表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される【WEB版】  作者: 夕立悠理
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/65

保証します


 ――数日後。

「……陛下。この度はお時間をいただきまして、ありがとうございます」

 王城の一室で、アキルとともに礼をする。


 ……そう、アキルも薬がちゃんと効くか見たい、という理由で……一緒に来ていた。

 さすがに、大国の王太子……と言うわけにはいかないので、私の従者として後ろに控えている。


 数日ぶりに見るエドワード陛下は、憂い顔をしていた。

「いや……それで、話とは?」

「……はい。本題に入る前に、陛下にお尋ねしたいことが、一件ございます」


「わかった」

 エドワード陛下が頷いたのを確認し、まっすぐに見つめる。

「……陛下、恐れながら、下半身系に病を患われていませんか?」

「っ!」


 なぜ……と、震える唇で、そういったエドワード陛下は、ロイズを見た。

 ロイズ、やっぱり何か知っていたのね。

 私がロイズに聞いた時も、なにも教えてくれなかったのに。

「私は……」


 エドワード陛下は何かを言いかけ、やめた。そして、小さく頷く。

「……ああ。そうだ」

 その答えに息を吐く。

「やはり、そうだったのですね」

「君は、どこでそれを?」

 私は質問に答えず、鞄の中から二つのガラスの小瓶を取り出した。


「……これらは?」

 一つの小瓶は、空だ。そしてもう一つの小瓶は、青い液体で満たされている。


「薬瓶です。ひとつは、私が以前飲んだもの。そして、もう一つは、陛下に飲んでいただこうと思っているものです」

 ……薬瓶?

「まさか、リュゼリア――君も、どこか悪いのか!?」

 前のめりになるエドワード陛下には、焦りが見えた。

 そんなエドワード陛下を安心させるために、首を振る。


「私の場合は、病のためではありません」

「……そうか」

 ほっと、息を吐きだしたエドワード陛下に胸がつまる。

 でも……続けなきゃ。

「……陛下。私が、以前、あなたに恋をした私は死んだ、と言ったことを憶えていますか?」

 苦しくて、苦しくて、死にたかった。だから、死ぬことにしたのだと伝えたときのことだ。


「……あぁ」

 頷いたのを確認して続けた。 

「私は、この小瓶に入っていた薬を飲み干し――あなたへの恋心を失いました」


 空の小瓶を振って見せる。以前、黄金色の液体で満たされていたそれは、今は空気しか入っていない。

「それなら、まさか……この薬を飲んで、私に君への恋心をなくせと? いや、そもそも恋心を消す薬など、聞いたことが……」


 信じられないものを見る目で、私を見つめるエドワード陛下を強く、見つめ返す。

「ですがこの薬を飲んで、私は確かにあなたへの恋心が消えました。その変化は、陛下、あなたが一番ご存じのはず」

「そんなまるで、魔法のような、薬……」


 魔法なんて……、と呆然と呟き、やがて、はっと思い出したように、エドワード陛下は私に八尋ねた。


「魔法使いか、錬金術師の薬か?」

「はい。この薬を作ったのは、錬金術師で、こちらの彼……アキルが作ったものです」


 アキルは、エドワード陛下に向かって、恭しく礼をした。

「陛下には、これを飲んでいただきたく」

「……その薬の効果は?」

「魔法を解く薬です」

 悠然とそういったアキルに、エドワード陛下が顔をしかめる。


「まさか、私が何者かに魔法をかけられていると?」

 ……まぁ、そうよね。簡単には頷かないか。

「……はい。その通りです、陛下」

 けれど、アキルも引かなかった。深く頷き、小瓶を指し示す。


「こちらを飲めばすぐに効果が出るので、お判りいただけるかと」

「……っ陛下、ここまでにしましょう」

 今まで黙っていたロイズは、アキルを指さし、語気を強めた。


「ロイグ嬢はこの錬金術師だとかいう、胡散臭い男に騙されているのです!!」

 そう言って、エドワード陛下を連れて行こうとする。

「さぁ、陛下! 次の予定がつまっております。行きましょう」

「まぁ、待て」

 そんなロイズを手で制すと、エドワード陛下は、アキルを見つめた。


「……この薬が、魔法を解く薬だという保証はどこにある? 毒かもしれぬものを簡単に飲めると思うか?」

「それは――」

「私が保証いたします。もし異なる場合は、私の首を刎ねていただいて、構いません」

「!?」

 アキルの言葉に被さるようにして言う。


「リュゼリア!?」

 案の定、エドワード陛下もアキルも焦った顔で私を見つめているけれど、知らないわ。


「飲むか、飲まれないかは、陛下にしか決められませんが……」

 私は、目をそらさず、エドワード陛下を見つめる。

 ここで、引いたらエドワード陛下は、絶対に飲んでくれない。そういう性格だと知っているもの。


「……まったく、君は」

 あきれたようにため息をついたエドワード陛下は、一度顔を伏せ、それから、まっすぐに私を見た。


「――飲もう」

「陛下!? これが毒ではないという保証は……! せめて、私に毒見を」

 焦るロイズ殿を、無視してエドワード陛下は、小瓶のふたを開けると、中身を一気に飲み干した。

「……ふ」

 小瓶を、机に置く。


「何をしているんですか、陛下!!」

 ロイズ殿は、顔を真っ赤にして、私をにらんだ。

「ロイグ嬢、いくら元王妃といえど――」

 ……そのときだった。

「!?」


 エドワード陛下から黒い靄が出てきて、それらがとある方向に向かって進んでいく。

「……今のは」

「解かれた魔法が戻っていったのでしょう」

 冷静にそう分析したアキルを前に、エドワード陛下は、呆然としていた。

「……そんな」

 自分に魔法がかかっていたなんて、ショックだろう。


 ……当事者じゃない、私も胸が痛いもの。

「魔法が本当に解けたか、医師を呼んで確認いたしますか?」

「……いや」

 アキルの言葉に、エドワード陛下が小さく首を振る。


「なんとなく、感覚でわかる。リュゼ――」

 エドワード陛下が、何かを言いかけたとき、騒がしい音が、応接室の外から聞こえてきた。

 エドワード陛下は、立ち上がり、扉のほうへ視線を向ける。

「エド。エド、いるんでしょ!? どうしたの、何かあった!?」


いつもお読みくださり、ありがとうございます!

新作「運命は、手に入れられなかったけれど」連載中です。そちらも合わせてよろしくお願いいたします。

また、いつもブックマークや評価などありがとうございます。大変励みになります!!

第一部完結まであと少しだけお付き合いいただけたら、幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記Amazon様の書籍リンクです
恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される
お読みいただき有難うございます!
運命は、手に入れられなかったけれど
連載中です!
― 新着の感想 ―
[良い点] ようやく裁きの時が来そうだな… [一言] 寄りを戻すのは正直ないなと思ってるけど…結末に期待
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