言にそう盛り上がる取り巻き。


アホだ。


もう部活も終いに帰る時間。夕日も沈みかけている。


その取り巻き達から一番遠い席に座って補習テストを未だ行う俺もアホだ。


「おーい!馬鹿!」


彼らは馬鹿を呼んだ。


馬鹿といえば?そう、俺のこと。


頭が悪すぎた為、あだ名が一周回ってくそシンプルになってしまった。


教科書の内容がどうも頭に入ってこないし、理解ができないのだ。


彼らは悪魔の笑みを浮かべながら俺の席に来た。


「なんだ?」


「馬鹿。今日の夜、暇だよな?」


「いや、やること「よし暇だな!俺ん家の近くにあるあの廃駅に集合な!遅れたら明日提出の補習用紙破くからな!」


身体的にダメージは与えないのかよ。どうせ赤点だから補習用紙破られてもダメージないんだが。


まあ仕方ない。彼らがそれで満足するなら。


「分かったよ」


ちょっと嫌そうにしながら俺はそう答える。


「絶対だぞ!待ってるからな!」


彼らは笑い合って教室を去っていった。


「さて、帰ろう。警備員さんが来る前に」







夜来いって言われたが、もう学校を出たら真っ暗なんだが。


直行しよう。


そう決めて彼らの言う集合場所へ向かう途中、案の定。


迷った。


ってか、知らん。彼の家どこかも知らん。


気づけば廃駅には着いている。


けれど、目的地じゃあないだろうな。


徒歩5分圏内に家らしきものどころか何も見当たらないからだ。


あれ?何ここ。


駅がポツンとあって、線路が敷かれていて、それだけだ。


周囲を見渡せど、これ以上に染まることのない真っ黒。


街灯はついている。駅のホームにも光は灯っている。なのに、踏んでいる床でさえ真っ黒なんだ。


夢?異世界?死んだ?


いつのまにか迷い込んでしまったのか?


至って冷静に、割と冗談抜きでそう考えている。


怖さはない。


この先何が起こるかも予測できない馬鹿だから。


だとして、ここからどうすべきかも分からん。馬鹿だから。


(馬鹿じゃなくても無理だろっ!!)


……こんな所で一人ツッコミ入れても虚しいだけだ。


「って。あれぇ!?」


知らないうちに駅のホームのベンチに俺は座っている。


さっきまで駅を傍観している奴だったのに!!当事者になっちゃった!



「うぇええええん」



違うよ?俺が泣いたわけじゃないよ?


泣き声。


女の子の鼻水を啜る音まで聞こえる。


真正面。目線を下げると線路の上で女の子が泣いていた。


助けよう。


そう思った次の瞬間には足が少女へと向かっていた。


「どうしたんだ?」


俺が向かいながらに声をかけると彼女はこちらを振り向いた。


眩しッ。


なんか光ってる。女の子の顔光ってる。


まあそんな事は悲しそうな声に比べたら大した事はない。


「迷ったの…」


彼女はそう言って更に泣き続ける

「大丈夫ぅ?うぁれぇ?」


彼女を慰めようと頭を触ろうとしたがすり抜けてそのまま綺麗な前転を決めてしまった。


素っ頓狂な声に彼女は少し笑った。


「帰り道は分かるかな?」


俺が知りてえわ。


自分で聞いて自分で突っ込んでしまった。


彼女は線路のずっと先を指差した。


「あっち」


「ふむふむ」


彼女の指差した方向を見て驚いた。


「はっ?」


全裸のおっさんが胴体に新幹線の頭を生やして全速力で向かってきた。


いや、顔必死か。


咄嗟に少女を、お姫様抱っこ。駅のホームまで連れ去った。変態が目に入らない様、極力顔を隠しながら。


「てか、なんで俺は今触れてんだ」


すべすべの赤ちゃんみたいな肌に、綿菓子の様に軽い体重。俺は今それを実感している。


「ヒカリと一対一でお話しできた。その時、お兄さんは私を一人の生きている少女と認識した。だから触れるの。さっきすり抜けたのは、不安定な世界で霊だからすり抜けるかもって認識が脳裏のどこかにあったから」


