赦しますか
「リュゼリア様も、ラグルナ湖に来ていたんですね!」
そう言いながら、本当に友人のように、親しげに駆け寄ってくるアイリ。
私たちの関係は友人ではないどころか、エドワード陛下と離婚した今となっては、他人に近い。
少し離れたところに見える護衛を除けば、エドワード陛下とアイリは二人っきりで、ラグルナ湖に来ている。
やっぱり、エドワード陛下はアイリが一番大事なのね。
心の中で納得しつつ、微笑んで見せる。
「あら、ダルゼン嬢……それに陛下も。いらっしゃっていたんですね」
アイリは、むぅ、と頬を膨らませる。
「アイリって呼んでくださいよ、リュゼリア様! だって、リュゼリア様はエドの……じゃなかった、わたしの友達なんですから」
私たちが友人? いったいいつから?
冗談にしては、笑えないわね。
そして、また愛称で呼び、それを止めないエドワード陛下。
本当に、笑えないわ。
「それにっ、隣の方は誰なんですか?」
「私は、アキルと申します」
私をアイリたちの視線から遮るように、前に出て、アキルは恭しく礼をした。
「……快活なお嬢様、名前をお伺いしても?」
「アイリ・ダルゼンですっ!」
顔を赤らめながら名乗ったアイリは、エドワード陛下の腕をとり、続けた。
「エドとは、幼馴染なんです」
ねっ、アイリはとエドワード陛下を見たけれど、エドワード陛下はぼんやりとした顔をしていた。
「でも、さすがリュゼリア様! こんなにかっこいい方とお知り合いだなんて……」
「光栄です、ダルゼン嬢。では、私共は予定があるので、これで」
そう言って微笑み、アキルは流れる動作で私をエスコートする。
あまりに自然な動作だったからか、それ以上アイリたちに追及されることなく、その場を離れることができた。
「……ここまでくれば大丈夫でしょう」
足を止めたのは、ラグルナ湖を一周できる舟の前だった。
受付係に券を渡すと、さぁ、とアキルに手を差し出され、その手をとる。
舟は小さいのに意外と安定感があった。
アキルはゆっくりと舟をこぎだした。
穏やかに流れている景色を見る。
「……ロイグ嬢」
「はい」
夕日が目にまぶしい。
「私は――あなたを妻にと望んでいます」
「……はい」
小さく頷き、続きを聞く。
「ですが、私はあなたがエドワード王を心から愛していたことを知っています」
アキルは、私がエドワード陛下に対する恋心で苦しんでいるのを知って、恋心を消す薬をくれたんだものね。だから、知っているだろうけれど……。
なんで今、その話をするのかしら。エドワード陛下と会ったから……?
内心で首をかしげながら、頷いた。
「だから、あなたに伝えなければならないことがある」
まっすぐに私を見つめて言われた言葉に、姿勢を正す。
「ロイグ嬢は、エドワード王に傷つけられたことが多々あるでしょう」
「……はい」
結婚してからの二年間、そして婚約期間の後半は、傷つけられてばかりだった。
婚約期間の前半は、そうではないことのほうが多いけれど。
「ですがもしも、エドワード王が何者かによって操られていたのだとしたら」
「……え?」
呆然と、アキルを見つめ返す。
そんなこと考えもしていなかった。
「あなたは、エドワード陛下を赦しますか?」
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