大切な想い出
ベッドの上で大きく伸びをする。
うん、今日も良く寝た。
昨日一日で様々なことがあったから眠れないかと思ったけれど、案外、眠れるものね。
……私ったら、図太いのかも。
そんなことをつらつらと考えていると、マーサがやってきた。
「おはようございます、リュゼリア様」
「おはよう、マーサ」
マーサと他愛ない話をしながら、支度を整えるのを手伝ってもらう。
「じゃあ、行ってきます」
支度を整え終わり、食事の間へ。
あれだけのことがあって、エドワード陛下と顔を合わせるのは、若干どころかかなり気まずいけれど、自室に運んでもらうと時間がかかって、料理が冷めてしまう。
イーディスがせっかく用意してくれた食事は、万全の状態で食べたいので、勇気をもって、扉を開ける。
「……あら」
今日は、エドワード陛下はいなかった。
……エドワード陛下も気まずかったのかもしれないわね。
そんなことを考えながら、席に着くと、ほどなくして朝食が運ばれてきた。
今日もとっても美味しい朝食に舌鼓を打って――もちろんイーディスに感謝を述べることも忘れずに――今日は、最高のスタートを切った。
今日も一日頑張ろう。
朝食を終えて自室に戻ると、マーサとメイカが笑顔で出迎えてくれた。
「王妃殿下、ロイグ公爵閣下から面会の日程調整の連絡がきております」
「!」
お父様は手紙を読んでくれた……ってことよね。
「ありがとう。そうね……明日の午前はどうかと打診してみて」
「かしこまりました」
これで、お父様が議会に離婚を提案してくれたら今度こそ、私はエドワード陛下から離れられる。
そして……離れたら、何をしよう。
恋は今はまだする気にはなれないけれど。
いつかは、恋をしてみたい。今度こそ幸せな恋を。
あら、でも期限は一年で薬の効果が切れちゃうから、それまでになんとかしなくっちゃいけないのよね。
まぁ、それはそのときに考えればいいわ。
他には? 何をしたいかしら。
イーディスや、メイカ、マーサと一緒に女子会とかしてみたいわね。
きっと楽しいと思うの。
その他には、他国にも行ってみたいわ。
この国での公務ばかりで、他国に行ったことがほとんどないのよね。
「王妃殿下」
「今度はどうしたの?」
「薬師がこられていますが、どうされますか?」
……そういえば。アキルが一日につき一つ、質問をしに来るって言ってたわね。
色々ありすぎて、すっかり忘れていた。
追い返す理由も特にないので、通してもらう。
「おはようございます、王妃殿下」
「ええ。おはよう、アキル殿」
アキルは恭しく礼をすると微笑んだ。
「お時間を作っていただき、感謝いたします。今日の質問ですが……」
昨日は確か好きな色を聞かれたのよね。
「王妃殿下の一番大切な想い出はなんですか?」
大切な想い出……。
もっと一言で終わるようなことを聞かれると想像していたから、驚いたわ。
でも、そうね。
一番大切な想い出なら、決まっている。
「星を、もらったことかしら」
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