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恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される【WEB版】  作者: 夕立悠理
二章

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わたしだけを(アイリ視点)

 今日も治療のためにわたしの部屋を訪れたエド。

「……エド? エドったら」

 エドは、ラグルナ湖から帰ってきた後もずっとぼんやりしていた。

 原因は、わかってる。


 元王妃様――リュゼリア様とその隣にいたアキルとかいう男性のせいだろう。

 かわいそうなエド。


 リュゼリア様をあんなに想っているのに、当のリュゼリア様は、もう別の男の人といたんだもんね。

 ショックを受けるのも無理もない。

 やっぱり、早くエドの目を覚ましてあげなきゃ!


 エドの運命の相手はわたしなんだって、気づかせてあげるんだ。


 それで、王様なんて責任ばっかりで辛い仕事なんてやめて、わたしと男爵領でゆっくり暮らすの。きっと、素敵で幸せな生活がエドを待ってるわ。

 そう気持ちを固めながら、エドの前のテーブルに、カップを置く。


「……エド、ハーブティーを淹れたよ。ほら、飲んで?」

「アイリ……、治療を早く」

「前にも言ったけど、治療をするには、心がリラックスしてなきゃ。……治らないと、リュゼリア様を迎えに行けないんでしょ?」


 エドの病気が今治ることは絶対にないんだけどね!

 ちょっと意地悪なことを、心の中で付け足して、微笑む。

 だって、エドが悪いんだもん。

 運命の相手は、こんなに目の前にいるのに気づかないんだから。


「あぁ、そうだな」

 リュゼリア様の名前を出したら、すんなりハーブティーを飲んだエドに苛立ちと安堵を覚えながら、私もエドの隣に座る。

「ねぇ、エド……」

「……どうした?」

「エドは、運命って信じる……?」


 生まれた時から、ううん、生まれる前から決まってる定め。わたしは、信じてる。エドとわたしは一緒になるべき二人だって。


「ああ、信じてる」

 小さく頷いたエドは、遠い目をしていた。ここにはいない誰かを想う瞳だ。

 そんな行動一つに傷つく心を隠して、微笑む。


「そっか。わたしと一緒だね。じゃあ、エドは、神様って信じてる?」

 伝承では、この国は恋と花が大好きな女神様が創ったことになっている。


「いるはずがない。いたとしたら、ダルク兄上は……」

 エドはいまだに、亡くなったお兄さんの幻影に囚われている。

 でも、その原因もリュゼリア様だ。

 完璧なお兄さんが彼女の婚約者になるはずだったから。

 エドの考えは結局のところ、すべてリュゼリア様に繋がっている。

 でも、それってどうなの?


 好きだったらそこまで尽くさなきゃいけないの?


「エド、お兄さんのことは本当に残念だったけれど……」

 わたしにとってもとても残念だ。

 だって、お兄さんがなくならなかったら、エドとずっと一緒にいられたわけだし。


「でも、今、生きてるのはエドだよ? エドはエドの人生を生きなきゃ!」

「……そう、だな」

 ハーブティーのおかげか、いつもの言葉にエドは珍しく頷いてくれた。


「ねぇ、エド……」

「どうした?」

 わたし、こんなにエドが好きなんだよ? ……って伝えたいけど、まだだめだ。


「エドは、わたしのことどう想ってる?」

「それは……妹みたいな、大切な幼馴染だと思っている」

 妹。……家族っていう恋愛から、程遠い存在。


 なんで?


 どうして、そんなにリュゼリア様がいいの?

 たまたま高位貴族で、幸運にもエドの婚約者に選ばれただけでしょ?

 口元まで出かかった言葉を、呑み込む。


「……そっか、うん、嬉しいよ。ありがとう」

 ウソを紡ぐわたしの顔はちゃんと笑えているだろうか。

「……アイリ? どうした?」

「う、ううん! なんでもないよ!! それより、今日の治療しよっか」

 はい、と手を差し出す。

「……ああ」

 手を握られて、熱と共に、わたしの力も巡ってくる。エドの体内を流れるわたしの力は、健在だ。


 ……早く『彼』にエドを王の座からしりぞけてもらわないと。そして、わたしだけを見てもらえるようにするんだ。

 そうすれば、きっと。

 きっと、エドはわたしだけを愛してくれるはずだから。


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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お読みいただき有難うございます!
運命は、手に入れられなかったけれど
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― 新着の感想 ―
[気になる点] ‥‥王族を男爵の婿に出来るのか?
[一言] 欲望に忠実な女だなw
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