わたしの王子様(アイリ視点)
最近、エドはずっと忙しそうで、つまんない。
せーっかく、王妃様――……リュゼリア様と別れて、わたしと結婚できるようになったのに。
今日も治療の為に、わたしの部屋へやって来た、エドを迎え入れる。
「……エド?」
エドは、これ以上ないほど疲れ切った顔をしていた。
「どうしたの、顔色悪いよ」
エドは、頑張り屋さんだから、頑張りすぎちゃったんだね。
そういいながら、ハーブティーを淹れる。
確か今日は、花降祭の挨拶に行くって言ってた。
そこで、何かあったのかな。
……心配だ。エドは、たった一人のわたしの王子様なのに。
「……アイリ」
エドが力なく、わたしの名前を呼ぶ。
「ハーブティーはいいんだ」
「本当にどうしたの、エド」
エドの様子が本当に変だ。
「そんなものはいいから、早く治療を……」
「――飲まないと治療もうまくいかないよ?」
いつも以上に元気がないエドに、微笑んでハーブティーの入ったカップを差し出す。
「……心が落ち着いた状態じゃないと、上手くいくものもいかなくなっちゃう」
「……そう、だな。わかった」
力なく頷いたエドは、わたしからカップを受けとると、ゆっくりとハーブティーを飲んだ。
ちゃんと、喉が動いているのを確認して、ほっと息をつく。
「……ちゃんと飲んでくれて良かった」
エドの為だけに毎日配合を考えているハーブティーだ。
だから、きっと、これでエドの心も落ち着くはず。
「すまない、アイリ。……心配をかけたな」
エドは、さっきよりは良くなった顔色で、薄く微笑む。
「……ううん。エド、それでどうしたの?」
エドの隣の椅子に腰かけながら、尋ねる。
「最近、夢見が悪いんだ」
俯きながら、ゆっくりと吐き出された言葉に、耳を傾ける。
「いつも、夢にリュゼリアが出てくる。やっと、夢だとしても、会えたのに。それなのに、いつも、手が届かない」
ぎゅっと、手を悔しそうに握りしめて、エドは続けた。
「それに、リュゼリアは決まって他の男といるんだ。そんなこと、有り得ないのに」
――いつか、それが現実になりそうで怖いんだ。
「……そっかぁ」
それは、確かに怖かっただろう。
エドの気持ちが痛いほどわかる。
「わかるよ。……辛かったね」
エドが、結婚すると聞いた時、絶望した。
なんでって、わたしはちゃんと……のはずなのに。
……でも。
「でもね、大丈夫だよ、エド」
「……アイリ?」
エドが不思議そうな顔で、瞬きをした。
わたしは微笑んで、椅子から立ち上がると、エドの頬を両手で包む。
「言ったでしょう? 幸せにしてあげるって」
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