離縁
そうお父様が約束してくれた、翌日の夕方。
私たち——私とエドワード陛下は議会の会議場に立っていた。
目の前にある机にあるのは、一枚の紙。
議会での承認印が降り使用可能になった、私とエドワード陛下の縁を断ち切るモノ……つまり離婚届だった。
「では、陛下、王妃殿下、サインを」
「っ……!」
唇を噛み締め、ぴくりとも動こうとしないエドワード陛下を横目に、私はさらさらとサインをした。
これで、エドワード陛下のサインがあれば、この書類は有効なものとなる。
しかし、エドワード陛下は一向に、動く気配がない。
まぁ、私がすべきことはやったものね。
あとは、エドワード陛下に任せて、会議場を出ようとしたそのときだった。
「私は……、私たちは夫婦になるのだから」
小さくこぼされた声なのに、不思議と耳に届いたのは、それが聞き慣れた言葉だったからだろう。
いつも、いつもエドワード陛下は幼い頃そう言っていた。だから、支え合うのは当然なのだと。
この二年間は、辛く苦しいものだったけれど、夫婦について学んだこともある。
私は振り返りエドワード陛下を見つめた。
「夫婦は信頼がなければ成り立たない。身をもって学ばせていただき、ありがとうございました」
きっと、私はエドワード陛下が信じるに値する妃になれなかったのだろう。そうでなければ、アイリ嬢を囲う理由も、頑なに庇う理由も教えてくれたはずだから。
捕まえられなかった、かつて焦がれた私の星。
今はもう、熱を失ってしまったけれど。
「幸せを願っております、心から」
笑みを浮かべる。これで、最後だ。かつて愛した人の記憶に残る顔は、笑顔でありたい。
深々と礼をして、退出する。
「リュゼ——」
私はもう、振り返らなかった。
◇◇◇
さて、これで元王妃になった私は、荷物を運んで……といっても王妃のものばかりなので、私物は少ない。そんな少ない私物をマーサ達に手伝ってもらって、荷造りをし、公爵邸へ向かう馬車に揺られていた。
日が落ち、窓の外には星が浮かんでいる。
「私だけの星は……どこにあるのかしらね」
以前はエドワード陛下という星が、鮮明に見えた。けれど、今は全く見えない。
だけど、不安には思わなかった。
それどころか、高揚感を覚えていた。
今日は帰って眠るだけになるだろうけれど。明日からは、何をしよう。
やりたいこと、ためしたいこと、たくさんあるわ。
私は、私らしく。
私だけの星を探すために。
期待に胸を膨らませながら、目を閉じた。
これにて、一章は完結です!!
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