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恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される【WEB版】  作者: 夕立悠理
二章

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明日

「今日は、とても楽しい一日でした! ありがとうございます」

「こちらこそ、とても素敵な一日になりました」

 公爵邸まで手配した馬車で送ってくれた、アキルを見送り、離れに帰る。

 ダンスで貰った景品である、船で一周無料券は、また後日使うことにした。

 花降祭も思う存分楽しんだし、それに……。


「イーディスの料理が待っているものね!」

 今日の夕飯は何かしら。

 とても楽しい気分で離れの玄関に着くと、マーサとメイカ、それにイーディスも待っていてくれた。


「おかえりなさいませ、リュゼリア様」

「ありがとう。みんな、ただいま!」

 離れの中に入った後、みんなにそれぞれ買ったお土産を渡した。花降祭で売っていたブレスレットやネックレス、髪飾りだ。

「わぁ、嬉しいです!」

「ちょうど欲しかった色です!」

「お出かけにぴったりですね!」

 そんなに高価なモノではないけれど、みんなに喜んでもらえてとても嬉しいわ!


「リュゼリア様」

「どうしたの、マーサ」

 マーサは嬉しそうに私の耳元を見ていた。

「いえ。リュゼリア様が楽しまれたなら、何よりです」

「……あ!」


 そういえば、アキルに貰ったイヤリングをつけたままだったわ。

 出かける時にしてなかったし、マーサたちのお土産を買った露店と同じだから、デザインが似ている。だから、祭で買ったモノだと気づかれたのでしょうね。

「ええ、楽しかったわ」

 少し、気恥ずかしいけれど、でも、楽しくなかったわけじゃないし、否定はしない。

 せっかくだし、青い薔薇のガラス細工も見せようかしら。


「これもいただいたのだけれどね……」

 ……?

 袋から薔薇を取り出しても、みんなちっとも薔薇を見ようとしないわ。

 どうして? こんなに綺麗なのに。

「……薔薇も、ということは、そのイヤリングも贈り物ですか?」

 微笑ましいものを見る瞳で、メイカに尋ねられ、はっ、とする。

 イヤリングをアキルに買ってもらったとはまだ言っていない。さっきのマーサの問いは、祭に浮かれたことがバレただけだったけれど。

 メイカの問いは、アキルに買って貰ったことを明確にするわけで。……いえ、でも、嘘はよくないわね。


「…………ええ」

 かなり恥ずかしかったけれど、頷いて見せる。

 すると、みんなが微笑んだ。

 特にイーディスは、瞳を輝かせている。

「そんな楽しいデートの中、夕食前に帰ってきてくださり、ありがとうございます! 今夜はステーキです」

「!!! ステーキ! とっても楽しみだわ」

 イーディスの焼くステーキは、脂っこくなくて、とっても美味しいのよね。

「焼きたてをお持ちしますので、ダイニングにてお待ちください」


 ――イーディスの美味しい夕食を味わい、お風呂に入った後。

 なかなか寝付けなかった私は、庭で星空を眺めていた。

「……リュゼリア様」

「少し、眠れなくて」

 ガウンとホットミルクを渡してくれたマーサに微笑む。

「ありがとう」


「いいえ。ここ最近、様々なことがありましたからね」

「……ええ」


 エドワード陛下への恋心を無くしたこと。エドワード陛下と離婚したこと。アキルに妻になってほしいと言われたこと……。

 思い返すと、本当に様々なことがあったわね。

 ……私だけの星。高い目標。

 まだ、それは見つかっていないけれど。

 ホットミルクを口に含む。じんわりと体の芯を温めてくれた。

「マーサ、私、明日が楽しみなのよ」

「明日が、ですか?」

 何かご予定がございましたか? と続けたマーサに首を振る。


「ううん。そうじゃなくて……。明日が来るのが怖く、ないの」

 こうなる前を思い出す。

「私ね、本当はずっと明日が来るのが怖かったの」

 見向きもしてくれない人を愛し続けて。


「明日は、明日こそは愛してくれるかしらって、もし、そうではなかったら……って明日に怯えていた」

 マーサは黙って私の言葉に耳を傾けてくれている。


「でも、今はそんな心配しなくていい。だから」

 やりたいことがたくさんある。

 刺繍や楽器に久々に触れてみるのもいいかもしれないし、読書もいい。

 部屋の模様替えだってしたいし、女子会もしたい。

 それから、それから――。


「明日が来るのが楽しみ過ぎて、眠れないのよ」

 困ったわ、と呟きながら、マーサを見ると、マーサは優しく微笑んでいた。

「リュゼリア様」

「……うん」

「リュゼリア様は、私にとってかけがえのない方です」

 マーサは私の手を握った。

「だから、リュゼリア様からそのお言葉が聞けて、良かった。……本当に」

 マーサの声はかすかに震えていた。

「ありがとう、マーサ」

 あの頃は、私だけが苦しいのだと思っていた。でも、そうじゃない。

 私が悲しいことで、苦しむ人はこんな身近にもいる。

 私を大切にしてくれる人を悲しませないように、生きよう。

 星空を見上げる。眩しく輝く星々に目を細めて、そっと、手を握り返した。


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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お読みいただき有難うございます!
運命は、手に入れられなかったけれど
連載中です!
― 新着の感想 ―
[一言] さっさとこの国出ようぜ〜!(笑)
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