悪くない
あてつけ、ですって……?
私は、私らしく明るく前向きに生きているだけなのに、そう言われるのは納得できない。
「だから私が……君に触れないことへのあてつけなのか、と聞いているんだ」
「……は?」
私に触れないこと、つまり白い結婚なことなんて最早どうでもいいけど。今やこれっぽっちも好きじゃないし。だから、好きじゃない人の子供を産まなくてすんでむしろラッキーくらいに思ってるわ!!
……って、これを流石に言ったら不敬罪かしらね。
「いえ別に、私は——」
「王妃様! ちがうの、エドは悪くないの!!」
アイリが、否定をしようとした私と、エドワード陛下の間に入ってきた。
「……エドは、エドはっ——。……とにかく、私の力不足が……原因……で」
アイリはふるふると肩を震わせ、涙をこぼした。
「アイリ、君が自分を責める必要なんてどこにもない」
そんなアイリの肩を抱き、エドワード陛下は、優しい声でそう言いながら、アイリの涙を拭ってやる。
えーっと。
いちゃつくなら、廊下じゃなくて、部屋の中でやってもらえないかしら。
「アイリは、何も悪くない」
改めて、エドワード陛下は私に向き直るとそう言った。
「……はぁ、左様にございますか」
私は別にアイリを責めたつもりは一切ないし、エドワード陛下を責めたつもりもない。
けれど、なぜかよくわからないけれど、エドワード陛下とアイリの中で、私は二人を責めたことになっているようだ。
ええー、理不尽すぎるわ。
でも、まぁいっか!!
とにかく、これで白い結婚は続行ってことよね。
うんうん、それに越したことはないわ。
……もちろん、貴族として生まれたからには、子供を産み、次へと繋ぐという義務があることはわかってる。
だから、もしエドワード陛下がそのつもりなら、私に拒否権はない。
でも、しなくていいことなら、したくなーい、っていうのが本音だ。
私には、エドワード陛下がその気じゃありませんでした! という言い訳もあることだし。
「では、あとはお二人でごゆっくり。私には、明日の朝食が待っていますので」
そうそう! 明日のイーディスの朝食!! とーっても楽しみだものね。
私は、今起きたことなんてけろっと忘れて、朝食のメニューに思いを馳せ……。
「待て、リュゼリア」
??? まだ何か?
ため息をつきたいのを抑えて、ゆっくりと振り向く。
「私は……いや、なんでもない。おやすみ」
「はい、おやすみなさいませ」
まだ泣いているアイリを慰めるエドワード陛下を横目に、今度こそ私は自室へと歩き始めた。
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!




