君から与えられるものなら(エドワード視点)
「……ロイズ?」
今日の治療を終え、自室に戻ると、ロイズが私の部屋の前で待っていた。
「陛下」
「どうした?」
ロイズは、神妙な面持ちで一通の手紙を差し出した。
受け取り、ひっくり返して封を見る。
ロイグ公爵家の家紋がついており、差出人は……。
「リュゼリア……」
なぜ。もう私のことなどどうでもいいのではないのか。
震える手で、その手紙を開ける。
「……」
美しいが硬さもある紛れもない、リュゼリアの筆跡で綴られた言葉。その一つ一つを読み漏らすことのないように、ゆっくりと目を通した。
「……ふ」
読み終わった手紙を大切に封筒にしまう。
「……手紙にはなんと?」
声をかけられて初めてロイズがまだいたことに気づく。
「あぁ。……どうしても直接伝えたいことがあるから、会いたいと」
なんだろう。やはり、先日、ラグルナ湖で出会ったときに共にいた男のことだろうか。
「ロイズ、面談の調整を頼む」
「それは……かまいませんが。どうされたんでしょうね、急に」
首を傾げながら、去って行こうとするロイズに付け加えた。
「面談は私と、リュゼリア、彼女の従者、ロイズ、だけで行うから、そのつもりでいてくれ」
「……四人ですか?」
振り向いたロイズの顔には、冗談だろうと書いてある。
「ロイグ嬢は、いまや公爵令嬢です。いくら元王妃とはいえどもそれは……」
「いや、四人だけだ。そして、このことは誰にも話すな。いいな?」
「陛下っ!」
それだけ伝えて、自室に入る。まだ遠くでロイズの声が聞こえたが、気づかない振りをした。
机の最上部の引き出しに、リュゼリアからの手紙を入れ、鍵をかける。
手紙には、こうもかかれていた。
この面談の予定を、信用できるもの以外に話すな、と。
リュゼリアがそこまで、念を押すほどの話、とはいったいなんだろうか。
なんにせよ、リュゼリアが……私とどうしても話したいというのなら、否という理由はなかった。
「リュゼリア……」
月の妖精のように可憐で、強い意志を秘めている私の女神。
女神がもたらすのは、喜びか痛みか。
どちらにせよ、君から与えられるなら、それは幸いに違いなかった。
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次回からリュゼリア視点で、いよいよ第一部クライマックスです!




