あなたを愛した
「……………………は?」
思わず、間抜けな声を出してしまった。
愛してる、って、私が知っている意味以外に意味、あったかしら?
「だから、私は君を愛しているんだ」
「いえ、聞こえておりますが」
愛してる。以前の私なら飛び上がって喜んだ言葉でしょう。その言葉だけで、今までの行動全てを、なかったことにできたかも知れない。
「では、アイリ嬢は?」
「言っただろう、アイリと私はそんな関係ではない」
「いいえ。アイリ嬢を城に呼び寄せ、足繁くその部屋に通う理由です」
エドワード陛下が、アイリをこの城に迎えた時に再三尋ねたことだった。それでも、エドワード陛下は理由を教えてくれなくて、いつか、理由を聞くことさえ諦めてしまった。
「ぐっ……それ、は……」
「言えませんよね。だって、いつも教えてくださらなかったのですもの」
つまり、エドワード陛下の語る愛は、その程度なのではないかしら。
まぁ、もう全ては過去のことだ。
私の中で恋心は消えて、執着心も同時になくなった。同様に私の恋心も薬で消えるその程度、だったのかもしれないけれど。
「だが、私は本当に——」
「陛下のお気持ちはよくわかりました。ありがとうございます」
もう少し早くその言葉が聞きたかったし、その言葉が聞けなかったとしても、愛されている、と感じられる行動が欲しかった。
「ですが陛下、質問です。私とアイリ嬢が泣いているとします。陛下はどちらを助けますか?」
「そもそも君は泣かないだろう」
泣かないのではなく、あなたの前で泣けないのだけれど。
「仮定の話です」
「それは、アイリに決まっているだろう。彼女の方が、立場が弱いのだから——」
なるほど、弱きを助ける。王らしい回答かもしれない。実際、今までアイリを優先していたものね。
「……そうでしょうね、わかりました」
つまり、エドワード陛下の愛、とは、私が離れていきそうになったから、それを惜しんだだけだ。
私はベルを鳴らして、マーサを呼び出した。
「お客様のおかえりよ。お見送りしてちょうだい」
「かしこまりました。では、陛下こちらへ」
「まだ、話は——」
エドワード陛下をまっすぐ見つめる。
「それは、どちらのあなたの話ですか? 王として、それとも夫として?」
翡翠の瞳も、私を見つめ返した。
「夫としてだ!」
「でしたら、それこそ話すことはもうございません。愛しているとのこと、ありがとうございます。ですが——」
私は出来うる限りの最高の笑みを浮かべた。
「あなたを愛したリュゼリアはもう、死んだのです」
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ようやく話が少しずつ動き始めました!
ここまで書けたのも読者様がたのおかげです!!
ありがとうございます。




