ここはひとつ
私に、生涯仕えるって……。
「ええと、マーサ、それは……」
「はい。芸に秀でている者もおり、自分自身で身を立てることが可能です。ですので、もし、リュゼリア様が他の地に行くことがあったとしても——お供をさせていただきたく」
つまり、離縁や何かでこの城を離れることになったとしても、ついてきたいってことよね。
「でも、私はそういってもらえるようなこと……」
ちゃんとできていたかな。
できていなかった気がする。
恋をしてから、自分の想いをどうしたらわかってもらえるかばかりで。
イーディスの献身に気付いたのも、つい最近だし。
「いいえ、リュゼリア様。あなたはいつも私共を気遣って下さいました」
マーサは、私の手を握った。
「私自身が気付かないほどの不調にもすぐに気づき、医師を手配してくださったり、髪を切った際にも必ずお声がけくださったり……、お礼を言うときはいつも目を見てくださったり」
「そんなの、主として当然のことじゃない」
別に褒められるようなことでもないと思うわ。
「いいえ。その行動一つ一つが、私共を支えてくださり、今の私共があるのです」
「……マーサ」
「そんなリュゼリア様にお仕えできることは、私共の誇りです」
そうでしょう?、とマーサが振り向く。マーサの後ろには、メイカやイーディスを始めとした面々が揃っていた。……って、えっ!? イーディスまで!?!?!?
「私たちは、常に王妃殿下のおそばに」
「……みんな」
じわり、と涙が滲む。
そんな風に思ってもらえたなんて、とても嬉しい。
「王妃殿下のどんな選択でも、私共は従います」
「……ありがとう」
◇◇◇
……とは、言ったものの。
マーサたちにはひとまず下がってもらい、ソファに腰掛ける。
「そもそも、どうするか決めてないのよね」
離婚するか、別居するか、それともこの結婚生活を続けるのか。
でも、どんな選択をするにしろ、それを応援してくれる人がいる。それってとっても素敵で幸福なことだわ!
今は、この幸せを噛み締めて——。
「失礼致します、王妃殿下」
「? メイカ、どうしたの?」
下がってもらうように言ったのに、やってきたということは、何かあったのかしら。
「陛下がお見えですが、いかがなさいますか?」
「……陛下が?」
えっ、ええー。
エドワード陛下といえば、朝食会でビンタをして以来だ。
つまり、何が言いたいかと言うと、めちゃくちゃ気まずい。
どうしようかしら。
「……そうね。ここはひとつ、体調不良——」
「見るからに元気そうだが、どこか不調なところでも?」
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!




