いつから、私は(エドワード視点)
「私は……私、は」
自室に戻り、呆然と同じ言葉を繰り返す。
「ただ君のために……それが、間違っていたのか……?」
そう、全てはリュゼリアのため。そのはずだった。
私は、元々、5歳で死ぬはずだった。そう、兄王子たちを苦しめたのと同じ病だ。けれど、アイリのおかげで生き延びた。アイリには感謝している。そのおかげで、リュゼリアの婚約者になれたのだから。
初めて会ったリュゼリアは、不安そうな顔をしていた。
無理もない。
元々婚約者としてこの場にいるはずだったのは、完璧王子として有名だったダルク兄上だったのだ。
それがリュゼリアよりも2つ年下で、継承権が低いからと辺境に追いやられていた私になった。
それでも、不安そうな君に、少しでも笑って欲しくて、私はその手を握った。
「リュゼリア嬢、兄上の代わりにはなれないけれど。私は私として、精一杯あなたの婚約者として務めるよ」
そう言った時、リュゼリアは確かに微笑んだ。
その笑みを見て、確信した。
あぁ、私はこの人に出会うために助かったのだと。
それからの私たちは順調だった。
もちろん、辺境の男爵領にいた私は、世俗に疎い部分もあり、家庭教師の手を焼かせたこともあった。けれど、そんな日は決まって、リュゼリアが私の手を握ってくれた。
こんな自分が情けない。そう愚痴をこぼしたこともある。
それでも、リュゼリアは
「いつもエドワード殿下は、私たちは夫婦になるのだから、と私を助けてくださいます。だから、私もあなたを支えます」
そう言って、そんな私を受け入れてくれた。だから彼女に私は何度も恋に落ちたのだ。
——そして、そんな彼女に、完璧な幸せを捧げたい。
自然とそう思うようになった。
そして、その思いは、私の目標であり、生きる意味になった。
完璧王子と謳われた、ダルク兄上ですら、リュゼリアにあげられなかったほどの幸福を、リュゼリアに渡したかったのだ。
幸せにしたい。
始めは、そのはずだったのに。
「いつから、私は……」
私が間違えてしまったのは、きっと。
時は5年前に遡る。
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