ご存知でしたか?
そう、私は死んだ。
あなたに愛されたくて、愛されなかった私はもう、どこにもいない。
「では、陛下。ごきげんよう」
「……っ、まだ話は終わってない」
「そのやりとりは、先ほどしたはずでは?」
そして、夫としてのエドワード陛下には、もう話すことなどないと、はっきり伝えたはずだわ。
「リュゼリアは、私を……!」
「はい、もう愛しておりません」
私は、ふふ、と微笑み、エドワード陛下を見つめた。
「私、ずっと苦しかったのです。苦しくて苦しくて、死にたかった」
「!」
エドワード陛下が目を見開いた。それに構わず、私は続ける。
「いつになっても白い結婚のまま、放っておかれるのも、何度理由を尋ねてもただの幼馴染だから、と他の女性をおそばに置かれるのも。視線さえ、一度も合わなくなったのも。全部、全部苦しかった。……だから」
まるで、水の底にいるような気分だったから。
そんな私を、私は殺した。
「だから、私は死ぬことにしました。そして、エドワード陛下が求められている、『あなたを愛する私』は、死んだのです」
……と、ここまではっきり言えば、伝わるかしら。
「これ以上、夫としてのあなたに話すことはございません」
「待ってくれ、リュゼリア。君がそこまで追い詰められていたなんて、私は、何も……」
「あら、伝えれば何か変わりましたか?」
そうだ、伝えれば何か変わったのなら。
「お願いしても、食事の間に今までいらっしゃらなかったのは、なぜですか?」
「っ、それは……」
「何度もアイリ嬢を呼び寄せた理由を尋ねても、教えてくださらなかったのは、なぜですか?」
「……っ」
「そして、今もこれらの疑問に答えてくださらない。それらすべてが私が死んだ理由です」
「私は……私、は」
呆然と立ち尽くすエドワード陛下に、あぁ、それから、と付け加える。
「先ほどの質問の答えで、アイリ嬢は私より弱いから、とおっしゃいましたが、私の城での立場が今やアイリ嬢より弱いこと——知っていましたか?」
「!」
「白い結婚かつ公務しか顔を合わせない私と、足繁く通うアイリ嬢。家臣たちにとって、どちらを優先すべきか、なんて決まっておりますもの。ご存知でしたわよね!」
ぱん、と手を叩く。
「……では、話は今度こそ終わりです。さぁ、お客様、お帰りになって」
マーサに視線をやると、マーサが頷いて、ふらふらしているエドワード陛下を部屋から出してくれた。
……ふぅ。
それにしても、言いたいことを言いすぎちゃったかしら。
ふと、窓に目線をやる。
幼い頃、エドワード陛下と何度か散策した中庭が見えた。
でも、そこに植えられているのは、あの頃とは全く違う花ばかり。
「そうよね、時間は過ぎるわ」
過去に戻りたいと思っても、もう、戻れない。
前に進むしかないのだ。
薬師に言われた言葉が蘇る。
『そんな相手から離れることですね』
もう、あんな苦しい思いはしたくない。
そのために、私はどうすべきかしら。
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