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恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される【WEB版】  作者: 夕立悠理
二章

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一瞬のような永遠のような

「私の家族ですか?」

「はい。以前、一番大切な想い出についてお伺いしたとき、ロイグ嬢は、御父上に星を貰ったことだとおっしゃいましたね」

「はい」

 だから私は、私だけの星を見つけるために、努力を重ねたいと思ってる。


「御父上とロイグ嬢の関係は知ることができましたが、他のご家族はどうなのかと気になりまして」

 ……なるほど。

 私が実際にそうなるかは別として、私を妻にしたいと考えているアキルが、私の家族関係に興味を持つのは当然だものね。

「そうですね……。私は、陛下の婚約者となってからは、ずっと王城で暮らしていたので、しばらく家族とは疎遠になっていました」

 ……でも。


「ですが、こうして実家に出戻った今も、温かく迎えてくれる優しい家族です」

 お母様も、弟も、お父様も。

 みんな、私に優しい。

 それだけは、確かだった。

「そうなのですね」

 アキルが柔らかく微笑む。

 ……と、そこで馬車が止まった。

目的地に到着したみたいだ。

 アキルにエスコートされて、馬車を降りる。

 すると――。

「わぁ……!」


 色とりどりの花が舞っていた。赤、薄青、ピンク、黄、オレンジ、白……鮮やかな色彩が、街を彩っている。

「やはり、あまり花降祭に参加されたことはなかったようですね」

 ……花降祭。それは、私たちの国の王都で年に一度行われる祭だ。

 ずっとみてみたいと思っていた祭でもある。私は、開会の挨拶にエドワード陛下と共に出席するだけで、すぐに王城に帰っていた。それは、警備の面からして最善のことだったと思う。

 でも、本当は、ずっと、参加してみたかったのだ。


「でも、よくご存知でしたね」

 他国の祭りまで、頭に入れているとはさすが大国の王太子。

「えぇ。あなたを口説きたいので」

「!?」

 く、くどっ……!?!?!?

 甘く囁かれた言葉に、赤面してしまう。

 あまり、そういう言葉を言われたことがないので、耐性がないのよね。

「……ふふ。その可愛らしい表情は、私だけに独占させてくださいね」

 アキルはそういうと、私の耳にかけた花を抜く。そして馬車の中に置いてきたままだった、私の帽子をとり、花を飾ると、私に被せた。


 流れるような動作で帽子を被せられ、その手際の良さに感動する。

 確かに、私は一応元王妃だし、この国で出かけるなら、帽子は必須よね。

「さぁ、行きましょう。ロイグ嬢」

「……はい!」


 花降祭。それは、この国で信仰している女神に捧げるお祭りだ。花と恋が大好きな女神のために、花で王都中を飾り付け、そしてお祭りの最後には、一番愛し合っているカップルが選ばれるコンテストもある。


 そんな花降祭をアキルにエスコートされて歩く。

 露店もたくさん出ていて、王都中がにぎわっていた。

 そんな中、私がまず足を止めたのは、花のガラス細工を売っている露店だ。

「どれが気になりますか?」

「そうですね……」

 どの細工も綺麗だけれど。特に目を引くのは……。

「この青いバラ、でしょうか」

 青いバラの花弁は薄く透き通っていて、本当に綺麗だ。

 日の光に照らされて。きらきらと輝いている。


「では、店主。こちらを頂けますか?」

「あいよ!」

「アキル殿!?」

 私だって、そんなに高額ではないものの、お金を持ってきている。これくらいなら、余裕で出せる範囲内だ。

 慌てて、アキルを止めようとしたけれど……。

「私がロイグ嬢に贈りたかったのです」


 そういって、柔らかく微笑まれると、止められない。


「ありがとうございます」


 なので、止める代わりに素直にお礼を言うことにした。

「いいえ。どういたしまして」

 包んでもらったガラス細工を落とさないように、手に持って、歩く。


 次に気になったのは、花をモチーフにしたアクセサリーを扱っている露店だ。

「可愛いですね……!」


 イヤリングも指輪も腕輪もとっても可愛い。

 思わずあれも可愛いこれも可愛いとはしゃいでいると……。

「……ええ、本当に」

「アキル殿も可愛いと思われますか!?」

 アキルの同意する言葉に、振り向く。

 すると、アキルはアクセサリーではなく私を見つめていた。

「……アキル殿?」


 話を合わせてくれたのかしら。

 そう思って首を傾げると……。


「これなんて、可憐なあなたに似合いそうだ」

 赤の花をモチーフにした耳飾りをあてられる。

「やはり似合っていますね」

 そう言って微笑んだアキルは、これ以上ないほど穏やかな瞳をしていた。

「瞳を輝かせたあなたも、可愛らしいですね」


 青の凪いだ海のような穏やかな瞳に見つめられると、途端に息ができなくなる。


 瞬きも忘れて、アキルを見つめ返した。

 その瞳にも、その瞳に映る私も。お互いしか映っていなかった。

 一瞬にも、永遠にも感じられた時間は、誰かの声によって、終わりを告げた。

「……リュゼリア?」

「!」

 人混みの中でだって、聞き間違えるはずがなかった、その声は。

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される
お読みいただき有難うございます!
運命は、手に入れられなかったけれど
連載中です!
― 新着の感想 ―
[一言] もうほぼ落ちてそうな…(笑)
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