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恋心に苦しむ王妃は、異国の薬師王太子に求愛される【WEB版】  作者: 夕立悠理
一章

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手放したもの

「心境の変化……?」

「はい」

 心境の変化があったはずだ。だって、今までエドワード陛下は、私と一緒に食事を摂ることなんてなかったのだから。


「……それは、君の方だろう」

 エドワード陛下は、私を見つめた。翡翠の瞳には、私だけが映っている。


「リュゼリア、君が急に出かけると言い出したから……」


 えっ、私?

 そういえば、城下町に下りる前に、侍女を通じて許可を取ったのだったわ。それで、城下町にはなぜかエドワード陛下もいた。


「今までの君は、出かけたいなどと一度も言わなかった。だから、気になった」


 ふーん、なるほど。

 私が、いつもと違う行動をとったから、物珍しかった、というわけね。


「そうなのですね」


「それより、君こそどうなんだ。世界の狭さを知ったと言っていたが。……そのきっかけは?」


 私が世界の狭さを知ったきっかけ。

 この胸から、あなたへの恋心が消えたこと。


「きっかけは……、手放せたことです」


 私一人じゃ無理だった。ずっと、きつく握りしめて、手から血が滲んでもお構いないしに、きつくきつくあの想いを握りしめていたから。


 あの薬があったから、私は変われた。


「手放す……?」

 エドワード陛下の翡翠の瞳が不安そうに揺れる。変なの。あなたが不安がる必要なんて何もないのに。


「ええ!」

 だから、私は安心させるように、笑顔で頷いた。


「手放してから、とても楽しくて……」

 まあ、まだ手放してから一日しか経ってないのだけれども。


「食事も美味しいですし」

 イーディスの作る食事の美味しさ、そして、その美味しさに込められた努力に気づけた。


「それに——」

「待て!」


 ? なんだろう。

「はい……?」

「君は——リュゼリアは、なにを手放したんだ?」


 何を手放したか、ですって?

「それは……」


 ゆらゆら揺れる翡翠の瞳。そこに映る私は、とても幸せそうだ。

 ……胸と肩の間までしかない、今までに比べたらかなり短い髪。

 ……頭痛がなくなり、頭に手を当てることも少なくなった。

 ……そして、何より心が、体が、軽くなった。


「お気づきになられませんでしたか……?」

「……何、に?」

 私は、人差し指を立てた。

「ひとつ、髪を切ったこと」

「そんなこと、とっくに気づいていただろう?」

「そうですね。正しくは、『陛下に褒めていただいたことがある』髪を切ったこと」

「!」


 エドワード陛下が、はっ、と息を呑む。私はそれを気にせず、人差し指と中指を立てる。

「ふたつ、陛下から頂いた贈り物をすぐに身に着けなかったこと」

「……それ、は」

 どうやらそのことを、疑問には思っていたみたいだ。


 まぁ、そうよね。

 今までの私だったら、すぐに身に着けて、アイリに見せびらかしていたかもしれないもの。


「みっつ、陛下より食事を優先したこと」

 これは食事の時間だから、当然と言えば当然だけれど。でも、あれだけ返答を求められて、スルーするのは、普通じゃないわよね。


「そして、最後。私の瞳から熱が消えたこと。ここから導き出されることは……」


 急にエドワード陛下が、顔を逸らした。

 まるで、その先を聞きたくないというように。


 それにかまわず私は続ける。

 

「あなたに執着する私、を手放しました! いえ、死んだ——という方が正しいのかも」


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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運命は、手に入れられなかったけれど
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