「…確かにっ!」


彼女は今ここに生きている。俺は今そう思っている。


最初から生きている少女だと考えていたつもりだったが、『ここが変な世界だから彼女も』と、ふと頭に過ぎった一瞬があったかもしれないな。


反省。


「それでここがどこかわかる?」


少女は首をブンブンと振った。


「だよな。迷子って言ってたんもな」


もう一度塗装の禿げた赤色のベンチに座る。


少女は俺の膝の上で泣き止んだが、顔を胸辺りに押し付け包まった。


そして、少しずつ震え始めた。


「…来る」


彼女がそう呟いた瞬間。


「キェェェエエエエエッエエエエ!」


線路から人の顔に4本の虫の足、体躯は筋肉質の獣といった化け物が凄まじい奇声を発し大爆走で迫ってきた。


「おおおおおおおおお!気持ち悪っ!」


完全に俺たちをロックオンしている。


女の子の鼓動が俺まで響く。いや、これ俺の鼓動ッ!!


怖いってか!きもい!


夢であって欲しい!こんなの現実でいてほしくないっ!


「夢であれ!夢であれ!夢であれ!」


どんどん迫る化け物に俺は願うことしかできなかった。


線路からホームに乗り込み、人間の顔でニタァと笑う。


「イケメンになってから出直してこい!」


化け物は虫の足を鋭利に尖らせ俺の喉元を目掛けて突き刺しに来る。


「くそっ!夢であれっ!」


唐突なクライマックス感に俺は目を瞑る。


グッと強く、少女を引き寄せて。


「…大丈夫」


ふと少女の震えが止まった。


「目を上けて…」


少女の声に目を開ける。


「お?」


喉元まで迫っていたそれは目の前から消えている。そして、奇声もなくなり、線路も駅も消えていた。

ここはどこか。


周りを見渡して、「知らんなぁ」


また知らない土地だ。


けれど、先程までの現実味のない様な空間じゃない事は感じた。


「ありがとう」


そして、少女はそのお礼と共に空へと消えていった。


あの空間なんだったんだ?

まあ、考えても分からないが、取り敢えず少女がなんか無事で良かったし、あの化け物が消えてよか……。

たとこの時までは思っていました、はい。


消えてないのにね❤️


「なんでだよぉぉおおおおお!なんでキメェのがここにいるの!?」


知らない道。街灯が一つ。俺の後ろは塀で通行止め。


逃げ道はない。


「あ!詰んだかな?」


詰め寄る化け物。途端の奇声。


俺はもう天国へ昇天する勢いの声。


ここは現実だ。どう見たって夢じゃない。夢の中にいる様な化け物だけれど、夢じゃない。


これが現実の中に幾つかある目には見えない世界の一つなのか。


俺は目覚めたのか。いや、この場合、気付き知ったと言う方がしっくり来る。


でもおしまい!いや!お終いだからこそ見えた世界なのか?これはお迎えか?つまり彼が天使?


「いや、これが天使なわけねぇだろ」


最後のセリフがそれは嫌だな、と、眉間に皺を寄せて考える間、化け物はまた四つ足のうちの一本を振り上げる。


「なるほど。ヒカリは君を選んだんだね。ありがとう」


誰かのその言葉に俺は安心した。


刹那、化け物は目の前から消えた。


何事か。


化け物が消えて安心したのは確かだ。でも、絶対的に安心感を与えてくれたのは、その声の主だ。


死ぬ覚悟とか、キメェという気持ちが、なんか仕様もないというか、どっちだっていい事に思えたんだ。


「ありがとう、ございます」


そして感謝していた。その安心感をくれた誰かに。


この場から化け物を帰してくれてありがとう。


「あり…がとう…」


その言葉は俺だけではなく、天に消えるその化け物からも頂いた。


何事か、何者か、全てが分からない。


体が心の底から暑くて、暑くて、汗が吹き出して、止まらない。


そして、逆上せた。


いや、あれ?


頭から血が流れている。


俺事故ったっ……け?


(俺。本当に…向こう側にっ!?)


風呂に入っているわけでもないのに、体が勝手にふらついて、地面に這いつくばった。


「本当にありがとう」


最後に後頭部から倒れそうになる俺の首を支えてくれた。


そんな誰かが俺の耳元でそう呟いた。


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