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恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される【WEB版】  作者: 夕立悠理
二章

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おやすみなさい(アイリ視点)

「……そう、だったな」

 エドは、小さく頷いた。

 それを確認して、ぱっと、手を離す。

「それじゃあ、今日の治療、はじめよっか」

 もう一度椅子に座りなおして、手を差し出した。

 エドがそっとわたしの手にエドの手を重ねる。

 ぎゅっと握ると、温かいエドの体温が、わたしに伝わってきた。


 ……ああ。

 やっぱり、妬ましいなぁ。

 こんな風に、治療なんて名目がなくても、エドの手を握る権利を持ってたリュゼリア様。

 エドは、自分から触れたら歯止めが利かなくなるから、触れられない、って言ってたけど。

 それなら、ただ待ってるだけじゃなくて、リュゼリア様から触れたら良かったのに。

 わたしなら、わたしだったら、そうしてた。

 エドが踏み出せない一歩を、わたしが踏み込むのに。

 なんで、そうしなかったあの人が、こんなにエドに想われているんだろう。

 エドは、わたしだけの王子様なのに。


 ――目を閉じながら、想像する。

 もし、もしも、エドが王様になんてならなくて。

 ずっと、わたしの領地で暮らしていたら。

 エドがリュゼリア様に恋に落ちることなんて絶対なかった。

 ただの、わたしの幼馴染。

 そんなエドは、わたしだけを選んでた。


 今頃は、きっと結婚式だったんじゃないかな。もちろん、わたしとエドの。

 多くの人に祝福されて、幸せだねって、二人で微笑みあって。

 それから数年が経ったら、子供もできる。

 エドによく似た男の子と、わたしによく似た女の子。

 どっちもとっても可愛いに違いない。

「……アイリ?」

 エドの言葉で、目を開ける。

 現実は、わたしの思い描いていた未来とは少し違うけれど。

 でも、大丈夫。

 エドは、ちゃんとわたしの元に戻ってきてくれた。

 ……誰にも触れていない清い体で。



「ううん。今日の治療は、これでおしまい! と言いたいところだけれど……」

「どうした?」

 エドは、不思議そうに首を傾げた。

 ……あぁ、そんな仕草も好きだなぁ。

「ひとつ、お願いがあるの」

「願い?」

 うん、と小さく頷いて、握っていたエドの手を離す。

 途端に離れていくエドの手が恋しくて、思わず目で追ってしまいながら、続ける。


「エド、最近ずっと忙しいでしょう……?」

「……それは、まぁ」

 新しい王妃候補の人たちとのお見合いに、リュゼリア様がしていた公務、そして、王としての公務。

 エドが今やるべきことはたくさんあるから、忙しいのだ。

 ……でも。


「たまには休まないと、心配だよ」

 エドにわたしの気持ちが伝わるように、目を潤ませながら、話を続ける。

「だからね、明日は、息抜きにわたしとお出かけしない?」

「それは……だが」

 わかってる。エドは、わたしを連れて外出したくないんだよね。

 リュゼリア様以外の女性を、隣に連れて歩きたくないから。

 ずきん、と胸が痛むのを感じながら、それでも微笑む。


「わたしも、実は治療で疲れてるんだ。だから明日の夕方に、少しだけ……だから、ね?」

「……わかった」

 良かった。エドは、しぶしぶだけれど、頷いてくれた。

「場所は、当日のお楽しみ、ということで、秘密ね」

「……ああ。わかった」

 エドが頷いて、椅子から立ち上がった。

 それを見送る。

「おやすみなさい、エド」

 今日こそエドがリュゼリア様の夢を見ないで、ゆっくり休めますように。

「……あぁ、おやすみ。アイリ」



いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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お読みいただき有難うございます!
運命は、手に入れられなかったけれど
連載中です!
― 新着の感想 ―
[一言] この泥棒ネコが〜!(笑)
[一言] 離婚の原因になった治療という名の逢瀬を何故未だに続けているのかが謎過ぎる。臣下は止めないの?それとももう見限られているの?
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