君以外など(エドワード視点)
「…………で、その綺麗な手形が頬についた、と」
側近のロイズが、半笑いで私の頬を指さした。
「……いいたいことがあるなら、はっきり言え」
ロイズは側近だが、親友でもあった。なので、二人だけの時は私も気安い。
「やーい、エドワードってば、ついに王妃殿下に嫌われてやんの!!」
「嫌われてなどない!!!」
嫌われてなどいるものか。リュゼリアは私一筋だ。
「……その自信はどっからくるわけ?」
呆れたようにため息をついた後、いや、でもさぁ……、と半笑いをやめて、ロイズは私を見つめた。
「正直な話、理由も話さず幼馴染を城にあげたかと思えば、触れないどころか目も合わせない。そんな男に愛想を尽かしたとしても……当然じゃない? 少なくとも俺なら愛想を尽かすね」
「ぐっ!!!!」
私の心にロイズの言葉がぐさぐさと刺さる。
「だからアイリ嬢……だっけ、を城に呼び寄せた理由を話せって言ったろ。それか、ちゃんと好きだって伝えるとか」
「…………無理だ」
「この期に及んで何言ってるのさ! もうエドワード、お前が結婚して2年が経った!! このまま隠し通すのはそれこそ無理だって」
……だが。
「理由を話せば、嫌われるかもしれないし、言葉にして好意を伝えれば、歯止めが利かなくなる。だが、歯止めが利かなくなれば……」
「理由を伝える必要がでてくる?」
「そうだ」
エドワードはさ、本当に臆病者だよね、とロイズは言って、頭を掻きむしった。
「あー、もう! 嫌われるとかなんとか、結局お前のプライドを大事にしてるだけだろ!」
「!!!」
ぐさっ。
今までで一番大きな矢が刺さった。
「そりゃあ、男としては一大事だよ。わかるよ、俺も男だし。でもさぁ、お前は、お前のプライドと王妃殿下どっちが大事なわけ?」
「……っそれ、は」
リュゼリアが好きだ。愛している。初めて出会ったあの日から。だから、今は亡き兄たちに負けないように、努力を重ねてきた。
「リュゼリア……だ」
「だったら、さっさと言えっての!!」
はー、と大きくため息をついて、ロイズは続けた。
「言っとくけど、こっちだってかなり限界だから。重鎮たちの王妃を代えるべきっていう声、日に日に大きくなってる。有能な陛下なら……もちろん、気づいてるよね?」
「……っ!」
私とリュゼリアの間には、子供がいない。そのことで、私たちの相性が悪いのではないか、それなら、別の王妃を迎えるべきだという臣下たちが増えている。
「それは、だが……。私は、リュゼリア以外と婚姻など絶対に——」
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!




